ムラマツ・フルート・レッスンセンター講師による
~おもひでの名曲~
Memories Of YouVol.11 濱田 千枝 先生
G.P.テレマン
ソナタ へ短調TWV41:f1 「忠実な音楽の師」より
《FMとf-moll》番組と番組の合間に、どこの放送局からON AIRしているのかを聴取者に知らせる為の数秒間の音楽を「ジングル」と呼ぶことは、だいぶ大人になってから知りました。
私の「おもひでの名曲」との出逢いは「ジングル」でした。ある時期、地元FM局のジングルがテレマンのソナタf-mollの2楽章冒頭だったのです。
数秒間、すぐにフェードアウトした刹那「エフエム愛知です」とアナウンスが重なり、流れ去っていきました。
曲が頭の中で延々とループし始めました。「誰のなんて曲???」現在のように検索して即、答えに辿り着けない時代…思いは募りました。程なくして、私の体験を知る由もない当時の恩師、村田四郎先生から試験曲としてこの曲に取り組むように言われたときの驚きと喜びは忘れられません。頭の中で、3拍子でループしていた曲は、楽譜には4拍子で書かれてあり、その作曲技法を「ポリリズム」と呼ぶこと、1楽章の始めにある「Triste」(悲しげに)の書かれてある箇所にはAllegroやModeratoなどメトロノームの盤面にある速度表記しか見たことのなかった私が、それらがれっきとしたヨーロッパの言語でその曲のキャラクターを表していると知ったこと…。未熟だったなあと思い返されます。テレマンが雑誌や漫画のように隔週で発刊し、当時は教会や宮廷のものであった音楽を一般家庭でも楽しめるようにと広めた楽譜集「忠実な音楽の師」の中に、この曲が収められていたことを後に知った時も更なる感動を覚えました。
音大を卒業して随分と月日が経ち、初めてのリサイタルを企画、大学時代からの恩師、髙木直喜先生のもとへ相談に伺った際、叱咤激励と共に選んでくださったのも偶然、この曲でした。
「数秒間の数小節」として出逢って以来、思いがけない再会を繰り返す度に前のインパクトを上回る新しい一面を見せてくれるこの曲は、これからも私の「おもひで」を塗り替え続けてくれるに違いありません。
HAMADA CHIE
濱田 千枝 先生 /名古屋教室 水、土曜日クラス
濱田 千枝 先生 /名古屋教室 水、土曜日クラス
菊里高校音楽科、名古屋芸術大学音楽学部卒業。髙木直喜、永長次郎、村田四郎の各氏に師事。
クラシックをベースにしながら既成概念にとらわれない世界観が高く評価され、フリーのフルーティストとして様々なジャンルに携わる一方で自ら企画、プロデュースも行う。
名古屋笛の会特別演奏会にてドビュッシーのシリンクスを初演と同じ語り付きで上演。依田フラメンコスタジオ公演「アルテ」「カルメン」「海女」、ブラジル音楽においては「コンジュント・ホーダ・ヂ・ショーロ 」ツアーに参加。
濱田千枝フルートリサイタル 「coda ~終わりの始まり~」、「coda2~生きぬくための息ぬき~」、Sam’s project ドキュメンタリー映像作品「築地神社」BGM、朗読と映像によるコーラルコラボLIVE「光と影 記憶の断片(かけら)」、やまのて音楽祭2020×千種文化小劇場特別公演「音 鳴らしく」、やまのて音楽祭2022「語りでつむぐカルメン」他、多数の公演に出演。
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