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季刊誌「ムラマツ」に掲載されたエッセイをご紹介いたします。
トップページエッセイ「フルートで料理」 > 23.出前
エッセイ「フルートで料理」 ESSAY
文:齋藤賀雄(元読売日本交響楽団フルート奏者 東京音楽大学教授)
画:おおのまもる(元読売日本交響楽団オーボエ奏者)
23 「出前」
 日本には古くから “出前” という風習があった。料理を作って、それを注文した家に届けるというシステムである。その料理そのものを出前ということもあるし、別の言い方では “仕出し” とも呼ばれてきた。本来、仕出しとは、新しい趣向という意昧である。

 共稼ぎの失婦が多くなってからは勿論のこと、それ以前からも、この “出前” は日本の食文化の特色だったような気がする。不意の来客時などには、我が家でも出前が活躍したのを覚えている。不意でなくても、来客に敬意を表して出前を取ることもあった。

 同じことを “店屋物を取る” とも言うが、こちらは、どちらかと言えば手を省くという場面で使われてきたような気がする。共稼ぎの夫婦が多くなってからの事かも知れない。ここで言う “店屋(テンヤ)” とは、昔の駅舎に併設されていた食い物屋のことを指す。

 最近では、それが “外食” という言葉に変わってきた。家族で揃って外で食事をしようという族が増えて、ファミリーレストランというものが出現して久しいが、自宅で手間暇かけて何かを作っているよりも、かえって経済的で便利なような錯覚に陥りやすい。

 “出前” も “外食” も現代では同じように見えるが、根本的には、違いを区別したい。 “出前” が “仕出し” と呼ばれてきたのは、その料理に常に新しい趣向が秘められてきたからだと思う。江戸時代に繁盛した倹飩屋という一膳飯屋が出前の元祖かも知れない。


 ところで、もう30年以上も昔の話になるが、ドイツ留学時代に “ハウス・コンサート” という形の演奏会を数多く体験した。そして、この体験は、演奏会場で仰々しくやるのだと思っていた演奏会に対する概念を大きく変えて、未だに自分の中に潜在している。

 この “ハウス・コンサート” の体験によって、西洋に音楽文化が定着している原点を見た思いがしたことを鮮明に想い出す。上手下手は関係なく、その家の主が私たち音楽学生たちと一緒に音楽を演奏して、そこに招かれたお客と一緒になって音楽を愉しむのだ。

 同じようなコンサートが、教会でも数多く開かれていて、これにも何度か出演する機会に恵まれた。子供の頃、日曜日ごとに教会で開かれていた “日曜学校” というのに参加しては、そこで歌われる賛美歌の響きが、私を音楽の虜にしてしまった過日を想い出す。

 最近では、演奏会場で仰々しくやる演奏会よりも、気の合った仲間たちと音楽を楽しく演奏し、そこに集まってきた人たちと共にその歓びを分かち合うようなコンサートが愉しくてたまらないが、安易に考えると、手抜きという錯覚を与えることになり兼ねない。

 “ハウス・コンサート” も “演奏会場での演奏会” も同じようだが、基本的には、区別をしたい。 “ハウス・コンサート” には、新しい趣向が不可欠だし、それが、仲間同然のように身近にいるお客さんたちに直接伝わるのだから、これが音楽の元祖かも知れない。
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