出
前
日本には古くから
“出前” という風習があった。料理を作って、それを注文した家に届けるというシステムである。その料理そのものを出前ということもあるし、別の言い方では
“仕出し” とも呼ばれてきた。本来、仕出しとは、新しい趣向という意昧である。
共稼ぎの失婦が多くなってからは勿論のこと、それ以前からも、この “出前” は日本の食文化の特色だったような気がする。不意の来客時などには、我が家でも出前が活躍したのを覚えている。不意でなくても、来客に敬意を表して出前を取ることもあった。
同じことを “店屋物を取る” とも言うが、こちらは、どちらかと言えば手を省くという場面で使われてきたような気がする。共稼ぎの夫婦が多くなってからの事かも知れない。ここで言う
“店屋(テンヤ)” とは、昔の駅舎に併設されていた食い物屋のことを指す。
最近では、それが “外食” という言葉に変わってきた。家族で揃って外で食事をしようという族が増えて、ファミリーレストランというものが出現して久しいが、自宅で手間暇かけて何かを作っているよりも、かえって経済的で便利なような錯覚に陥りやすい。
“出前” も “外食” も現代では同じように見えるが、根本的には、違いを区別したい。 “出前” が “仕出し” と呼ばれてきたのは、その料理に常に新しい趣向が秘められてきたからだと思う。江戸時代に繁盛した倹飩屋という一膳飯屋が出前の元祖かも知れない。 |
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