スタッフのおすすめ「フルートと他の楽器」(弦楽器とのアンサンブル)

このコーナーでは、ムラマツのスタッフが、長年の経験から「これは!」と思う楽譜を、その目的や内容の解説付きでご紹介します。
定期的にご紹介する楽譜を更新して行きますので、皆様の目的に応じた「使える」楽譜が見つかることと思います。

フルートとヴィオラのデュオ(Fl.Va)

ドヴィエンヌはフルート、ファゴット奏者であり、パリ音楽院の初代フルート科教授も務めました。 作曲家としても多才で、室内楽曲、フルート協奏曲、交響曲からオペラなど多くの作品を残しています。 1759年〜1803年、わずか44歳の若さでこの世を去っています。 革命期のフランス、パリで活躍し、最期は精神を病んで亡くなったそうです・・・。
今回ご紹介するのはフルートとヴィオラのデュオという珍しい編成の曲です。 6曲からなる二重奏曲集のうちの一つ、作品5の3です。 2楽章からできており、派手さはありませんが、ヴィオラのしっとりと落ち着いた雰囲気と 洗練された美しさが漂う印象的な曲です。 『フランスのモーツァルト』と呼ばれたというのもうなずけます。 ヴィオラの方と演奏する機会がある時に、是非、選んで頂きたい一曲です!
T Allegro molt con espressione U Rondo
【中級者向け】 (U)

一粒で二度おいしいC.P.E.バッハ その2 (Fl.Vn.Bc/Fl.Pf)

以前、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハの同様の形のソナタをご紹介しました。 そのときは、2本のフルートと通奏低音でしたが、今回はフルートとヴァイオリンのトリオ・ソナタです。エマヌエル・バッハの独奏楽器とオブリガート・チェンバロのためのソナタの多くは、チェンバロの右手(オブリガート)を別の旋律楽器に割り当てたトリオ・ソナタの編成にもなっています。これらはどちらの編成ともエマヌエル自身の手になるものとされていますので、集まった楽器によってどちらでも演奏することが出来る作品です。

■トリオ・ソナタ ニ長調 Wq.151はチェンバロの右手をヴァイオリンに置き換えたもので、1747年にエマヌエル自身によって編曲されています。1747年というのはちょうどポツダムでサン・スーシ宮殿が完成した年で、エマヌエルの父ヨハン・ゼバスティアンがポツダムを訪れて、大王に「音楽の捧げ物」を献呈した年でもあります。当時のフリードリヒ大王の宮廷にはフルートはクヴァンツ、フリードリヒ大王ら、またベンダやグラウンなどのヴァイオリンの名手、そしてチェンバロにはエマヌエル・バッハらがいたのですから、素晴らしい演奏が繰り広げられていたことでしょう。

■フルートとオブリガート・チェンバロのソナタ ニ長調 Wq.83はポツダムで1745年に作曲されたと考えられており、これはエマヌエルが仕えるフリードリヒ大王の即位から4年後であり、まだ有名なサン・スーシ宮殿は無かったのでポツダムの市中宮殿で演奏されたことが考えられます。フルートはフリードリヒ大王、チェンバロはエマヌエル自身だったかも知れません。この曲は前にご紹介したエマヌエル・バッハの「4つのフルート・ソナタ Wq.83-86 第1巻」に入っている曲ですので、すでにお持ちの方はその楽譜の1曲目に当たります。
(SR)

バッハの捧げ物(Fl.Vn.Pf/Fl.Cemb)

「フーガの技法」とならんでJ.S.バッハ晩年の大作「音楽の捧げ物」の中のトリオ・ソナタです。「音楽の捧げ物」は、次男カール・フィリップ・エマヌエルがチェンバロ奏者として奉職しているフリードリヒ大王の宮廷を訪ねたおり、大王から提示されたテーマをもとに作曲し、献呈した作品集です。鍵盤楽器のためのリチェルカーレが2曲、楽器指定の無いカノン9曲とフルート、ヴァイオリンと通奏低音の指定があるトリオ・ソナタと無限カノンからなる特殊な曲集です。この楽譜はその中から楽器指定のある2曲を集めたものでバッハの代表的なトリオ・ソナタというだけでなく、この時代のトリオ・ソナタの最高峰ともいうべき作品です。原典版で定評のあるヘンレ社の出版で、トリオ・ソナタのほかに無限カノンが付いていることがこの楽譜の特長です。
(SR)
J.S.バッハの傑作、「音楽の捧げ物」のトリオ・ソナタはやってみたいけれど、ヴァイオリンが居ないという方、こんな楽譜はいかがでしょう。これはこのトリオ・ソナタを、ヴァイオリンのパートをチェンバロの右手に置き換えて、フルート1本とチェンバロの右手が上声部を、そしてチェンバロの左手が通奏低音を受け持つという形に編曲したもので、基本的には原曲と全く変わりません。このような形の曲は当時のテレマンやC.P.E.バッハの作品などに多く見られるもので、特殊な編曲というわけではありませんが、この曲に関しては現代の編曲です。
(SR)

数少ないJ.S.バッハのトリオソナタから(Fl.Vn.Bc)

バッハのフルート作品は他のジャンルの曲に比べてかなり少ないという印象があります。しかもその中の一部は偽作といわれているので、フルートに関する室内楽はわずか7曲ほどが真作と考えられています。バッハが今回ご紹介するようなトリオソナタをあまり作曲しなかったかというと、どうもそうではないらしく、ケーテンの宮廷楽長を務めていた時代にはかなり作っていたと考えられます。しかし、そのほとんどがケーテン宮廷付属図書館の火災や、楽譜を相続した息子の管理の悪さから失われてしまったと思われるのは残念なことです。
わずかに残ったトリオソナタのうちフルート、ヴァイオリンと通奏低音で演奏されるこの曲は偽作説や、BWV 1021のヴァイオリン・ソナタと同一の通奏低音であることから息子の作曲の課題として共同で作曲したという説もあります。とはいえ、明るく美しい楽想を持った1楽章、軽快な2楽章、ホ短調の悲しげでゆったりとした3楽章、通奏低音も含め、3声のフーガで書かれた4楽章の4つの楽章で構成されたバッハにしてはコンパクトですが、よくまとまった名曲です。ご紹介するベーレンライター版は、ヴァイオリン・パートを第2フルートでも演奏できるように編集された便利な楽譜です。
(SR)

気軽に始められる素敵な作品です♪(Fl.Vn.Pf)

セザール・キュイ(1835-1918)はロシアの「五人組」(1870年代に解体)のメンバーとして知られる、作曲家、批評家で、陸軍大将も務めました。この「5つの小品」はフルート、ヴァイオリン、ピアノのために書かれた作品。この編成のオリジナル作品は比較的珍しく、録音もそれほど多くはありません。ですが、一緒に演奏する仲間を見つけやすい編成かと思います。小品のそれぞれがロマンティックで美しく、抜粋してアンコールなどにも使えそうです。
T. BADINAGE(バディナージュ)
スタッカートや弱拍のテヌート、アクセントなどが登場し、タイトル通り、陽気におどけてみせるような雰囲気。可愛らしい楽章です。[Allegretto、4/2、イ長調、約1分]
U.BERCEUSE(ベルスーズ)
ピアノが持続する四分音符にのせて、ヴァイオリンとフルートがゆったりと奏でます。赤ちゃんが気持ち良く眠れるような、優しい子守歌です。[Andantino、4/4、ニ長調、約2分]
V.SCHERZINO(スケルツィーノ)
流れるようなテーマから始まり、中間部では転調して、最後はフルートとヴァイオリンの掛け合いから華やかなエンディングを迎えます。[Allegro non troppo、4/3、ト長調、約2分]
W.NOCTURNE(ノクチュルヌ)
切なく美しい夜想曲です。全体が6/8のシチリアーナのリズムにのって、しっとりと奏でられます。[Andantino、6/8、嬰へ短調、約3分]
X.WALTZ(ワルツ)
軽やかでおしゃれな三部形式のワルツです。中間部で転調し、甘いメロディーが奏でられます。最後は始めのテーマにもどり、さわやかに曲を締めくくります。[Allegretto、3/8、ニ長調、約3分]
【中級者向け】 (YS)

うっとりします(Fl.Vc.Pf)

ルイーズ・ファランク(1804-1875)は19世紀のフランス・パリ生まれの女流作曲家です。 ピアニスト、パリ音楽院のピアノ科教授としても活躍しました。
この曲は58歳の時に作られた作品で、4つの楽章からできています。 フルート、チェロ、ピアノそれぞれが見事に優雅で美しい曲です。 華やかでドラマチックというよりは、しっとりと流れる様な美しさで、 ずっと聞いていたくなります。 この編成で曲を探している方におすすめします。
演奏会のプログラムに加えて頂きたい一曲です!
T. Allegro deciso U. Andante V. Scherzo W. Finale
【中級〜上級者向け】 (U)

ピアソラの前にガルデルを(トリオ→Fl.Vc.Pf / デュエット→2Fl)

カルロス・ガルデルはアルゼンチンの国民的英雄です。ガルデルは1890年生まれといいますが、生地はフランスのトゥールーズとも、ウルグアイまたはアルゼンチンともいわれています。1911年に歌手としてデビュー、その後タンゴの歌手、作曲家として有名になります。さらに彼はイケメンだったので、ニューヨークで数々の映画に出演、人気を不動のものとしました。映画撮影でニューヨーク滞在中に、バンドネオンを弾く子供だったピアソラ少年と知り合い、オフの日にはニューヨークを案内してもらったとのこと。さらに撮影が終わって旅立つときにバンドネオン奏者としてピアソラ少年を演奏旅行に連れて行きたいと父親のノニーノに申し出たそうです。この時はまだ子供だからということでノニーノは断ったそうですが、もし同行していたら、その演奏旅行の途中で起こったチャーター機の墜落事故でピアソラ少年も亡くなり、後の彼のタンゴは聴けなかったことになります。ガルデルはこの飛行機事故で1935年に亡くなりました。彼の葬儀は棺がブエノスアイレスに着いたところから記録映画に残されており、ビルの窓々から花が投げられるといった、まさに国葬のような葬儀でした。
ガルデルが作った曲は現在でも愛され、歌い演奏され続けています。
この楽譜はその中から代表作「場末のメロディー」「首の差で(ポル・ウナ・カベサ)」「想いの届く日」「わが懐かしのブエノスアイレス」「帰郷」の5曲をフルート、チェロ、ピアノ(ID:30784)とフルート二重奏(ID:31941)に編曲してあります。これら5曲はそれぞれ、1932年(「場末のメロディー」)、1935年(「タンゴ・バー」)、1935年(「想いの届く日」)、1936年(「わが懐かしのブエノスアイレス」)、そしてガルデル没後71年の2006年(「帰郷(ボルベール)」)の映画音楽でもあります。
【中級者向け】 (SR)

”復刻”されたゴーベールの室内楽曲(Fl.Vn.Pf)

指揮者、作曲家そしてフルーティストでもあったゴーベールは、フルートのフレンチ・スクールの創始者タファネルの弟子であり、彼の3代後のパリ音楽院管弦楽団の指揮者も務めました。ゴーベールの室内楽といえばフルート、チェロ、ピアノのための「3つの水彩画」「ロマンティックな小品」が知られていますが、フルート、ヴァイオリン、ピアノの三重奏はこれまで殆ど知られていませんでした。フルーティストのF.スミス氏のCD録音によって知られるようになったこの曲は、古代ギリシアやローマの貨幣などに刻まれた人物や情景を音楽にしたものです。副題に「泉のニンフ − 踊り」とあり、前半は涌き出る泉の水と輝きを、後半は一転して踊りを描いていますが、その中にも前半の泉を回想する部分が何度か出てきます。フランス近代はドビュッシーやラヴェルが活躍した時代です。この作品は、その影響を大きく受けたゴーベールが、まさにこの時代の文化の特徴の一つである古代への憧憬を音楽で描いた美しい作品に仕上がっています。演奏会のレパートリーの一つに是非加えて下さい。なおこの曲はゴーベールの友人で、パリ音楽院管弦楽団の団員でもあったヴァイオリニストのフェルナン・ルカンに捧げられています。
(SR)

秋のおすすめ(Fl.Vc.Pf)

ゴーベールはフランスのフルーティストで、指揮者、作曲家としても活躍しました。3曲のソナタ、タファネルと合作した「17のメカニズム日課大練習曲」など、フルートの重要なレパートリーや教則本を作りました。この「3つの水彩画」は1926年に作曲されました。第1曲「ある晴れた朝に」、第2曲「秋の夕暮れ」、第3曲「セレナーデ」と、それぞれの曲にタイトルが付けられています。第2曲は切なくなるような旋律が続き、次第に日が暮れていく様子が目に浮かぶようです。しっとりと演奏してみてください。
演奏時間:約4分 (I)

優美で魅力的な小品はいかがですか?(Fl.Vc.Pf)

ゴーベールと聞くと、あっあの練習曲の!タファネル・ゴーベールのゴーベールね!と思われる方が多いかと思います。今回ご紹介する曲は、ゴーベールの作品の中では珍しいかもしれませんが、フルートとチェロ、ピアノの編成で書かれた作品です。もしこの編成で何か曲を探されている方がいらっしゃいましたら、ぜひいかがでしょうか?
演奏時間は小品のため8分程度ではありますが、この編成の魅力がギュッとつまった美しい作品となっています。 三部形式で、チェロの流れるような美しい魅力的な旋律から曲が始まります。その後その旋律はフルートが引き継ぎ二つの楽器が会話をするかのように奏でられていき、シチリアーノ舞曲風のフルートの旋律が印象的な後半へ…。そして曲の終わりになるにつれてそれぞれの楽器の個性が生かされたこの二つの旋律が重なり合い、クライマックスへと向かっていきます。
まさにタイトル通り、ロマンティックで甘美な雰囲気が漂うこの作品はまるでまろやかで甘いフランス菓子を味わっているかのような上品な曲です。
(NS)

ヘンデルのトリオ・ソナタ作品2の1は、ハ短調それともロ短調?(Fl.Vn.Bc)

ヘンデルの「6つのトリオ・ソナタ 作品2」は、後期バロック時代の代表的なトリオ・ソナタ集で、演奏される機会も多い作品です。その中の第1番はこれまでハ短調のソナタとして親しまれてきました。 ところが、この曲には別にロ短調の版が存在するのです。これは作品2の1aがハ短調、作品2の1bがロ短調、またはHWV 386のaとbという作品番号で区別されています。この2つの版の第1パートには、両方ともフラウト・トラヴェルソという指定があり、そのまま読むとどちらもフルート用ということになりますが、これが問題です。調性としてはハ短調はアルト・リコーダー(フラット系に強い)向き、ロ短調はトラヴェルソ(シャープ系に強い)向きですが、第1パートは音域が狭いので、少し高いハ短調版でも高音域が当時のトラヴェルソの音域に入っています。これまで、ハ短調版の方が成立が早いと考えられることから、リコーダーでもフルートでもハ短調で演奏されることが多く、楽譜もロ短調版はあまり出ていませんでしたが、最近、ロ短調版も入手しやすくなりました。ちなみに、ニコレはハ短調で録音していましたが、ブリュッヘンはロ短調で録音していたのです。トラヴェルソを吹く方でロ短調版を探しておられた方は多いのですが、現代のフルートで演奏しても、より低くて落ち着いた響きになるロ短調で演奏するのも魅力があります。一度、ロ短調版を試してみてはいかがでしょうか。
(SR)

2本フルートとチェロ、またはファゴットで。(2Fl.Vc)

この曲は2本のフルートとチェロのために書かれており、ハイドンはこの編成のトリオは4曲残しています。作曲されたのは1794年で、この時期のイギリス(ロンドン)での公演で大成功を納めています。この公演で交響曲「驚愕」「軍隊」「時計」「太鼓連打」「ロンドン」が生まれています。ロンドン・トリオはハイドンのパトロンであるイギリス人のアストン男爵とその夫人の為に作曲されたと言われています。チェロのパート譜をファゴットで演奏することも出来ます。第一楽章 アレグロ・モデラート  生命力溢れる、明るく軽やかな楽章。2本のフルートの踊るような掛け合いが聞く人の心も弾ませます。第二楽章 アンダンテ  ゆったりとしたテンポの優雅な楽章。穏やかな幸福感に満ちています。第三楽章 フィナーレ ヴィヴァーチェ  軽快で駆け抜けるようなフィナーレ。全ての楽章に共通する明るい輝きを放っています。さあ、あなたの街でロンドン・トリオ!
【中級者向け】 演奏時間:約10分 (U)

弾き応え、聴き応え抜群です(Fl.Vc.Pf.)

アメリカの作曲家ローウェル・リーバーマンの作品をご紹介いたします。彼の「フルート協奏曲」「ピッコロ協奏曲」はジェームズ・ゴールウェイが録音しており有名ですが、今回ご紹介するのは、ジニー・ゴールウェイに捧げられた作品、「フルート、チェロとピアノのためのトリオ」です。
この作品は4楽章構成で、ユニゾンで始まる第1楽章は拍子が目まぐるしく変わります。8/8や9/8、10/8拍子などが出てきますが、各拍子は3+3+2、2+2+2+3、3+3+2+2など、細かく刻まれています。第2楽章はフルートとチェロの歌うようなメロディが印象的です。ゆっくりな第3楽章を経て、第4楽章では再び第1楽章冒頭と同じ動機が使われ、スピードに乗って最後まで駆け巡ります。
どの楽器も難易度は高く、アンサンブル力も問われる1曲ですが、新しいレパートリーとしていかがでしょうか。
T.Allegro  U.Moderato  V.Largo  W.Presto
【上級者向け】 (B)

アンサンブルで聴かせるメンデルスゾーンの魅力(Fl.Vc.Pf.)

メンデルスゾーンが絶頂期に書いたとされている「ピアノ三重奏曲」。ヴァイオリン、チェロ、ピアノのために書かれた曲を編曲したものです。ヴァイオリン・チェロ・ピアノでの演奏は有名ですが、フルートの編成ではオリジナルとニュアンスが全く異なっていて、違う曲のように聴こえます。短調の曲の中でも隠しきれない、メンデルスゾーンらしい明快さが楽しめる1曲です。
【中・上級者向け】 演奏時間:約27分 (H)

セレナーデ(Fl.Vn.Va)

レーガーは1873年生まれのドイツの作曲家で、オルガン、ヴァイオリン、チェロを父から学び、ピアノを母から学びました。ミュンヘンやライプツィヒの音楽院教授を経て、マイニンゲン宮廷楽団の宮廷楽長に就任しました。1914年、マイニンゲン宮廷楽団の解散後、イェーナへ移住し作曲活動や演奏活動を続けましたが、1916年に心臓発作のため急死しました。43歳で生涯を閉じましたが、歌劇と交響曲以外の全てのジャンルの作品を書いた多作家でした。(作品数1000以上)
この楽譜にはセレナーデが2曲入っていますが、今回ご紹介するのは「ト長調 op.141a」です。この曲は1915年に作曲されました。「フルート・パートをヴァイオリンで演奏してもよい」とレーガー自身が指示しており、フルート・パート譜の最後にヴァイオリン・パートが入っています。快活な第1・3楽章と美しい第2楽章の対比、そしてダイナミクスの急激な変化が印象的です。
フルート・ヴァイオリン・ヴィオラの三重奏ですと、ベートーヴェン作曲の「セレナーデ」が有名ですが、こちらも是非レパートリーに加えてみませんか?
※スコアは別売となっております⇒ こちら
I.Vivace/II.Larghetto/III.Presto 【中級〜上級者向け】 演奏時間:約17分 (I)

映画音楽の巨匠、ニーノ・ロータの作品をご紹介します。(Fl.Vn.Pf)

イタリアの作曲家ニーノ・ロータは「戦争と平和」「ロミオとジュリエット」「ゴットファーザー」などの映画音楽の作曲家として有名ですが、クラシックの作曲家としても活躍しました。 1958年に作曲された、フルート、ヴァイオリン、ピアノのためのトリオは、3楽章構成の躍動感溢れる作品です。フルートのみならずヴァイオリン、ピアノともに技巧的な曲となっております。特殊奏法は出てきませんが、各楽器が折り重なるように現れ、旋律が入れ替わるので、アンサンブル力が必要でしょう。
T Allegro ma non troppo U Andante sostenuto V Allegro vivace con spirito
【上級者向け】 演奏時間:約12分30秒 (B)

4人でブランデンブルグ協奏曲第5番(Fl.Vn.Vc.Pf)

大小様々な編成で書かれたバッハの名曲、6曲の「ブランデンブルグ協奏曲」の中でも小さな編成の第5番は、チェンバロ、フルート、ヴァイオリンのコンチェルティーノ(独奏楽器)と、ヴァイオリン(1)、ヴィオラ、チェロ、ヴィオローネ(コントラバス)のリピエーノ(総奏)という第2ヴァイオリン無しの7パート(7人)で演奏される協奏曲です。これをさらに小編成にして演奏の機会を増やそうとしたのがこの楽譜で、途中でのカットなどは一切ありません。
バッハの作品の多くは、どのパートもそれなりの重要な意味を持っている場合が多く、この作品もその例外ではありません。この曲の場合、チェンバロのパートは特に難しいので、ほぼ原曲のままです。この楽譜はその代わりに、フルート、ヴァイオリン、チェロの3つの楽器は本来のパート以外に、外した楽器の重要な音をそれぞれ吹いたり弾いたりして穴埋めをする形で編曲がしてあります。原曲をよくご存じの方は吃驚されることも多いかと・・・。特にチェロは大活躍することになりますが、この名曲を少人数で演奏できるのですから頑張りましょう。ただし間違っても、もとの編成で演奏する時にこのパート譜を持って行かないようにして下さい。あちこちから睨まれることになります。
その他、この楽譜では校訂者の解釈でリズム処理などの記譜を変えたりしているところがあるので、原譜に当たっておくのも良いかも知れません。
バッハの名協奏曲をたった4人で演奏できる便利な楽譜です。そのためお値段はちょっと張りますが・・・
  【中・上級者向け】(SR)

忘れられた19世紀フランス・オペラ10 (Fl.Vn.Vc.Pf)

19世紀フランス・オペラのシリーズ最終回は、第1回のマイアーベーアと並ぶグランド・オペラ(グラントぺラ)の作曲家、ジャック・アレヴィで締めくくることにいたします。アレヴィは現在、グノーやビゼーらの師匠ということで名を残していますが、代表作である《ユダヤの女》の他にはほとんど聴く機会がありません。ポップの編曲においてもこのオペラのアリアを中心に取り上げています。
オペラが全盛を誇った19世紀前半のフランスにおいて、もっとも豪華絢爛だったのがグランド・オペラでした。歴史スペクタクルとして、歌手、衣装、舞台装置、管弦楽、全てにおいて大掛かりな出し物で、4ないし5幕からなり、バレエを含み、台本は全て歌われる長時間の上演でした。帝政、復古王政の宮廷文化や、新興ブルジョワジーの台頭による資金面の援助が可能にした芸術ジャンルであり、現代の興行ビジネスとしては、採算を取るのが難しい非常に贅沢なものです。そして録音再生装置の無かった当時、オペラ音楽を手軽に楽しむ方法の一つが室内楽編曲をサロンや家庭の中で演奏することでした。今回取り上げるポップの編曲も「サロン用四重奏曲」のタイトルでシリーズ化されて発売された楽譜の一つです。現在入手可能なものには、シューマン(楽譜 ID:23101)、メンデルスゾーン(楽譜 ID:23104)、ウェーバー(楽譜 ID:23102)、マイアーベーア(楽譜 ID:23100)があります。
《ユダヤの女》のあらすじをごく短くまとめると、ローマ近郊に住むユダヤ人のエレアザールが若かりし頃、ブロニ伯爵から迫害を受け町から追放されます。その後ナポリ人によってローマが襲撃され、火事の中から生き残った女の子をエレアザールが見つけ、養子として引き取りました。実は彼女はブロニの娘でラシェルと名付けられ、サミュエルという若者と恋に落ちます。彼はキリスト教徒の王子で、宗教上許されざる関係であったため、ラシェルは父ともども死刑を宣告されてしまいました。とうとう執行の時刻となり、釜茹での刑の大釜の中で油が煮えたぎっています。ラシェルが大釜に向かう中、ブロニがエレアザールに生き別れの娘の居場所を問い詰めると、彼は大釜を指差して「あそこだよ!」と告げ、自身も後に続き、ブロニが絶望してひざまずく中、幕が下ります。
(2022年12月記)(M.N.)

忘れられた19世紀フランス・オペラ1→楽譜ID:26347(ボルヌ/「アフリカの女」による華麗なファンタジー )
忘れられた19世紀フランス・オペラ2→楽譜ID:30704(ドップラー/オペラ・フェイヴァリッツ 第2巻 )
忘れられた19世紀フランス・オペラ3→楽譜ID:26588(タファネル/「ニヴェルのジャン」によるファンタジー)
忘れられた19世紀フランス・オペラ4→楽譜ID:24355(サン=サーンス/パヴァーヌ&夕べの夢 )
忘れられた19世紀フランス・オペラ5→楽譜ID:25608(タファネル/「フランチェスカ・ダ・リミニ」によるファンタジー(ベルノルド編))
忘れられた19世紀フランス・オペラ6→楽譜ID:24046(マスネ/バレエ組曲「ル・シッドより」)
忘れられた19世紀フランス・オペラ7→楽譜ID:20970(グノー/「ロメオとジュリエット」(グノー)によるファンタジー 第2番)
忘れられた19世紀フランス・オペラ8→楽譜ID:30070(ビゼー/耳に残るは君の歌声(歌劇「真珠採り」より))
忘れられた19世紀フランス・オペラ9→楽譜ID:27579(ボワエルデュー/曲集「バグダットの回教国の王」より )
忘れられた19世紀フランス・オペラ10→楽譜ID:23103(アレヴィ/サロン風四重奏曲 (アレヴィ) )

ヴィオラ・ダ・ガンバかチェロの上手なお友達がいる方へ(Fl.Vn.Vdg.Bc/Fl.Vn.Vc.Bc)

テレマンが自伝の中で「フルートのブラヴェ氏、ヴァイオリンのギニョン氏、ガンバ奏者のフォルクレ氏、チェロのエドワール氏といった人たちによって、描写し得る言葉が見つからないほど素晴らしく演奏された」と書いた四重奏曲が「6つのパリ四重奏曲」です。もともと自らトリオ・ソナタの作曲に自信を持っていたテレマンの、あまたのトリオ・ソナタよりさらに上を行く傑作がこの6曲と言っても過言ではありません。
フルート、ヴァイオリン、ガンバまたはチェロという3つの楽器の絶妙なバランスと、それぞれの楽器の特徴を良く生かしたソロ、そしてそれらを支えながらも雄弁な通奏低音。どの曲ひとつとっても傑作というしかありません。
普通であれば、演奏頻度などからしてイ短調の第2番、あるいはニ長調の第1番をご紹介するところですが、今回はあえて第6番のホ短調(楽譜の表記は訳あって12番となっています)。6つの楽章でできていますが、全6曲の中でも特に深みがある曲で、リズム(特に5楽章のシンコペーションは印象的)の面白さや、緊張感と迫力に事欠かない名曲です。
(SR)

モイーズが愛したテレマン(Fl.Vn.Bc)

大バッハと同じ時代にドイツ最高の作曲家と言われていたテレマンは、あらゆるジャンルの音楽を作りました。彼はその中でも特にトリオ・ソナタには自信があったらしく、自伝の中で『私はとくにトリオ・ソナタの作曲に精魂を傾けた。つまり二つの上声部は、第二のパートがあたかも第一のパートを思わせるように作り、またバスは自然なメロディで上声部と親密な調和を保ち、しかも一音一音が、まさにそれ以外ではあり得ないといった動きをするように作曲した。そして皆も、私がトリオ・ソナタの作品で最高の力量を見せているといってほめてくれた。』(「テレマン 作品と生涯」音楽之友社より)と記しています。
彼が出版した「音楽の練習帳」は、6つの独奏楽器のために2曲ずつ書かれた12のソロ・ソナタ(組曲)と、それらの楽器にチェンバロを加えた7つの独奏楽器の様々な組み合わせによる12のトリオ・ソナタからなっています。そしてその9番目のトリオ・ソナタがこの曲で、フルートとヴァイオリンのために作曲されています。
この曲はマルセル・モイーズが愛奏し、レコード(CD:「巨匠マルセル・モイーズ大全集」)にも残したため日本でも知られるようになりましたが、もちろんバルトルド・クイケンをはじめとする多くのピリオド楽器の演奏家達にも取り上げられています。
ベーレンライター社から出版されていた楽譜が長年絶版になっていたため手に入らず、多くのお問合せを頂いていておりましたが、近年アマデウス社から出版されまた入手できるようになりました。皆様のレパートリーに是非加えていただきたい名曲です。
(SR)