スタッフのおすすめ

30000点以上もある中から、ムラマツのスタッフが「これは!」と思う楽譜をご紹介します。

歌心溢れるヴィオラの名曲(Fl.Pf)

マックス・ブルッフ(1838-1920)はロマン派の作曲家、指揮者で、ブラームスやリストなどと同時代にドイツとイギリスで活躍しました。1860年代からヨーロッパ各地でオーケストラや合唱の指揮をし、1890年から1910年に引退するまでベルリン芸術アカデミーで作曲を教えました。管弦楽曲や歌曲、合唱曲などを残しましたが、中でも「ヴァイオリン協奏曲 第1番 ト短調」が特に有名です。 「ロマンス」は元々ヴィオラとオーケストラのために作曲され、作曲者自身によってヴァイオリン用にも編曲されました。この楽譜は、原調(ヘ長調)で、音域の関係で多少の音の異同はあるものの基本的に原曲に忠実にフルート用にアレンジされています。歌心に溢れ、ホロリとする映画のワンシーンで流れる音楽のような、大変美しいメロディーが印象的です。 編曲者のマーク・スパークスはアメリカのフルート奏者、作曲家で、セントルイス交響楽団の元首席フルート奏者です。 ヴィオラの名曲は数あれど、なかなかフルート用にアレンジされていないので、貴重な作品の一つとして、ぜひ多くの方に演奏していただきたいと思います。

【中級者向け】演奏時間:約9分(B)

ロッシーニの「セミラーミデ」によるグランド・ファンタジー(Fl.Pf/Pic.Pf)

今回ご紹介するのは、ロバート・ストールマン作曲、「ロッシーニの『セミラーミデ』によるグランド・ファンタジー」です。ロッシーニの「セミラーミデ」は、ご存知の方も多いのではないでしょうか。 ヴォルテールの悲劇「セミラミス」をもとに1823年に作曲したオペラ・セリアで、数あるオペラ・セリアの中でも最高傑作と言われており、他の作品の上演が途絶え忘れられていた長い年月の間も、演奏され続けてきました。 ロバート・ストールマン(1946-2019)は、アメリカを拠点として世界中で活躍していたフルート奏者です。「鋭い芸術性で人々を魅了する人」として、ソロ奏者だけでなく、室内楽奏者、レコーディングアーティストとして国際的に高い評価を受けています。その他にも、楽譜の校訂や作曲を多く行い、フルートのレパートリーを広げることに尽力しました。 そして彼は生涯にわたるオペラへの愛から、「セミラーミデ」を題材とした『グランド・ファンタジー』を作曲します。2018年10月7日に本人によって初演されましたが、惜しくも翌年亡くなられました。 彼の遺作ともいうべきこの作品は、壮大なオーケストラ伴奏が聞こえてくるかのような、全体的に華やかなファンタジーとなっています。主に有名な序曲やアリアが編曲されており、細かいパッセージが多い勢いのある部分、とても優雅でメロディックな部分の対比が特徴的です。 演奏時間は10分程ですので、演奏会のプログラムの1曲にいかがでしょうか。 (この曲はピッコロでも演奏が可能です。)

【上級者向け】演奏時間:約10分(H.A.)

スペインの民俗舞踊を二重奏で(2Fl.Pf)

サラサーテ作曲、2本のフルートとピアノのための「ナバーラ Op.33」をご紹介します。サラサーテは、幼いころ父親からヴァイオリンの手ほどきを受け、8歳で初の演奏会を開きます。才能に溢れた彼は、スペイン女王イザベラ2世に認められ、女王の支援を受けてパリ音楽院に留学します。残された作品はヴァイオリンのための曲が多く、スペインの民俗的な旋律や舞曲を取り入れた作品集をはじめ、技巧的で華やかな作品が多数あります。このナバーラも2本のヴァイオリンと管弦楽(ピアノ)のための作品です。ナバーラとは、彼の生まれ故郷、ナバラ州に敬意をもって名付けられたようです。スペインの民俗舞踊で複雑なステップを踏む素早いダンスで奏でられる「ホタ」の要素が取り入れられた、3/8拍子のリズミカルな作品です。大部分は3度のユニゾンで美しく演奏され、終結部に向かって加速する様子は、激しく踊るダンサーのようです。 コンサートピースにもおすすめです。ヴァイオリンのピチカートやトレモロを軽やかに華やかにフルートで演奏してみてください。

【上級者向け】演奏時間:約7分(TO)

タイユフェール、ご存じですか?(Fl.Pf)

ジェルメーヌ・タイユフェール(1892-1983)はミヨー、オネゲル、プーランク、デュレ、オーリックらとともに「フランス6人組」として活躍した女流作曲家です。 パリ音楽院に12歳という若さで入学後、個人的にケックランとラヴェルに師事しました。 また、サティに認められ、ピカソやジャン・コクトーら同世代の芸術家たちとの交流も持ち、一度目の結婚でアメリカに渡った際にはチャップリンとの親交も結びました。 そんな彼女は91歳で亡くなるまで主にピアノや室内楽、管弦楽を中心に精力的に作曲活動を行いました。
第1楽章 Allegro ma non troppo キャッチーで尚且つ可愛いらしい旋律は耳に残り、思わず口ずさんでしまいたくなります。
第2楽章 Adagietto フランスものらしい優美な響きの緩徐楽章。ピアノ伴奏も美しくラヴェルらの影響を伺うことができます。
第3楽章 Final-Allegro リズミカルで軽快なヴァイオリンらしい楽章。これに限ったことではないですが、ヴァイオリンの作品をフルートで表現するのは苦労しそうです。ですがその苦労を負ってもなおこの作品を演奏したいという魅力があります。
以前はヴァイオリン版しかありませんでしたが、近年ALRY社からフルート編曲版が出版されました。まずはヴァイオリン原曲の音源を聴いてみてください!

【上級者向け】演奏時間:約14分 (MR)