サン=サーンスは少年時代にユゴーの詩集をプレゼントされると、その深みに引き込まれ、新作が出る度に貪り読んだそうです。

パリ音楽院後、15歳になったサン=サーンスは早速ユゴーの詩による歌曲『ギタ―』を作曲します。その後生涯にわたり30曲余ものユゴーの詩による歌曲を残しますが、この数は当時の作曲家の中では群を抜いて多く、サン=サーンスはユゴーに強く感化された人物といえます。

ちなみに、愛弟子フォーレは器楽より先に歌曲から作曲を始めますが、ニデルメイエール音楽学校で、師サン=サーンスから受けた作曲の手ほどきもまたユゴーの詩によるものでした。

その後フォーレはフランスの歌曲王ともいえるほど多くの歌曲を残しますが、そのきっかけを与えたのがサン=サーンス。ここにはユゴーの詩観から歌曲の深みに導く。そんなサン=サーンスの教育的戦略があったのかもしれません。