解説
J.S.バッハの 「2本のフルートと通奏低音のためのトリオ・ソナタ ト長調 BWV 1039」 は、その流麗な旋律の綾 (対位法の緻密さ) と曲想の優雅さで愛好家達に大変親しまれています。実は、この曲は 「ヴィオラ・ダ・ガンバとオブリガート・チェンバロのためのソナタ第1番 ト長調 BWV 1027」 とほぼ同じ曲です。バッハがケーテンの宮廷に務めていた時 [1717-23] に、その宮廷楽団にはガンバの名手Ch.F.アーベル (1682-1761) が在籍し、またケーテン公レオポルトもガンバを嗜んだことから、彼はこのBWV 1027を含む3曲の 「ガンバ・ソナタ」 (ニ長調 BWV 1028・ト短調 BWV 1029) を1720年頃に作曲したと一般的に言われています。当時は、既に作曲してある曲を別の楽器編成に書き改めるといったことは、一般的な習慣とされていました。このReinhardt版の楽譜は、上の例に倣って、残りの2曲の 「ガンバ・ソナタ」 を 「2本のフルートと通奏低音のためのソナタ」 に書き改めたものです。『ソナタ ニ長調 BWV 1028』 は緩・急・緩・急の4楽章構成で、典型的な教会ソナタ (Sonata da chiesa) の様式で書かれています。第1楽章 (Andante) 3/4、楽章全体が二部に別れ、主題旋律が交互に模倣されます。第2楽章 (Allegro) 2/4、二部形式、大変にリズミカルで楽しく温和な舞曲です。第3楽章 (Andante) ロ短調 12/8、美しいシチリアーナ風のリズムにのって、威厳あるバッハのカンタービレが繰り広げられます。第4楽章 (Allegro) 6/8、軽快な舞曲風モティーフが、協奏曲様式 (リトルネロ風) にのって展開されます。『ソナタ ト短調 BWV 1029』 は急・緩・急の3楽章構成で、協奏曲様式を採用しており、このスタイルは彼がライプツィヒ時代に作曲した 「オルガン・ソナタ」 にも見られます。第1楽章 (Vivace) 4/4、力強い主題が反復を繰り返しながら 「ブランデンブルク協奏曲 第3番」 の1楽章冒頭の様に堂々と “動機” を牽引して発展させます。第2楽章 (Adagio) 変ロ長調 3/2、優雅な二部形式の緩徐楽章。第3楽章 (Allegro) 6/8、冒頭の快活な主題と、中間のカンタービレ旋律の対比が美しく印象的な楽章で、大きく3つの部分から構成されています。(解説/佐野悦郎)ニュース
関連サイト
注文ボタンのない商品につきましては、右上の「お問い合わせ」よりお願いします。