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季刊誌「ムラマツ」に掲載されたエッセイをご紹介いたします。
トップページエッセイ「フルートで料理」 > 10.新しい鍋
エッセイ「フルートで料理」 ESSAY
文:齋藤賀雄(元読売日本交響楽団フルート奏者 東京音楽大学教授)
画:おおのまもる(元読売日本交響楽団オーボエ奏者)
10 「新しい鍋」
 新しい鍋を買った。厚手で、ずっしりとしている割りには、手にしたときにそれを感じさせない。まるで美術品のように美しい。これまで長年使ってきた汚れた鍋のそばに置くと、その古い鍋が可哀想なくらい、新しい鍋は堂々として、威厳を保っていた。

 眺めているだけでも楽しい。この鍋を使って何を作ろうか。水洗いしてお湯を沸かしてみると、底の方から小さな泡が立ち始めた。見慣れた泡が新鮮に見える。それを、ぼっと見ているだけで、充実感が満ちてくる。いいものを手に入れたときだけの充実感である。

 この鍋を作った人の心が伝わってくるような気がしたが、使う人の手に渡ったときからこの鍋の一生が決まってしまうのだと思った瞬間、心なしか、鍋も緊張しているかのように見えた。それは、作った人と、使う人との心の交流が始まる瞬間でもある。

 鍋を作った人は、自分の鍋がどんな料理人の手に渡って、どんな料理を作るのだろうかと、仕事の合間に職人の浪漫を広げていたに違いない。この鍋は、それを物語っている。作った人の期待に応えようと心に決めて、もう一度手に取る。やはり、いいものはいい。

 新しい鍋は、料理する人の心を駆り立てる。あんなものを作ってみよう、こんなものも作ってみようと、幾つもの食材が頭の中を通り過ぎ、その料理が出来上がったときの香りが漂ってくるような気がした。一つの新しい鍋が、また新たな料理を教えてくれた。


 ところで、新しいフルートを買った。手にずっしりとくる割りには、実際に構えてみるとそれを感じさせない。まるで美術品のように美しい。これまで長年使ってきた古い楽器のそばに置くと、その古い楽器が可哀想なくらい、新しいフルートは威厳を保っていた。

 眺めているだけでも楽しい。このフルートでどんな曲を吹こうか。そっと息を入れてみると、これまでにない新鮮な響きがした。何を吹くでもなく、そっと息を入れているだけで、充実感が満ちてくる。いい楽器を手に入れたときだけの充実感である。

 このフルートを作った人の心が伝わってくるような気がしたが、使う人の手に渡ったときからこの楽器の一生が決まってしまうのだと思った瞬間、心なしか、楽器も緊張しているかのように見えた。それは、作った人と、使う人との心の交流が始まる瞬間でもある。

 楽器を作った人は、自分の作った楽器が、どんな演奏者の手に渡ってどんな演奏をするのだろうかと、職人の浪漫を広げていたに違いない。この楽器は、それを物語っている。作った人の期待に応えようと、もう一度そっと吹いてみる。やはり、いいものはいい。

 新しい楽器は、演奏する人の心を駆り立てる。あんな曲を吹いてみよう、こんな曲も吹いてみようと、幾つもの楽曲が頭の中を通り過ぎ、その楽曲を吹き終えたときの爽快な気分が漂ってくるような気がした。新しいフルートが、また新たな音楽を教えてくれた。
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