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季刊誌「ムラマツ」に掲載されたエッセイをご紹介いたします。
トップページエッセイ「もがりぶえ」 > 16. ノーズ・フリュート 2
エッセイ「もがりぶえ」 ESSAY
文:團 伊玖磨
16 「ノーズ・フリュート 2」
 風の又三郎という玩具が昔あった。紐の先に、僕が子供の頃知っていたものでは、風穴をあけてある竹筒が結び付けてあって、紐の一端を持って、竹筒をぐるぐると回すと、風穴に空気の摩擦が起こって、ぶーん、ぶーんと音がするのだった。回転を速くすればする程、当然発する音の音程は高くなり、緩やかにすると音程は下がるのだった。その事が面白くて、緩急を付けながら又三郎を回して遊んだ。だんだんにそれだけでは面白くなくなって、竹筒の風穴を大きくしたり、裂け目にしたり、色々と細工をして音質を変えてみた。

 ずっと経って、アラスカの一人旅をしていた。15年程前の事である。沢山の日本からヨーロッパへの旅人が通過するアンカレッジで降りて、その街を振り出しに、首府のフェアバンクス、最北端のバロー、エスキモーの村コッツェビュー、ゴールド・ラッシュの夢の跡ノームを音楽を探しながら歩いた。アラスカに音楽の要素は少なかった。コッツェビューや北端のバローでエスキモーの音楽と踊りを努力して探し、聴き続けたけれども、心に残るものは少なかった。エスキモーが音楽的民族でないのか、或いは僕の探し方が悪かったのか、その双方だったのか、その後10年程して再訪した時も同じ結果なのだった。

 たゞ、コッツェビューの村で、僕は風の又三郎で遊んでいた子供を見付けて、その遊び道具をよく調べさせて貰った。道具は、紐の先端に鯨骨でぎざぎざの付いた楕円形の板を結び付けたもので、日本のものよりも良い音がした。ぎざぎざが鳴るのである。

 エスキモーは曽てアリューシャンが結氷して続いていた頃、アジアから渡って行った人達だと言い、蒙古青斑がある事や、綾取り遊びがある事等々でアジアとの人種的輪が論じられる民族である。風の又三郎もアジアからの輪の一つかと考えさせられた。

 風をコントロールして音を出す。その事は、鼻からの風、口からの風で鳴るフリュートを僕には連想させる。無論、フリュートは完成された楽器であり、子供の玩具とは遠いものだけれども、人類は永い永い歴史の中で、こうした風の音から、徐々に楽器を生みだして行ったのでは無いか、等と考える事は、あながち間違いではなさそうである。

(このエッセイは、1983年より93年まで、季刊 『ムラマツ』の巻頭言として、團 伊玖磨氏に執筆していただいたものを、そのまま転載したものです。)
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