―――普段から取り入れているトレーニングはありますか?

「呼吸法、体力づくり、指の練習、リズム練習、頭の体操」
基礎練習は楽器の上達に欠かせませんね。この記事をご覧の皆さんも様々な基礎練習を日常的に取り組まれていることと思います。しかし練習に費やせる時間というのはそれぞれ違いますから、その人に合わせた練習内容やメニューを構成していく必要があります。私自身も学生時代は、基本的に毎日1時間は基礎練習に充てていましたが、今の仕事状況を考えるとこれ程の時間を捻出することが難しいです。なので、代表的な練習の中から時短で取り組めるものをいくつかピックアップし、それらを普段の演奏現場などで限られた時間のなかで行うようにしています。以下にご紹介するトレーニング法というのは、あくまでも“現在の私に合わせた内容”というものですから、一つの例として参考にしていただければと思います。

身体をしっかりと使った呼吸と音作りを意識したロングトーンの練習
「タファネル&ゴーベール/17のメカニズム日課大練習」の4番と「ライヒェルト/7つの日課練習曲」
バランスポールに乗りながら基礎練習!?
自宅で自由に音が出せない時は・・・

トレーニングの方法というのは「これが絶対正解」というものがありません。ですから自分の練習環境やテクニックの得手不得手、また時間の使い方などを考慮して、“そのときの自分に合ったトレーニング”というのを常に模索していく必要があると思います。私の意見はケーススタディの一つとして捉えて、是非皆さんそれぞれに考えてみてください。

―――電車などの移動時間に出来ること、していることはありますか?

電車や飛行機での移動時間には先の仕事の譜面を読んだり、初めて取り組むような曲の場合は音源を聴いて勉強の時間に充てています。最近は紙の楽譜をPDFデータ化してスマートフォンやパソコンで見たりできるので、大事な本番譜や楽団の所有楽譜を持ち歩かなくても済むようになり助かっています。原稿の仕事(ちょうどこの部分も山形新幹線つばさ149号の車内で書いています・笑)も移動時間にできるので、ノートパソコンは常に必需品ですね。仕事や勉強にも行き詰まってきたら、気分転換にただ車窓からの風景をぼーっと眺めるだけ……でなく、動体視力の訓練にもなるのでなるべく近い距離の物を追いかけるように見て眼筋を鍛えるようにしています。動体視力が優れている人は右脳が鍛えられていると言われているので、感覚的なことを生業にしている我々“音楽家”という職種には結構重要なのかもしれませんね。

―――コロナウイルスによる自粛期間になって新しく始めたことはありますか?

自粛期間になって新しく始めたことに、「多重録音」と「YouTubeチャンネルの開設」があります。

多重録音
YouTubeチャンネルの開設

若い世代の皆さんならきっと私以上にこういった類のことは抵抗なく始められると思いますし、これからの時代を生きる音楽家のセルフ・プロデュース・スキルのためにも是非、学生さんたちには率先してこういった新しい取り組みにチャレンジしてほしいと思います。

―――アンサンブルや合奏などのために練習していることは何ですか?

アンサンブルや合奏のための練習ということですが、基本的にはその曲の譜面を練習する以外に私自身はやっていません。つまり“アンサンブル力を養うための練習”といったことは特別何か普段から行ってはいないということです。当然ながらアンサンブル力というのは相手がいてこそ鍛えられるものであり、一人で練習していてもこの部分に関してはあまり関係ありません。

とは言うものの・・・
譜読みの時の注意点

―――音大生のために修得しておくと良いエチュードをご紹介ください。

楽器の練習というのは、基本的に「基礎練習・エチュード・演奏曲」の3本柱で構成されます。どれかが欠けてもいけませんし、バランスよく取り組んでいくのが大切ですね。特にエチュードは基礎的なテクニックと音楽的な表現力を同時に引き出し、更に読譜力も求められるという実に様々な要素が必要とされるもので、楽器の上達には欠かせません。フルートには本当に素晴らしいエチュードが沢山ありますよね。これは先人の偉大な教育者たちに心から敬意を払うと共に、他の楽器に自慢したくなることです。受験生や音大生にとってエチュードはとても大切なものですが、作品が多すぎるが故に何を取り組んだら良いのか分からない、という方もおられるでしょう。そこで、音大生が修得しておくと良いエチュードをいくつかご紹介しようと思います。もちろん、師事されている先生の方針に従ってエチュードを選ばれるのが最良ですので、ここに挙がっているものは一つの例としてお考えください。

・E.ケーラー / 35の練習曲 OP.33 より 第1巻、第2巻
・J.アンデルセン / 24の練習曲 OP.15、24の練習曲 OP.21、24の練習曲 OP.33、18の練習曲 OP.41
・Th.ベーム / 24の奇想練習曲 OP.26
・A.B.フェルステナウ / 24の練習曲 OP.125(音の花束)
・J.ドンジョン&F.ドンジョン / 8つの独奏会用練習曲
・S.カーク=エラート / 30の奇想練習曲 OP.107
・N.パガニーニ / 24の奇想曲 OP.1
・A.ピアソラ / タンゴ・エチュード

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―――実技試験の選曲にあたって、ポイントは?

音楽大学ではそれぞれ前期・後期ごとに実技試験がありますよね。選曲には学生の皆さんかなり悩まれると思います。大抵の場合、この実技試験の結果でオーケストラの授業のメンバー選抜をされることが多いでしょうから、先の半年〜1年間を左右する大変重要な部分になってきますね。

実技試験の選曲のポイント
師事している先生とよく相談をすること

学生にとって試験曲は間違いなく“思い出の曲”です。私も学生時代に吹いた試験曲は今でもよく覚えていますし、コンサートで再演する度にその頃の記憶が甦ります。“じっくり時間をかけて一つの作品と向き合う”という経験は、学生時代にしかできません。その時の今の自分を一番表現できる曲に巡り合えると良いですね。皆さんが試験で素晴らしい演奏ができることを応援しています。

―――最近気になったフルートの曲を教えてください。

コロナ禍で自粛期間だった際に、何もやることがなくなりかなり時間が出来たので楽譜棚の整理をしました。その時に“以前買ったものの一度も演奏していない楽譜”が何冊も出てきて、今は時間があるときにそれらの曲をちょっとずつ譜読みしています。ただ、肝心のお披露目する本番が決まっていないので、一体いつになったら日の目を見られるのか分かりませんが……(笑)。その中から私が今特に興味を持っている曲をご紹介します。

G.ショッカー / コンチェルト・イタリアーノ
E.シュルホフ / フルートとピアノのためのソナタ
M.マウアー / ピッコロとピアノのためのソナタ

―――ホームページをご覧になっている皆さんへメッセージをお願いします。

コロナ禍で自粛期間だった際に、何もやることがなくなりかなり時間が出来たので楽譜棚の整理をしました。その時に“以前買ったものの一度も演奏していない楽譜”が何冊も出てきて、今は時間があるときにそれらの曲をちょっとずつ譜読みしています。ただ、肝心のお披露目する本番が決まっていないので、一体いつになったら日の目を見られるのか分かりませんが……(笑)。その中から私が今特に興味を持っている曲をご紹介します。

コロナ禍となって、これまであったものや考え方が一気に崩れ去り、世の中のあらゆるものが一旦ゼロになりました。音楽という文化も同様に、世界中で一度止まりかけました。しかし、芸術の灯は決して消えることはありませんでした。それは人々の心にやはり“音楽の力”が必要であり、人類が音楽を求めたからです。

“フルート”というものが、その人にとってどのような存在なのかはそれぞれに違いますが、フルートを通して様々な人と繋がり、会話をし、自分を高めていけるものであることは、共通している事柄ではないでしょうか。私自身これからもムラマツフルートを通じて様々な方々と繋がり、音楽を届けていけたら良いなと思います。