煮
浸 し
食材を如何に旨く食すかということについては、昔から様々な試みがなされ、それが、色々な形となって現在へと受け継がれてきた。煮る、焼く、蒸す、揚げる、炒めるなど、調理方法の一つ一つには、食材を活かすために、先人達の知恵が秘められてる。
農家が畑で直売する新鮮な野菜を見たときに、港の市場で新鮮な魚を見つけたときと同じ位に嬉しくなってしまうのは、自分が齢を重ねた所為だろうか。それが葉物や根菜だったりすると、煮るという調理方法が頭に浮かぶが、ここに秘められた知恵が凄い。
30年以上も昔の話になってしまうが、留学先のドイツから何度かイタリアに旅したことがあった。そのときに、とある片田舎の村のレストランで口にした野菜スープの味が忘れられず、日本に帰ってからも、そのこくのある味に何度も挑戦したことがあった。
留学先ではどうしても分からなかったが、日本に帰ってきて、懐かしい “お袋の味” の数々を口にしていたときに、その謎が解けた。糠味噌漬けのお新香もかなりのヒントを与えてくれたが、極めつけはそれまで殆ど気にも留めていなかった菜っ葉の煮浸しだった。
調理の段階で最終的な味を決めてしまうものと思い込んでいたのは浅はかだった。菜っ葉の煮浸しには、 “煮る” という調理の後に、 “浸す” という妙が秘められていた。熱い鍋の中身が冷えながら変わりゆく過程を想像できるという調理は、まさに絶妙だ。 |
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