音楽祭期間中、バイロイトの酒場にいた時、知り合ったばかりの画家ルノワールから『ニーベルングの指輪』の四部作は長すぎるとつぶやかれます。この取るに足らない批判が癇に障ったのか、サン=サーンスはテーブルの上のグラスをカチ割り、店を出ていきました。この出来事はルノワールが後に回想したものですが、同時に酒場でワーグナーを強く非難していたことをも明かしています。
バイロイト滞在中の不安定なサン=サーンスの精神状態を浮き彫りにした出来事といえます。