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季刊誌「ムラマツ」に掲載されたエッセイをご紹介いたします。
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エッセイ「もがりぶえ」 ESSAY
文:團 伊玖磨
10 「中国の空の下で 4」
 日本と中国との国交が回復する前から、特に国交が回復してからずっとこの方、日本と新生中国との間の現在の友好関係を作り上げるには、実に多くの人の大きな努力が積み重ねられて来た。どれだけ多くの人が中国を訪問し、又、中国から日本を訪問し、公(おおやけ)も民間も一丸となって友好を第一義とした交流を積み重ねて来たか判らない。その結果、現在の日本と中国との良好な関係が出来上がったのである。

 そこで、その出来上がった友好関係を基礎に、より具体的な、現実的な、相互に益する次の段階に入ろうという次のステップが、中国自体の開放政策と歩調を揃えて本格的に始まっているのが今である。或る音楽関係の中国の要人は、 *ニイ好(ニイハオ)! 乾盃(カンペイ)! 再見(ツァイチェン)! だけの時代はもう終りました、と言った。僕が賛成した事は当然である。何故なら、文化交流、わけても音楽の交流は、挨拶だけでは意味を成さないからである。

 この(1985年)11月一杯、約一月の間を、僕は招請を受けて、上海音楽学院、南京芸術学院、北京の中央音楽学院で作曲の実作の講義を行った。今迄只訪問して、只見学していた音楽学院と異って、その中に身を置いて肌で知った中国の音楽家養成の組織的、精神的、技術的な "熱さ" は、僕を今迄より眞剣に、深く中国の音楽及び音楽家の将来を考えさせた。

 このところ、中国の若い演奏家達の国際コンクールでの成績が上がって来ている。何故だろうか。それに呼応するように、作曲の学生達の新しい世界への挑戦も積極的である。如何にして彼等は、 "文革" の十年間の文化的鎖国の弊を取り返し、先に進むかに全精力を賭けている。作曲の方は時間のかかる作業だから、あと数年、或いは十年後に世界の桧舞台が彼等を待っているものと思う。しみじみ日本人と中国人の音楽的な異質性を考える。無論、東アジア人として、同じ中国文化圏に属してきた日本人と中国人に共通点は多い。然し、異質性を知る事こそ、相互協力を生む重大基礎でもある。百年以上前に明治維新を持った日本人の方が、今文化的維新を持つ事になった中国人よりも "欧化" が進んでいるかに見える。然し、ヨーロッパと遠くとも歩いていける中国人の方が、欧化以前に遥かにヨーロッパ人に体質的に、感覚的に、又思想的に近い。その上、彼等は二千年以上続いた独自な歴史的傳統を持っている。音楽学院の作曲家学生の卒業制作は、管弦楽曲と中国独特の民族楽器の合奏曲の双方を提出せねばならない。然もそれは双方とも新しい作曲技法で書かれるのが今である。昔からのシノワゼリーの曲を想像しては不可ない。もう時代が違うのだ。

 今、中国では眼と身体を世界に向けた若い音楽家が育ちつつある事を僕達は知らねばいけないと思う。そして、良い意味で競争しながら、協力しながら、世界に出て行く可きだと思う。明治維新が百数十年昔にあっただけを理由に、日本の音楽家が中国の音楽家の兄貴分の錯覚に陥ってはいけない。二千年の歴史の中で、百年は僅かの比重にもならぬ事を僕達は謙虚に知ると同時に、相互に刺戟し合う現実的な協力を、これから進めて行くのが良いと思う。

 行く手(ゆくて)の青空を輝やかしいものにするために――。

(このエッセイは、1983年より93年まで、季刊 『ムラマツ』の巻頭言として、團 伊玖磨氏に執筆していただいたものを、そのまま転載したものです。)

* 原文は「 びんなん(ニイハオ)」 と表記されておりますが、日本語環境では表示ができないため文中では「ニイ好」と表記しております。
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