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季刊誌「ムラマツ」に掲載されたエッセイをご紹介いたします。
トップページエッセイ「フルートで料理」 > 12.火加減
エッセイ「フルートで料理」 ESSAY
文:齋藤賀雄(元読売日本交響楽団フルート奏者 東京音楽大学教授)
画:おおのまもる(元読売日本交響楽団オーボエ奏者)
12 「火加減」
 竈が土間に並んでいる台所を知っている。ガスや電気による調理は確かに便利になったが、昔の子供達は家庭で夫々に仕事を割り振られていて、私は竈と風呂の火焚きだった。徐々に温度を上げたり一定の温度を保つためには、絶妙な技術を考える必要があった。

 この、竈と風呂の火焚きは、薪を焚き口に放り込んでただ燃やせばいいというものではない。湯水の温度や炎の加減が思い通りにうまく調節できるようにするためには、細目で固い薪や、太目で柔らかい薪といった具合に、当然、薪割りの仕事が大切になってくる。

 釜の中の米や煮物がうまく炊けるようにという火加減の名人芸を楽しむことの他に、この火焚きの仕事にはもう一つの愉しみがあった。炎は、薪の種類によっても、燃え方による温度によっても、その色を正に千変万化に変えて、火焚き番の目を愉しませてくれた。

 物が燃えるときの炎の色が、こんなに変化するものだとは思ってもみなかったが、一つの薪が燃え始めてから完全に燃え尽きるまでの間に見せる炎の色の変化には、時として人間社会に警告を放つ恐ろしい瞬間の炎を除けば、独特で、摩訶不思議な魅力がある。

 我々人間は、遥か古代の昔から、太陽を崇め、火は絶やすことなく生活の中に取り入れ続けてきた。考えてみれば、匙加減や、電子レンジの秒数が表示されるようになって、料理の原点の火加減が忘れられようとしている今こそ、炎の色の変化を愉しみたい。


 ところで、息や弓を使うもの、つまり管楽器や声楽、そして弦楽器などの場合には、音を出した瞬間々々をどのようにつなげていくかということの他に、一つの音から次の音までの間を、どのように過ごすかということを考えていなければならない。

 フルートを吹くときに、まるで鍵盤楽器を弾いているような感覚で演奏している人が多いような気がする。いや、鍵盤楽器奏者が何も考えていないという意味ではない。むしろ息や弓によって、無造作に音を連続させてしまいがちな、我々の方が恥ずべきだと思う。

 音が出た瞬間を、楽譜を印刷するときの五線紙に音符の刻印を押す瞬間だとすれば、その刻印が実際に音で演奏されるときの連続変化や、音から音へ移る過程での息の変化を楽しむことが音楽することであり、それを聴いて楽しむことが音楽を愉しむことだと思う。

 フルートは、他の管楽器のようにリードや唇といった振動体を持たないから、それだけ直接に、この、音から音へ移る過程での息の変化を感じ取ることができて、それが、独特で摩訶不思議なフルートの魅力を醸し出しているのに違いない。

 我々人間は、遥か古代の昔から、自然現象としての空気の流れを、森のざわめきや、風に揺れる野原の草木などによって感じ取ってきた。考えてみると、風速がデジタル表示になって、 “虎落笛” が忘れられようとしている今こそ、息の変化を愉しみたい。
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