火
加 減
竈が土間に並んでいる台所を知っている。ガスや電気による調理は確かに便利になったが、昔の子供達は家庭で夫々に仕事を割り振られていて、私は竈と風呂の火焚きだった。徐々に温度を上げたり一定の温度を保つためには、絶妙な技術を考える必要があった。
この、竈と風呂の火焚きは、薪を焚き口に放り込んでただ燃やせばいいというものではない。湯水の温度や炎の加減が思い通りにうまく調節できるようにするためには、細目で固い薪や、太目で柔らかい薪といった具合に、当然、薪割りの仕事が大切になってくる。
釜の中の米や煮物がうまく炊けるようにという火加減の名人芸を楽しむことの他に、この火焚きの仕事にはもう一つの愉しみがあった。炎は、薪の種類によっても、燃え方による温度によっても、その色を正に千変万化に変えて、火焚き番の目を愉しませてくれた。
物が燃えるときの炎の色が、こんなに変化するものだとは思ってもみなかったが、一つの薪が燃え始めてから完全に燃え尽きるまでの間に見せる炎の色の変化には、時として人間社会に警告を放つ恐ろしい瞬間の炎を除けば、独特で、摩訶不思議な魅力がある。
我々人間は、遥か古代の昔から、太陽を崇め、火は絶やすことなく生活の中に取り入れ続けてきた。考えてみれば、匙加減や、電子レンジの秒数が表示されるようになって、料理の原点の火加減が忘れられようとしている今こそ、炎の色の変化を愉しみたい。 |
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