解説
ルーセルは同時代のドビュッシーやラヴェルに比べると、一般に馴染みの薄い作曲家ですが、この「笛吹き達」は、独特のリリシズムを感じさせる大人の音楽だと思います。若い頃は海軍士官を務めたルーセルは、健康上の理由で軍職を去り、25歳になってから、ダンディのもとで作曲を学びました。対位法、管弦楽法などの理論にすぐれ、厳格な書式を身に付けた彼は、何度か作風の変化をとげて50歳になってから真の個性を発揮するようになりました。「笛吹き達」 は円熟期の55歳の時に書かれ、小組曲ながら凝った構成を持っています。つまり、4曲の題名には、神話や文学作品から笛にゆかりのある名が取られ、それぞれの曲が、当時の名フルーティストに捧げられるという仕掛けを持っているのです。「パン」ギリシャ神話で有名な牧神パンを題材にしたこの曲は、モイーズに捧げられており、不思議な雰囲気をたたえています。「ティティール」ウェルギリウスの田園詩にでてくる羊飼いティテュルスに寄せて書かれたこの曲はブランカールに捧げられ、活発に動き回る軽やかな曲です。「クリシュナ」横笛の発見者としても伝えられているインド神話のクリシュナに寄せて書かれたこの曲は、フリューリーに捧げられています。インド旋法に関心の深かったルーセルならではの7拍子の神秘的な曲です。「ドウ・ラ・ペジョディ氏」アンリ・ド・レニエの “La Pecheresse" の作中人物であり、「情熱的なフルート愛好家で、洗練を極め、しかし古風な礼儀作法を好む」 人物に描かれています。ゴーベールに捧げられ、一風変わった表情を持った曲です。(解説/三上明子)ニュース
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