田
舎 料 理
齢を重ねてきたせいか、油物を敬遠する傾向になった。さっぱり味を求めるようになったから目につくのかも知れないが、最近、
『田舎料理』 という類の看板が多くなってきたような気がする。田舎料理とは、一体どんなものをいうのだろう。
『あなたの田舎はどちらですか?』 と尋ねたときに、田舎には、田んぼや畑や、広い野原や小川などがあって、背負子をしょった村人達が家路を急ぐ頃には、家々の煙突からは煙がたなびいていなければならないと考える人達が多くなってきたような気がする。
都会の中でも、東京は異常な都市だと思う。種々雑多な人種が集まってきて、一種のマニュアルだけを頼りに、一見整然とした共同生活を営んでいる。隣人と顔を合わせるどころか、挨拶を交わすこともなく、何年も過ごしてしまうことが少なくないという。
『田舎料理』 や 『家庭料理』 風の看板が多いのは、そのマニュアルの一端かも知れないが、そんな店で私が味わいたいのは、料理のメニューではなくて、料理そのものの味なのである。料理は音楽と同じように、その人の人間や人生をそのまま表わすから面白い。
年老いた母親に、 『どうすればこういう味噌汁の味が出るのかな?』 と尋ねたことがあった。 『さあね・・・。お鍋に何十年もの味が染み込んでいるだけでしょ。』
と即答した母親をポカンと眺めていたことを思い出す。母親は偉大だった。 |
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