❸逆腹式呼吸*

気功で取り上げている呼吸法です。今ひとつ“息の支え”がピンと来ない方には特に有効なのではと思っています。声優を養成する学校でも取り入れられているそうで、『ひと息で長く話せ、喉を痛めない』そうです。今のところ、フルートを吹く時の息使いにかなり近いのではと思っています。

・良い姿勢(チェストアップが理想)で安定して立ちます。

・胸へ、胸郭全体を拡げるように、鼻から息を吸います。(お腹はへこむ)

・丹田*にエネルギーを注ぎためるイメージで、口から細く長く吐きます。(お腹は元に戻る)


*脚注「逆腹式呼吸」
この“逆腹式呼吸”を理解していただけたら、“チェストアップ”もより自然に納得していただけるかと思っています。再び少々長くなりますが、先に従来の胸式呼吸、腹式呼吸について振り返ってみることにします。
管楽器の奏法に悪いとされるいわゆる胸式呼吸は、2足歩行の人間ならではのものです。立ち上がったことで肺が上に乗っかって負担が大きい横隔膜に代わって、肩を上下させて空気を出し入れする方法です。筋力を最小限に素早く酸素と二酸化炭素を交代させるので、病気や走った直後など、無意識に誰でもやっている大変有益な呼吸なのですが、息を長く保つのには適さないのですね。
そしてそれに対して、本来の横隔膜を動かす“腹式呼吸”が推奨されてきたわけですが、その事自体は全く問題はありません。ただ、“肩を上げてはいけない"ことが強調され過ぎて、肩を固定してお腹だけを張り出すような、やはり肺が十分に生かされない不自然な形になってしまっているケースが多く見受けられます。
“逆腹式呼吸”は“逆”の字がついていますが、腹式呼吸の反対という意味ではありません。
前述のチェストアップの状態で胸郭全体に息を吸うと腹部は相対的にへこんだ状態になるので、この名がついたのだと思います。
また普段の生活で背骨がS字になっているのは、むしろ背骨に負担をかけない自然に身についた良い形と言えるのですが、楽器を吹く際には、そのままだと横隔膜が下がりにくく喉が開きにくいので、骨盤の角度など工夫して背中を伸ばしてお腹がへこませられるよう、色々研究してみて下さい。仰向けに横たわってヒザを曲げてみると、つかみやすいと思います。そのための柔軟性に“ゆる体操”は有効です。

*脚注「丹田」
丹田=おへその3~5cm下の体の中心。“気”が集まるとされる。