スタッフのおすすめ「フルートと他の楽器」

このコーナーでは、ムラマツのスタッフが、長年の経験から「これは!」と思う楽譜を、その目的や内容の解説付きでご紹介します。
定期的にご紹介する楽譜を更新して行きますので、皆様の目的に応じた「使える」楽譜が見つかることと思います。

フルートとヴィオラのデュオ(Fl.Va)

ドヴィエンヌはフルート、ファゴット奏者であり、パリ音楽院の初代フルート科教授も務めました。 作曲家としても多才で、室内楽曲、フルート協奏曲、交響曲からオペラなど多くの作品を残しています。 1759年〜1803年、わずか44歳の若さでこの世を去っています。 革命期のフランス、パリで活躍し、最期は精神を病んで亡くなったそうです・・・。
今回ご紹介するのはフルートとヴィオラのデュオという珍しい編成の曲です。 6曲からなる二重奏曲集のうちの一つ、作品5の3です。 2楽章からできており、派手さはありませんが、ヴィオラのしっとりと落ち着いた雰囲気と 洗練された美しさが漂う印象的な曲です。 『フランスのモーツァルト』と呼ばれたというのもうなずけます。 ヴィオラの方と演奏する機会がある時に、是非、選んで頂きたい一曲です!
T Allegro molt con espressione U Rondo
【中級者向け】 (U)

軽快で楽しいフルートとファゴットのデュエットの曲はいかがですか?(Fl.Fg)

フランスの作曲家ピエール・ガベーユ(1930-2000)はあまり知られていないかもしれませんが、クラシックやジャズの世界でピアニスト、作曲家として活躍した人です。パリ国立高等音楽院にてピアノ、作曲を学び、のちの1956年にローマ賞を受賞。その後、フランス国営放送の音楽部門も担当しました。
彼の作風はP.デュカスやT.オーバンの流れをくむ新古典主義的なスタイルで、この曲も調性音楽でありながら、現代風の色彩豊かなユーモラスに溢れる曲となっています。
快活に始まる1楽章、もの悲しげな2楽章、明るくリズミカルな3楽章・・・の3楽章編成なのですが、実はこの3つの楽章、調性は違いますが、始まりの4小節に同じモチーフを用いています。アレンジが違うだけなのです。これは腕の見せどころ!!まるでフルートとファゴットが会話をしているような明るくコミカルなガベーユのソナチネ!!1楽章だけでもやってみて下さい!きっと素敵なデュエットの時間をお楽しみいただける事でしょう。
【上級者向け】 演奏時間:約10分(NS)

ブラジル風?バッハ風??(Fl.Fg)

エイトル・ヴィラ=ロボスはほとんど独学で作曲を学んだ作曲家です。交響曲、室内楽曲、協奏曲などを含め1000曲ほどの作品を書き残した多作家でもありました。
「ブラジル風バッハ」は全部で9曲からなる大作で、編成は管弦楽、声楽、室内楽とさまざまです。今回ご紹介する第6番は、フルートとファゴットのための作品。2楽章構成で、フルートとファゴットが対をなして旋律を聴かせる「アリア」と、音の連鎖と自由な旋律との対比が面白い「ファンタジア」からなります。一見変わった組み合わせですが、室内楽の演奏会や試験などで試してみてはいかがでしょうか。
I.Aria: Choro(アリア:ショーロ) II.Fantasia(ファンタジア)
【上級者向け】 演奏時間:約10分 (B)

フルートで演じてみませんか?(Fl.Mar)

ダマーズは1928年、ボルドーの音楽一家に生まれました。 作曲家、ピアニストとして現在も活躍中です。作品にはカンタータ、映画音楽、管弦楽曲、協奏曲、器楽曲、室内楽曲、ピアノ曲、声楽曲と様々なジャンルの曲があり、ハーピストの母の影響かハープを含む作品が多いです。そしてフルートを含む作品も多いため、フルーティストには馴染み深い作曲家なのではないでしょうか。
今回ご紹介するのはフルートとマリンバのデュオの作品です。 この“パントマイム”はアメリカのフルーティストであり指揮者でもある、ダマーズと親交の深いランサム・ウィルソンのために作曲されました。 それぞれが約1分〜1分半という短い5つの曲で構成され“パントマイム”という題名どおり、思わず身振り手振りのパフォーマンスを想像してしまうような楽しい曲です。ハーモニーや音づかい、リズムなどダマーズらしさが散りばめられた洒落た作風となっています。特に5つ目Prestoのマリンバとのかけあいはスリル満点です!!
【上級者向け】 演奏時間:約7分 (OU)

新刊案内(Pic.Mar)

ソレンティーノの作品は、以前にもフルートアンサンブル「UNDAE (楽譜ID:31987)」をご紹介しましたが、こちらはマリンバとの二重奏です。早世したソレンティーノが亡くなった年に作曲されています。
マリンバとピッコロという珍しい組み合わせで、ここでご紹介してもどれほどの人が関心をお持ちになるのかわかりませんが、探している方もいらっしゃると思い、取り上げました。
マリンバの涼やかな音色に乗ってピッコロが小鳥のさえずりのように軽やかに歌い、中間部は少し寂しげなメロディが美しく、終わりではまた冒頭のメロディに戻ります。途切れずに演奏される単楽章の曲で、技術的な難易度はそれほど高くありません。打楽器とのアンサンブルの現代曲にありがちな難解さもないので、ちょっとした演奏会にも使えると思います。いつものピアノとは違う相手と演奏するのも楽しいのではないでしょうか。
なおタイトルの「just a week!」とは、初演者のマッツァンティがとあるフェスティバルでマリンバと共演することになったが良い曲がなく、ソレンティーノに作曲を依頼。ソレンティーノが「(作曲する)時間はどれくらいあるの?」と聞くとマッツァンティが「1週間しかないよ!」と答えたのがそのまま題名になったそうです。1週間で作曲されたとは驚きですね。
【中級者向け】演奏時間:約5分30秒 (T)

歌とフルートのデュオ(Fl.Vo)

ルーセルは、1869年にフランス北部のトゥールコワンで生まれ、1937年にフランス西部のルーアンで亡くなった、近代フランスを代表する作曲家です。フルート作品としては、1924年にフルートとピアノのために作曲された「笛吹き達 op.27」が有名ですが、今回ご紹介するのは同年に歌とフルートのために作曲された「ロンサールの2つの詩 op.26」です。
この曲は、「Rossignol, mon mignon…(わが愛しのナイチンゲール)」と「Ciel, aer et vens…(空、空気と風)」の2曲からなっており、2曲ともフルート独奏で始まります。技術的に難しいところはあまりなく、特殊奏法もありません。楽譜にはpour chant & fluteと書かれていますが、ソプラノとフルートで演奏されることが多いようです。歌ってくれる人が身近にいないから・・・と思われる方は、フルート二重奏やフルートとオーボエの二重奏などで演奏しても楽しめるのではないでしょうか。
【中級者向け】 演奏時間:約9分 (I)

一粒で二度おいしいC.P.E.バッハ その2 (Fl.Vn.Bc/Fl.Pf)

以前、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハの同様の形のソナタをご紹介しました。 そのときは、2本のフルートと通奏低音でしたが、今回はフルートとヴァイオリンのトリオ・ソナタです。エマヌエル・バッハの独奏楽器とオブリガート・チェンバロのためのソナタの多くは、チェンバロの右手(オブリガート)を別の旋律楽器に割り当てたトリオ・ソナタの編成にもなっています。これらはどちらの編成ともエマヌエル自身の手になるものとされていますので、集まった楽器によってどちらでも演奏することが出来る作品です。

■トリオ・ソナタ ニ長調 Wq.151はチェンバロの右手をヴァイオリンに置き換えたもので、1747年にエマヌエル自身によって編曲されています。1747年というのはちょうどポツダムでサン・スーシ宮殿が完成した年で、エマヌエルの父ヨハン・ゼバスティアンがポツダムを訪れて、大王に「音楽の捧げ物」を献呈した年でもあります。当時のフリードリヒ大王の宮廷にはフルートはクヴァンツ、フリードリヒ大王ら、またベンダやグラウンなどのヴァイオリンの名手、そしてチェンバロにはエマヌエル・バッハらがいたのですから、素晴らしい演奏が繰り広げられていたことでしょう。

■フルートとオブリガート・チェンバロのソナタ ニ長調 Wq.83はポツダムで1745年に作曲されたと考えられており、これはエマヌエルが仕えるフリードリヒ大王の即位から4年後であり、まだ有名なサン・スーシ宮殿は無かったのでポツダムの市中宮殿で演奏されたことが考えられます。フルートはフリードリヒ大王、チェンバロはエマヌエル自身だったかも知れません。この曲は前にご紹介したエマヌエル・バッハの「4つのフルート・ソナタ Wq.83-86 第1巻」に入っている曲ですので、すでにお持ちの方はその楽譜の1曲目に当たります。
(SR)

バッハの捧げ物(Fl.Vn.Pf/Fl.Cemb)

「フーガの技法」とならんでJ.S.バッハ晩年の大作「音楽の捧げ物」の中のトリオ・ソナタです。「音楽の捧げ物」は、次男カール・フィリップ・エマヌエルがチェンバロ奏者として奉職しているフリードリヒ大王の宮廷を訪ねたおり、大王から提示されたテーマをもとに作曲し、献呈した作品集です。鍵盤楽器のためのリチェルカーレが2曲、楽器指定の無いカノン9曲とフルート、ヴァイオリンと通奏低音の指定があるトリオ・ソナタと無限カノンからなる特殊な曲集です。この楽譜はその中から楽器指定のある2曲を集めたものでバッハの代表的なトリオ・ソナタというだけでなく、この時代のトリオ・ソナタの最高峰ともいうべき作品です。原典版で定評のあるヘンレ社の出版で、トリオ・ソナタのほかに無限カノンが付いていることがこの楽譜の特長です。
(SR)
J.S.バッハの傑作、「音楽の捧げ物」のトリオ・ソナタはやってみたいけれど、ヴァイオリンが居ないという方、こんな楽譜はいかがでしょう。これはこのトリオ・ソナタを、ヴァイオリンのパートをチェンバロの右手に置き換えて、フルート1本とチェンバロの右手が上声部を、そしてチェンバロの左手が通奏低音を受け持つという形に編曲したもので、基本的には原曲と全く変わりません。このような形の曲は当時のテレマンやC.P.E.バッハの作品などに多く見られるもので、特殊な編曲というわけではありませんが、この曲に関しては現代の編曲です。
(SR)

数少ないJ.S.バッハのトリオソナタから(Fl.Vn.Bc)

バッハのフルート作品は他のジャンルの曲に比べてかなり少ないという印象があります。しかもその中の一部は偽作といわれているので、フルートに関する室内楽はわずか7曲ほどが真作と考えられています。バッハが今回ご紹介するようなトリオソナタをあまり作曲しなかったかというと、どうもそうではないらしく、ケーテンの宮廷楽長を務めていた時代にはかなり作っていたと考えられます。しかし、そのほとんどがケーテン宮廷付属図書館の火災や、楽譜を相続した息子の管理の悪さから失われてしまったと思われるのは残念なことです。
わずかに残ったトリオソナタのうちフルート、ヴァイオリンと通奏低音で演奏されるこの曲は偽作説や、BWV 1021のヴァイオリン・ソナタと同一の通奏低音であることから息子の作曲の課題として共同で作曲したという説もあります。とはいえ、明るく美しい楽想を持った1楽章、軽快な2楽章、ホ短調の悲しげでゆったりとした3楽章、通奏低音も含め、3声のフーガで書かれた4楽章の4つの楽章で構成されたバッハにしてはコンパクトですが、よくまとまった名曲です。ご紹介するベーレンライター版は、ヴァイオリン・パートを第2フルートでも演奏できるように編集された便利な楽譜です。
(SR)

気軽に始められる素敵な作品です♪(Fl.Vn.Pf)

セザール・キュイ(1835-1918)はロシアの「五人組」(1870年代に解体)のメンバーとして知られる、作曲家、批評家で、陸軍大将も務めました。この「5つの小品」はフルート、ヴァイオリン、ピアノのために書かれた作品。この編成のオリジナル作品は比較的珍しく、録音もそれほど多くはありません。ですが、一緒に演奏する仲間を見つけやすい編成かと思います。小品のそれぞれがロマンティックで美しく、抜粋してアンコールなどにも使えそうです。
T. BADINAGE(バディナージュ)
スタッカートや弱拍のテヌート、アクセントなどが登場し、タイトル通り、陽気におどけてみせるような雰囲気。可愛らしい楽章です。[Allegretto、4/2、イ長調、約1分]
U.BERCEUSE(ベルスーズ)
ピアノが持続する四分音符にのせて、ヴァイオリンとフルートがゆったりと奏でます。赤ちゃんが気持ち良く眠れるような、優しい子守歌です。[Andantino、4/4、ニ長調、約2分]
V.SCHERZINO(スケルツィーノ)
流れるようなテーマから始まり、中間部では転調して、最後はフルートとヴァイオリンの掛け合いから華やかなエンディングを迎えます。[Allegro non troppo、4/3、ト長調、約2分]
W.NOCTURNE(ノクチュルヌ)
切なく美しい夜想曲です。全体が6/8のシチリアーナのリズムにのって、しっとりと奏でられます。[Andantino、6/8、嬰へ短調、約3分]
X.WALTZ(ワルツ)
軽やかでおしゃれな三部形式のワルツです。中間部で転調し、甘いメロディーが奏でられます。最後は始めのテーマにもどり、さわやかに曲を締めくくります。[Allegretto、3/8、ニ長調、約3分]
【中級者向け】 (YS)

うっとりします(Fl.Vc.Pf)

ルイーズ・ファランク(1804-1875)は19世紀のフランス・パリ生まれの女流作曲家です。 ピアニスト、パリ音楽院のピアノ科教授としても活躍しました。
この曲は58歳の時に作られた作品で、4つの楽章からできています。 フルート、チェロ、ピアノそれぞれが見事に優雅で美しい曲です。 華やかでドラマチックというよりは、しっとりと流れる様な美しさで、 ずっと聞いていたくなります。 この編成で曲を探している方におすすめします。
演奏会のプログラムに加えて頂きたい一曲です!
T. Allegro deciso U. Andante V. Scherzo W. Finale
【中級〜上級者向け】 (U)

ピアソラの前にガルデルを(トリオ→Fl.Vc.Pf / デュエット→2Fl)

カルロス・ガルデルはアルゼンチンの国民的英雄です。ガルデルは1890年生まれといいますが、生地はフランスのトゥールーズとも、ウルグアイまたはアルゼンチンともいわれています。1911年に歌手としてデビュー、その後タンゴの歌手、作曲家として有名になります。さらに彼はイケメンだったので、ニューヨークで数々の映画に出演、人気を不動のものとしました。映画撮影でニューヨーク滞在中に、バンドネオンを弾く子供だったピアソラ少年と知り合い、オフの日にはニューヨークを案内してもらったとのこと。さらに撮影が終わって旅立つときにバンドネオン奏者としてピアソラ少年を演奏旅行に連れて行きたいと父親のノニーノに申し出たそうです。この時はまだ子供だからということでノニーノは断ったそうですが、もし同行していたら、その演奏旅行の途中で起こったチャーター機の墜落事故でピアソラ少年も亡くなり、後の彼のタンゴは聴けなかったことになります。ガルデルはこの飛行機事故で1935年に亡くなりました。彼の葬儀は棺がブエノスアイレスに着いたところから記録映画に残されており、ビルの窓々から花が投げられるといった、まさに国葬のような葬儀でした。
ガルデルが作った曲は現在でも愛され、歌い演奏され続けています。
この楽譜はその中から代表作「場末のメロディー」「首の差で(ポル・ウナ・カベサ)」「想いの届く日」「わが懐かしのブエノスアイレス」「帰郷」の5曲をフルート、チェロ、ピアノ(ID:30784)とフルート二重奏(ID:31941)に編曲してあります。これら5曲はそれぞれ、1932年(「場末のメロディー」)、1935年(「タンゴ・バー」)、1935年(「想いの届く日」)、1936年(「わが懐かしのブエノスアイレス」)、そしてガルデル没後71年の2006年(「帰郷(ボルベール)」)の映画音楽でもあります。
【中級者向け】 (SR)

”復刻”されたゴーベールの室内楽曲(Fl.Vn.Pf)

指揮者、作曲家そしてフルーティストでもあったゴーベールは、フルートのフレンチ・スクールの創始者タファネルの弟子であり、彼の3代後のパリ音楽院管弦楽団の指揮者も務めました。ゴーベールの室内楽といえばフルート、チェロ、ピアノのための「3つの水彩画」「ロマンティックな小品」が知られていますが、フルート、ヴァイオリン、ピアノの三重奏はこれまで殆ど知られていませんでした。フルーティストのF.スミス氏のCD録音によって知られるようになったこの曲は、古代ギリシアやローマの貨幣などに刻まれた人物や情景を音楽にしたものです。副題に「泉のニンフ − 踊り」とあり、前半は涌き出る泉の水と輝きを、後半は一転して踊りを描いていますが、その中にも前半の泉を回想する部分が何度か出てきます。フランス近代はドビュッシーやラヴェルが活躍した時代です。この作品は、その影響を大きく受けたゴーベールが、まさにこの時代の文化の特徴の一つである古代への憧憬を音楽で描いた美しい作品に仕上がっています。演奏会のレパートリーの一つに是非加えて下さい。なおこの曲はゴーベールの友人で、パリ音楽院管弦楽団の団員でもあったヴァイオリニストのフェルナン・ルカンに捧げられています。
(SR)

秋のおすすめ(Fl.Vc.Pf)

ゴーベールはフランスのフルーティストで、指揮者、作曲家としても活躍しました。3曲のソナタ、タファネルと合作した「17のメカニズム日課大練習曲」など、フルートの重要なレパートリーや教則本を作りました。この「3つの水彩画」は1926年に作曲されました。第1曲「ある晴れた朝に」、第2曲「秋の夕暮れ」、第3曲「セレナーデ」と、それぞれの曲にタイトルが付けられています。第2曲は切なくなるような旋律が続き、次第に日が暮れていく様子が目に浮かぶようです。しっとりと演奏してみてください。
演奏時間:約4分 (I)

優美で魅力的な小品はいかがですか?(Fl.Vc.Pf)

ゴーベールと聞くと、あっあの練習曲の!タファネル・ゴーベールのゴーベールね!と思われる方が多いかと思います。今回ご紹介する曲は、ゴーベールの作品の中では珍しいかもしれませんが、フルートとチェロ、ピアノの編成で書かれた作品です。もしこの編成で何か曲を探されている方がいらっしゃいましたら、ぜひいかがでしょうか?
演奏時間は小品のため8分程度ではありますが、この編成の魅力がギュッとつまった美しい作品となっています。 三部形式で、チェロの流れるような美しい魅力的な旋律から曲が始まります。その後その旋律はフルートが引き継ぎ二つの楽器が会話をするかのように奏でられていき、シチリアーノ舞曲風のフルートの旋律が印象的な後半へ…。そして曲の終わりになるにつれてそれぞれの楽器の個性が生かされたこの二つの旋律が重なり合い、クライマックスへと向かっていきます。
まさにタイトル通り、ロマンティックで甘美な雰囲気が漂うこの作品はまるでまろやかで甘いフランス菓子を味わっているかのような上品な曲です。
(NS)

ヘンデルのトリオ・ソナタ作品2の1は、ハ短調それともロ短調?(Fl.Vn.Bc)

ヘンデルの「6つのトリオ・ソナタ 作品2」は、後期バロック時代の代表的なトリオ・ソナタ集で、演奏される機会も多い作品です。その中の第1番はこれまでハ短調のソナタとして親しまれてきました。 ところが、この曲には別にロ短調の版が存在するのです。これは作品2の1aがハ短調、作品2の1bがロ短調、またはHWV 386のaとbという作品番号で区別されています。この2つの版の第1パートには、両方ともフラウト・トラヴェルソという指定があり、そのまま読むとどちらもフルート用ということになりますが、これが問題です。調性としてはハ短調はアルト・リコーダー(フラット系に強い)向き、ロ短調はトラヴェルソ(シャープ系に強い)向きですが、第1パートは音域が狭いので、少し高いハ短調版でも高音域が当時のトラヴェルソの音域に入っています。これまで、ハ短調版の方が成立が早いと考えられることから、リコーダーでもフルートでもハ短調で演奏されることが多く、楽譜もロ短調版はあまり出ていませんでしたが、最近、ロ短調版も入手しやすくなりました。ちなみに、ニコレはハ短調で録音していましたが、ブリュッヘンはロ短調で録音していたのです。トラヴェルソを吹く方でロ短調版を探しておられた方は多いのですが、現代のフルートで演奏しても、より低くて落ち着いた響きになるロ短調で演奏するのも魅力があります。一度、ロ短調版を試してみてはいかがでしょうか。
(SR)

2本フルートとチェロ、またはファゴットで。(2Fl.Vc)

この曲は2本のフルートとチェロのために書かれており、ハイドンはこの編成のトリオは4曲残しています。作曲されたのは1794年で、この時期のイギリス(ロンドン)での公演で大成功を納めています。この公演で交響曲「驚愕」「軍隊」「時計」「太鼓連打」「ロンドン」が生まれています。ロンドン・トリオはハイドンのパトロンであるイギリス人のアストン男爵とその夫人の為に作曲されたと言われています。チェロのパート譜をファゴットで演奏することも出来ます。第一楽章 アレグロ・モデラート  生命力溢れる、明るく軽やかな楽章。2本のフルートの踊るような掛け合いが聞く人の心も弾ませます。第二楽章 アンダンテ  ゆったりとしたテンポの優雅な楽章。穏やかな幸福感に満ちています。第三楽章 フィナーレ ヴィヴァーチェ  軽快で駆け抜けるようなフィナーレ。全ての楽章に共通する明るい輝きを放っています。さあ、あなたの街でロンドン・トリオ!
【中級者向け】 演奏時間:約10分 (U)

弾き応え、聴き応え抜群です(Fl.Vc.Pf.)

アメリカの作曲家ローウェル・リーバーマンの作品をご紹介いたします。彼の「フルート協奏曲」「ピッコロ協奏曲」はジェームズ・ゴールウェイが録音しており有名ですが、今回ご紹介するのは、ジニー・ゴールウェイに捧げられた作品、「フルート、チェロとピアノのためのトリオ」です。
この作品は4楽章構成で、ユニゾンで始まる第1楽章は拍子が目まぐるしく変わります。8/8や9/8、10/8拍子などが出てきますが、各拍子は3+3+2、2+2+2+3、3+3+2+2など、細かく刻まれています。第2楽章はフルートとチェロの歌うようなメロディが印象的です。ゆっくりな第3楽章を経て、第4楽章では再び第1楽章冒頭と同じ動機が使われ、スピードに乗って最後まで駆け巡ります。
どの楽器も難易度は高く、アンサンブル力も問われる1曲ですが、新しいレパートリーとしていかがでしょうか。
T.Allegro  U.Moderato  V.Largo  W.Presto
【上級者向け】 (B)

アンサンブルで聴かせるメンデルスゾーンの魅力(Fl.Vc.Pf.)

メンデルスゾーンが絶頂期に書いたとされている「ピアノ三重奏曲」。ヴァイオリン、チェロ、ピアノのために書かれた曲を編曲したものです。ヴァイオリン・チェロ・ピアノでの演奏は有名ですが、フルートの編成ではオリジナルとニュアンスが全く異なっていて、違う曲のように聴こえます。短調の曲の中でも隠しきれない、メンデルスゾーンらしい明快さが楽しめる1曲です。
【中・上級者向け】 演奏時間:約27分 (H)

セレナーデ(Fl.Vn.Va)

レーガーは1873年生まれのドイツの作曲家で、オルガン、ヴァイオリン、チェロを父から学び、ピアノを母から学びました。ミュンヘンやライプツィヒの音楽院教授を経て、マイニンゲン宮廷楽団の宮廷楽長に就任しました。1914年、マイニンゲン宮廷楽団の解散後、イェーナへ移住し作曲活動や演奏活動を続けましたが、1916年に心臓発作のため急死しました。43歳で生涯を閉じましたが、歌劇と交響曲以外の全てのジャンルの作品を書いた多作家でした。(作品数1000以上)
この楽譜にはセレナーデが2曲入っていますが、今回ご紹介するのは「ト長調 op.141a」です。この曲は1915年に作曲されました。「フルート・パートをヴァイオリンで演奏してもよい」とレーガー自身が指示しており、フルート・パート譜の最後にヴァイオリン・パートが入っています。快活な第1・3楽章と美しい第2楽章の対比、そしてダイナミクスの急激な変化が印象的です。
フルート・ヴァイオリン・ヴィオラの三重奏ですと、ベートーヴェン作曲の「セレナーデ」が有名ですが、こちらも是非レパートリーに加えてみませんか?
※スコアは別売となっております⇒ こちら
I.Vivace/II.Larghetto/III.Presto 【中級〜上級者向け】 演奏時間:約17分 (I)

映画音楽の巨匠、ニーノ・ロータの作品をご紹介します。(Fl.Vn.Pf)

イタリアの作曲家ニーノ・ロータは「戦争と平和」「ロミオとジュリエット」「ゴットファーザー」などの映画音楽の作曲家として有名ですが、クラシックの作曲家としても活躍しました。 1958年に作曲された、フルート、ヴァイオリン、ピアノのためのトリオは、3楽章構成の躍動感溢れる作品です。フルートのみならずヴァイオリン、ピアノともに技巧的な曲となっております。特殊奏法は出てきませんが、各楽器が折り重なるように現れ、旋律が入れ替わるので、アンサンブル力が必要でしょう。
T Allegro ma non troppo U Andante sostenuto V Allegro vivace con spirito
【上級者向け】 演奏時間:約12分30秒 (B)

モイーズが愛したテレマン(Fl.Vn.Bc)

大バッハと同じ時代にドイツ最高の作曲家と言われていたテレマンは、あらゆるジャンルの音楽を作りました。彼はその中でも特にトリオ・ソナタには自信があったらしく、自伝の中で『私はとくにトリオ・ソナタの作曲に精魂を傾けた。つまり二つの上声部は、第二のパートがあたかも第一のパートを思わせるように作り、またバスは自然なメロディで上声部と親密な調和を保ち、しかも一音一音が、まさにそれ以外ではあり得ないといった動きをするように作曲した。そして皆も、私がトリオ・ソナタの作品で最高の力量を見せているといってほめてくれた。』(「テレマン 作品と生涯」音楽之友社より)と記しています。
彼が出版した「音楽の練習帳」は、6つの独奏楽器のために2曲ずつ書かれた12のソロ・ソナタ(組曲)と、それらの楽器にチェンバロを加えた7つの独奏楽器の様々な組み合わせによる12のトリオ・ソナタからなっています。そしてその9番目のトリオ・ソナタがこの曲で、フルートとヴァイオリンのために作曲されています。
この曲はマルセル・モイーズが愛奏し、レコード(CD:「巨匠マルセル・モイーズ大全集」)にも残したため日本でも知られるようになりましたが、もちろんバルトルド・クイケンをはじめとする多くのピリオド楽器の演奏家達にも取り上げられています。
ベーレンライター社から出版されていた楽譜が長年絶版になっていたため手に入らず、多くのお問合せを頂いていておりましたが、近年アマデウス社から出版されまた入手できるようになりました。皆様のレパートリーに是非加えていただきたい名曲です。
(SR)

コミカルで愉快な一曲です♪(Fl.Cl.Pf/Fl.Tp.Pf)

イギリスの作曲家、マルコム・アーノルド(1921〜2006)。彼はトランペット奏者であり、作曲家としても活躍しました。管弦楽曲や吹奏楽曲をはじめ、映画音楽も手掛けるなど多様なジャンルの作品を残しています。
今回ご紹介する作品は、1940年に作曲されたフルート、クラリネット(またはトランペット)、ピアノのための愉快な一曲です。
冒頭のフルートの旋律が変奏しながら展開したあと、チャルダッシュ、タンゴ、ブルース、ワルツと曲調が変化しながら進行します。急速な強弱の変化やアクセント、トリルやグリッサンドなどの装飾音により、コミカルで遊び心のあるユーモアな雰囲気で溢れている一曲です。演奏者も聴衆も、自然と楽しくなってしまうことでしょう。演奏会におすすめです。
(KM)

アーノルドの世界へようこそ!(Fl.Ob.Pf または Fl.Cl.Pf)

数多くの作品を手掛けてきたマルコム・アーノルド。彼は、映画音楽やテレビ音楽をはじめ、管弦楽曲や吹奏楽曲など、さまざまなジャンルで作品を残しています。そんなアーノルド自身、作曲家として活動する前は、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の首席トランペット奏者としても大活躍しました。この実技経験を生かしながら、作曲家へと本格的に活動をはじめ、時には自ら指揮を振るなど、幅広く活動しました。
今回ご紹介する作品は、フルート、オーボエ(またはクラリネット)、ピアノの三重奏『ブルジョワ組曲』です。この曲は、T.Prelude U.Tango(Elaine) V.Dance(Censored) W.Ballad X.Valse(Vgo)の全部で5つの楽章に分かれており、一つ一つの楽章がとても短く、クラシカルな雰囲気を持ちながらも、アーノルドならではの個性溢れた面白い響きと、誰もが親しみやすい美しいメロディーを持った作品となってます。 ぜひ、この機会に一度、アーノルドの作品をチャレンジしてみてはいかがでしょうか。 (M)

メモリアル「マルコム・アーノルド」(Fl.Ob.Cl)

1952年に書かれた、短い6曲からなるフルート、オーボエ、クラリネットのための三重奏曲です。
I.Allegro energico クラリネットの軽快なメロディで始まり、オーボエ、フルートへと引き継がれます。躍動感のある少しおどけた感じの曲です。
II. Languido 嘆きや悲しみ、不安といったものを表すような旋律で、各パートの半音階が重なり合い不協和音が生まれますが、意外と不快ではありません。
III.Vivace クラリネットが活躍します。40秒ほどの短い曲で、最後はクラリネットが一人で駆け抜けます。
IV.Andantino 祈りを捧げるようなオーボエの旋律が印象的です。
V.Maestoso ユニゾンで奏でられる旋律は勇ましく、Maestosoの名に相応しいです。フルートは最高音Cからの速い音階が出てきます!最後は3人でせわしなく終わります。
VI.Piacevole 今までの不協和音や激しさなどがなかったかのような美しく穏やかな曲です。
【上級者向け】 演奏時間:約9分(B)

フルートだけではないフレンチ・スクール2(Fl.Hn.Pf/Fl.Hn.Hp)

前回ナチュラル・ホルンがヴァルヴ・ホルンに取って代わられたお話をしましたが、20世紀に入ると、そのヴァルヴ・ホルンの中でも対立が起こります。それがピストン・ヴァルヴの上昇管対ロータリー・ヴァルヴの対立です。「上昇管」とは聞きなれない言葉ですが、第3ヴァルヴで1音半下がる代わりに1音上がるシステムのことです。これは、ナチュラル・ホルン時代に全調分の替管を用意すると非常に重くなるので、音色が良く使用頻度の高い調(Es、E、F、G)だけの演奏に絞ったソリスト用の楽器「コル・ソロ」が作られた名残と考えられます。代表的な例が、ラヴェルの《亡き王女のためのパヴァーヌ》の管弦楽版の冒頭のホルンのソロです。スコアの指定では、「ナチュラル・ホルンG管」とありますが、編曲されたのは1910年で、ヴァルヴ・ホルンに移行した後の時代の作品ですから、これは実質的には「上昇管の3番ピストンを押えたまま、ハンドストップ奏法で吹く」という意味でした。また19世紀末からはB管とF管のシングル・ホルンを合体させたダブル・ホルンが生まれます。フランスではセミ・ダブル式が主流で、楽器の構造は短いB管を基準に、F管の分だけ迂回するので楽器自体が軽く、明るい音色が好まれました。ドイツやオーストリアではウィンナ・ホルンがF管シングルであるように、長いF管の深みのある響きを基にB管との2層構造にしたフル・ダブル式の、より重厚な音色となりました。このように、フランスとドイツの美学的な違いが楽器のシステムにも反映されていたのです。しかし、グローバル化の波により、フランス独自のピストン上昇管は淘汰されてしまいました。
ジョルジュ・バルボトゥー(1924-2006)はアルジェリアのアルジェに生まれ、父親は当地の音楽院でホルン科の教授でした。そのため9歳からホルンを始め、先に1948年にパリ国立管弦楽団の2番奏者として入団してから、1950年にパリ音楽院(コンセルヴァトワール)に入学し、1年で名誉賞を取って卒業します。1951年ジュネーブ国際音楽コンクール1位、指揮者カラヤンの求めでパリ管弦楽団に移籍、母校パリ音楽院のホルン科の教授も務めました。彼自身もフランスの伝統にのっとりピストン上昇管の楽器を使いましたが、彼の一世代前の名手、ルシアン・テヴェ(1914-2007)の演奏は、一聴しただけではとてもホルンとは思えないサキソフォンのような甘い響きで、このような音色のパレットの多様性が途絶えてしまったことは残念なことです。
この《スケッチ》は1940年に作曲され、フルートとハープという20世紀前半の印象派主義音楽を代表する楽器とホルンによる三重奏の小品となっております。ドビュッシーの《ソナタ》のヴィオラをホルンに置き換えたと言っても良いかもしれません。そこで、フルート、ホルン共に繊細かつ明るい音色や甘いヴィブラートを意識して演奏することで当時の響きを再現でき、新たな発見があるでしょう。
(2023年8月記) 【中級者向け】 演奏時間:約3分40秒 (M.N.)

フルートだけではないフレンチ・スクール1→楽譜ID:34035(デュヴェルノワ/三重奏曲 第1番)

アルプスの絶景を思い浮かべて…(Fl.Hn.Pf/Fl.Vc.Pf/Fl.Hn.Pf.Glsp)

フランツ・ドップラー作曲のフルート作品といえば、ハンガリー田園幻想曲や2本のフルートとピアノによる作品が有名ですが、今回はホルンの入るアンサンブル「リギの思い出」をご紹介します。
“Rigi”とはフィアヴァルトシュテッテ湖(ルツェルン湖)、ツーク湖、ラウエルツ湖に囲まれた中央スイス地方の山塊で、ラテン語で”Regina Montium(山の女王)”と呼ばれたことがその名の由来となっています。
小鳥のさえずりのような軽やかなフルートの音色から始まり、のびやかにホルンのメロディーが加わると、アルプスの美しく雄大な風景が思い浮かびます。
主部の情熱的な主題は躍動感がありピアノの勢いも増しますが、後半にはまたホルンが牧歌を奏で、フルートは華麗な3連符で魅了します。オプション・パートのグロッケンも顔を出し、心地よく響き渡りながら曲を締めくくります。1音のみなので、フィンガーシンバル等でも代用できるのではないでしょうか。
ホルンのパートはチェロでも演奏可能で、それぞれのパート譜も付いています。
また、フルート族で演奏出来る楽譜(ID:32780)もございます。
澄み切った青空に緑いっぱいの自然が感じられる素敵な曲ですので、ぜひ演奏してみてくださいね。
【中・上級者向け】 演奏時間:約7分(OY)

『ちょっと気になるこの響き・・・』(Fl.Ob.Pf)

数少ない女性の作曲家からマデリーン・ドリング(1923-1977)をご紹介します。
マデリーン・ドリングは、イギリスの作曲家と女優の2つの顔をもつ、とても多彩な方でした。 いくつかのソロ楽曲、室内楽曲を作曲しましたが、夫であるロジャー・ロードがオーボエ奏者であった為、オーボエの作品が数多く残されています。 フルートの作品としては、1968年に『フルート・オーボエ・ピアノのためのトリオ』が作曲されました。 この曲は、3楽章構成です。 第1楽章は、変拍子を多く用いたリズミックな疾走感と生き生きとした雰囲気を醸し出した音楽です。 第2楽章は、一度耳にすると思わずうっとりしてしまうようなロマンティックな美しい旋律がとても印象強い音楽です。 第3楽章は、おしゃれなラテン音楽を感じさせるとても魅力あふれた音楽です。 途中、フルートとオーボエに長いカデンツァがあり、それぞれの楽器の持ち味を生かした壮大な曲です。 ぜひ、ドリングならではの独特な響きを楽しみながら、フルート・オーボエ・ピアノの室内楽をチャレンジしてみてください。
【中・上級者向け】 演奏時間:約10分 (M)

フルートだけではないフレンチ・スクール1(Fl.Hn.Pf/Vn.Hn.Pf)

フルートの演奏法、レパートリーに関しては19世紀後半から20世紀にかけてのフランスの演奏家、作曲家の影響が大きく、「フレンチ・スクール(フランス楽派)」という言葉をよく耳にします。長らく連邦国家の時代が続き地方分権が進んだドイツとは異なり、ルイ14世の絶対王政以来の中央集権体制が共和政になっても根強く残ったフランスでは、音楽においてもパリ音楽院(コンセルヴァトワール)を頂点としたヒエラルキーが確立し、大きな影響を及ぼしました。よって、フルート以外の楽器でも、フランス独自のスタイルが花開くこととなります。そこで、様々な楽器の奏者が作曲した作品を取り上げ、フランス音楽の伝統や特徴を探っていくことに致しましょう。

第1回目はホルンのフレデリック・デュヴェルノワ(1765-1838)を取り上げます。彼は1795年のパリ音楽院創設時の初代ホルン教授の一人となり、1815年まで務めました。フランソワ・ドヴィエンヌとほぼ同世代です。1797年にはオペラ座管弦楽団に入団し、1799年に首席奏者となるなど、当時のフランスを代表するホルン奏者です。ホルンのフレンチ・スクールというと、パリ管弦楽団の前身、パリ音楽院演奏協会管弦楽団の時代の、ピストン・ヴァルヴの上昇管ホルンによるヴィブラートたっぷりの演奏スタイルを思い起こされる方もいらっしゃるでしょう。しかし、20世紀のロータリー・ヴァルヴ対ピストン・ヴァルヴの対立の前に、19世紀においてはヴァルヴ・ホルン対ナチュラル・ホルンの対立がありました。フランスの19世紀の奏者たちは、ナチュラル・ホルンのハンドストップの技術を磨き上げ半音階を難なく吹きこなしていたため、当時の気密性が良くないヴァルヴ・システムの楽器は音色が悪いと敬遠していました。よって当時のフランスの管弦楽法においては、1、2番ホルンがナチュラルで音色重視の旋律を吹き、3、4番ホルンがヴァルヴで半音階的パッセージを担当する混合編成が一般的でした。楽器製作技術、演奏技術の進歩によりホルン・セクションがヴァルヴ楽器で統一されるようになるのは19世紀末のことです。
ホルン三重奏曲といえばブラームスのものが有名ですが、彼も実はナチュラル・ホルンの音色を好んでいました。現在の楽器よりもベルが小さく、さらにストップ奏法によりベルを塞ぎますので、音量が小さめで音色も多少暗くなりますが、室内楽としてはバランスが取れているように思われます。最近では古典作品を演奏する際にナチュラル・ホルンやナチュラル・トランペットを採用するオーケストラもありますので、試してみるとフルートの方にとってもアンサンブルの響きの作り方で、新たな発見があるかもしれません。楽曲は単一楽章ですが、少し深刻そうなアダージョに続いて、典雅なサロンの雰囲気のカンタービレ、牧歌的とはいえ快活なアレグレットの3部からなります。
(2023年4月記)【中級者向け】 演奏時間:約9分  (M.N.)

フランスのフルーティストによる一曲です!(Fl.Ob.Pf)

ゴーベール(1879〜1941)はフランスのフルート奏者であり、作曲家、指揮者でもあります。作品はバレエ、交響曲、管弦楽作品、室内楽曲、歌曲など多岐にわたります。中でもフルートのためにとても魅力的な作品を数多く残しました。フルーティストにとって重要な練習曲の1つ、フルート教本『タファネル&ゴーベール/17の日課大練習』の作者としても皆さんよくご存知だと思います。 この曲はフルートとオーボエ、ピアノのアンサンブルです。タランテラの弾むリズムで始まり、のびやかで美しいメロディーの掛け合いを経て、クライマックスへと向かいます。 演奏時間は約4分強と短めの曲ですが、アンサンブルの楽しさを十分に味わうことができます。オーボエのお友達を誘って是非お楽しみ下さい!
【中級者向け】(U)

ヴィヴァルディやテレマンに飽きた人に、とっておきのトリオ・ソナタを(Fl.Ob.Bc.)

ヤーコプ・フリードリヒ・クラインクネヒト(1722 - 1794)。長たらしい名前を持つこの作曲家は、比較的フルート作品が多いとはいえ、フルートの世界でもあまり知られている人ではありません。父にフルートを習い、バイロイトの宮廷でフルート奏者、ヴァイオリン奏者を務め、後に楽長にまで登り詰めた人です。後期バロック時代に生まれ、モーツァルトより後で亡くなっていますが、作品は通奏低音を備えたオーソドックスな形で、いわゆる「シュトゥールム・ウント・ドラング(疾風怒濤)」の作風を持っています。これは短い間に、アーティキュレーション、強弱、調性、リズムなど様々な要素がめまぐるしく変化する、刺激的で、風変わりではあっても大変面白い様式です。このことを理解して演奏に反映出来れば、面白い良い演奏ができるわけですが、逆に理解できないと拒絶反応を起こしてしまうかも知れないので要注意です。ドイツのフルーティスト、ヘンリック・ヴィーゼが楽譜やCDを通じてソナタをいくつか紹介していましたが、この、フルート、オーボエと通奏低音のためのトリオ・ソナタは声部が多いだけに、さらに面白い作品になっています。急—緩—急の3楽章で出来ています。
【中・上級者向け】 (SR)

音楽でリフレッシュ♪(Fl.Ob.Pf)

「身近な仲間と一緒に音楽で息抜きできたら・・・」そんな風に感じることはありませんか?バッハやモーツァルトなどの偉大な作曲家たちの曲を演奏したり研究したりすることはもちろん音楽をする醍醐味ですが、彼らの濃密な作品よりはちょっと身近な?曲をご紹介します。
スロヴェニアのピアニスト、作曲家、編曲家として活躍するブラシュ・プチハールのフルート、オーボエ、ピアノのための三重奏曲です。超絶技巧が必要であったり、複雑な構造で濃密であったり、というよりは、いわゆる「イージー・リスニング」の分野に近い印象を持つ作品です。試験勉強で疲れたとき、レッスンで難しい曲をたくさん持って行ったとき、一人での練習に息が詰まってしまいそうなとき・・・様々な場面で、「休憩したいな」という気持ちになりますよね。そんなときこそ、この一曲! どのパートも複雑すぎることはなく、一度譜読みができてしまえば、いつでも気軽に演奏していただけるくらいの難易度です。
風に乗るようにさわやかに吹ききると気持ちの良い第一楽章、ちょっとムーディーに楽器間の「音楽の会話」を楽しめる第二楽章からなり、最後はテンポ・アップして、はつらつとした雰囲気で終わります。(オーボエ・パートは移調せずにそのままフルートで吹けるので、ためしにフルート2本で演奏してみてもいいかもしれません。)
「最近ちょっと疲れちゃって」・・・仲間とこんな会話になったら、「楽しいアンサンブルで息抜きしよう!」なんて提案してみてはいかがでしょうか? そんな風に音楽で仲間と楽しむことも、音楽の醍醐味、ですよね。
(YS)

優雅で上品な宮廷音楽(Fl.Ob.Pf.)

このトリオはフルート・オーボエ・通奏低音の為に作曲されましたが、オーボエのパートはフルートやヴァイオリンでも演奏出来ることから、昔から2本のフルートとピアノでよく演奏されてきました。
天から降り注がれるような優しく穏やかに流れる第1楽章。軽快なリズムにのった第2楽章、祈りを捧げているような旋律の第3楽章、躍動感に溢れ、生き生きとした第4楽章。全曲を通して宮廷音楽の優雅で上品な雰囲気が続きます。
この曲を作曲したクヴァンツは18世紀のヨーロッパを代表する名フルート演奏家であり、フリードリヒ大王のフルートの師として有名です。作曲家としても活躍し、フルート・ソナタ、トリオ・ソナタを数多く残しています。また、「フルート奏法試論・バロック音楽演奏の原理」(楽譜商品ID:12729)は現在においてもフルート奏者にとって大事な著書となっています。
【中・上級者向け】 演奏時間:約11分 (E)

童話と音楽の融合(Fl.Ob.Pf)

ラヴェルが知人の子供のために、童話の世界を音楽で表現したピアノ四手連弾の作品です。のちにこの作品は管弦楽版とバレエ版で改編され、現在も人気の高い作品の一つです。今回ご紹介する編成は、フルート、オーボエ、ピアノのアンサンブルで、管弦楽版を基にしています。原曲を大事に編曲しているので、管弦楽版で演奏しているような気分で演奏できます。またよく知られた物語もあるので、お話を交えながら子供たちと一緒に楽しんだり、演奏会などで取り上げてみてはいかがでしょうか。
第1曲『眠れる森の美女のパヴァーヌ』。フランスの詩人、シャルル・ペローの童話集より「眠れる森の美女」。呪いの針を刺され100年の眠りにつく王女の物語の曲。
第2曲『親指小僧』。こちらもペローの童話集より「親指小僧」。親指サイズで生まれた小柄な少年が兄弟のために人食い鬼に立ち向かう物語。
第3曲『パゴダの女王レドロネット』。フランスの女流作家、ドーノワ伯爵夫人の妖精物語より「緑の蛇」。妖精に醜い姿にされた王女レドロネットが、緑色の蛇に出会い試練を乗り越えるお話。実は緑色の蛇も妖精に魔法をかけられていて、本当の姿は素敵な王子です。パゴダは塔の意味で、この曲はそこに住む両手や頭が動く中国の人形が王女の入浴の際に演奏をはじめるところです。
第4曲『美女と野獣の対話』。フランスの作家、ボーモン夫人の子供の雑誌より「美女と野獣」。娘のためにバラを盗んだ父親が野獣に捕まり、父親の身代わりとなった心優しい娘。野獣の姿をした王子が少女と同じ時間を過ごす中で、野獣の心が変化してく物語。
第5曲『妖精の園』。第1曲と同じ「眠れる森の美女」より、王女が眠りについてから100年後、ひとりの王子が美しい王女が眠っているいばらの城へやってきます。王子によって目覚めた感動的な場面の曲。
【中級者向け】(TO)

テレマンのトリオ・ソナタ(Fl.Ob.Bc)

テレマンが1740年に書いた自伝によれば、「私はとくにトリオ・ソナタの作品に精魂を傾けた。つまり2つの上声部は、第2のパートがあたかも第1のパートを思わせるように作り、またバスは自然なメロディで上声部と親密な調和を保ち、しかも1音1音が、まさにそれ以外ではあり得ないといった動きをするように作曲した。」とあります。そして全貌がいまだに分からないテレマンの作品のなかで、現在確認されているだけでもこのジャンルの曲は150曲を超えています。そんなテレマンの「十八番」トリオ・ソナタから、フルートとオーボエのために作られた傑作をご紹介します。テレマンは1733年に全3集からなる「ターフェルムジーク(食卓の音楽)」を出版しました。これは管弦楽組曲、協奏曲、四重奏曲、トリオ・ソナタ、ソロ・ソナタ、終曲(管弦楽組曲と同じ楽器編成)からなる曲集で、食事というよりは、当時行われていた食事を伴う大掛かりな行事の時などに利用することを考えた曲集でしょう。プロフェッショナルな奏者が演奏することを念頭に置いて作曲されており、バロック時代に書かれたこの編成の作品としては最高傑作と言っても良い出来栄えです。
(SR)
テレマンが1740年に書いた自伝によれば、「私はとくにトリオ・ソナタの作品に精魂を傾けた。つまり2つの上声部は、第2のパートがあたかも第1のパートを思わせるように作り、またバスは自然なメロディで上声部と親密な調和を保ち、しかも1音1音が、まさにそれ以外ではあり得ないといった動きをするように作曲した。」とあります。そして全貌がいまだに分からないテレマンの作品のなかで、現在確認されているだけでもこのジャンルの曲は150曲を超えています。そんなテレマンの「十八番」トリオ・ソナタから、フルートとオーボエのために作られた傑作をご紹介します。こちらはテレマンが1740年に出版した「音楽練習曲集(エッセルチーツィ・ムジチ)」からのトリオ・ソナタです。この曲集は12曲のソロ(チェンバロ用以外はソナタで、様々な楽器のために2曲ずつ)と12曲のトリオ・ソナタ(全て楽器編成が異なる)から成っており、これもプロフェッショナルな演奏家のために書かれたと考えられ、曲の難易度、芸術性、共に満足度の高い作品です。この時代でも、フルートとオーボエの組み合わせは意外に少なく、この編成では必ず取り上げられるレパートリーになっています。また、オーボエのパートはヴァイオリン等で演奏しても面白いと思います。
(SR)

テレマンのトリオ・ソナタ(Fl.Ob.Bc/Fl.Vn.Bc)

もう十数年前のことですが、テレマンが作曲した「フルート、オーボエと通奏低音のためのトリオ・ソナタ」を2曲ご紹介したことがありました。バロック時代の管楽器の中でフルートはどちらかといえばシャープ系の調性が得意、オーボエはフラット系が得意ということがあって、合わせにくいということからでしょうか、フルートとオーボエを組み合わせたトリオ・ソナタはさほど多くはないようです。
テレマンのフルートとオーボエのためのトリオ・ソナタは以前ご紹介した「ターフェルムジーク」からのホ短調と(楽譜ID:20823)、「音楽練習帳」からのニ短調の2曲しか知られていませんでしたが(楽譜ID:22943)、その後、別の2曲が知られるようになりました。この編成の数少ないレパートリーを広げるのに絶好の2曲です。

この曲は手稿譜がパーダーボルンのアドルフ図書館にあったもので、現在はカッセルのドイツ音楽史文書館の管理下にあります。アダージョ/アレグロ/ラルゴ/アレグロという典型的な緩・急・緩・急の4楽章構成。平明で流れるような第1楽章、リズミカルな動きのある第2楽章、流麗で短い第3楽章、簡潔で軽快な第4楽章からなる魅力的な作品です。テレマンのこの編成の作品では唯一、長調で作られた曲です。
(SR)
こちらはバロック時代の手稿譜の宝庫ともいえる、ダルムシュタットのヘッセン州立大学図書館に所蔵されている手書き譜で残されている作品です。この曲もラルゴ/アレグロ/アフェットゥオーソ/ヴィヴァーチェという緩・急・緩・急の4楽章構成ですが、楽章の表記を見ても分かる通り、こちらの方がより楽章間の性格の変化が大きいようです。流麗な第1楽章、同音連打のモティーフが印象的な第2楽章、メロディーと付点のモティーフが交替する第3楽章、特徴のある16分音符と32分音符の組み合わせで構成される勢いのある第4楽章からなっています。
この2曲は第2パートをヴァイオリンに置き換えても演奏効果がありそうです。演奏会などのレパートリーに加えてみてはいかがでしょうか。
(SR)

新しいジャンルに挑戦(Fl.Cl.Pf.)

「テクノ・パレード」・・・なんとも不思議なタイトルです。
テクノ、ミニマル、ラテン、ジャズ・・・さまざまなジャンルの音楽を融合させたような作品です。3人の奏者がひたすら走り続けるようにフルート、クラリネット、ピアノの音が次へ次へと連なります。フルートはフラッターやフラップ・タンギング、クラリネットはグリッサンド、ピアノの譜面には、弦をこするというような指示も出てきます。
アンサンブル力はもちろんですが、ひとりひとりの高い演奏技術も必要でしょう。 その分、ひとつのアンサンブルとして出来上がったときの達成感は大きいはずです! 新しいレパートリーにいかがですか?
エマニュエル・パユ、ポール・メイエ、エリック・ル・サージュにより初演。
【上級者向け】 演奏時間:約4分30秒 (B)

フルートとクラリネットの曲をお探しですね(Fl.Cl.Pf)

ダンツィといえば木管五重奏曲が有名で、多くの演奏者に楽譜をお買い上げいただいております。今回は、最近、クラリネットが入っている曲をお探しのお客様が増えてきましたので、ご希望にこたえて、名曲を紹介致しました。 マンハイム生まれ。ベートーヴェンと同世代の作曲家。ウェーバーとは生涯の友人であり、お互いに強い影響を与えたようです。 この曲は管楽器の性格(性能)をよく把握し、美しい音色を生かす才能が十分に発揮されている曲です。演奏上の留意点として、フルートとクラリネットのバランスに注意してください。この曲をご存じない方は是非、CDを聴いてみて下さい。この曲の良さが一番判るはずです。(これ以上のコメントは必要ないです。)
(Y)

ドビュッシーの室内楽曲に挑戦してみませんか?(Fl.Cl.Pf)

ドビュッシーの「フルート、ヴィオラ、ハープのためのソナタ」は美しいメロディーと幽玄な響きとを持ち、フルートの室内楽曲の中でも特に人気のある曲です。しかしこの特異な編成のため、アマチュアはもちろん、プロの演奏家でもなかなか演奏する機会に恵まれないのも事実です。今回ご紹介するのは、ヴィオラをクラリネットに、ハープをピアノに置き換えた編曲版です。この編成なら一緒に演奏してくれる人を見つけやすいのではないでしょうか。もちろん、楽器が変われば音の響きは変わりますので、オリジナルとは印象を異にするでしょうし、一方楽器が変わっても演奏の難易度は変わらず3人とも高度な技術を要求されますが、「演奏してみたかったけど相手がいなくて」と思っていた方には、挑戦する良いチャンスでしょう。
【上級者向け】

「ドリー」をフルートで(Fl.Cl.Pf)

「ドリー」は銀行家バルダック家の娘エレーヌの愛称です。エレーヌは1892年に生まれました。フォーレは彼女のために、その2、3、4回目の誕生日にピアノ連弾の小品を作曲し捧げています。それらの曲は最終的に「子守歌」ホ長調(1893/4)、「ミ・ア・ウ」ヘ長調(1894)、「ドリーの庭」ホ長調(1895)、「キティのワルツ」変ホ長調(1896)、「優しさ」変ニ長調(1896)、「スペインの踊り」ヘ長調(1897)の6曲にまとめられ、今ではフォーレの最も愛されるピアノ作品となっています。こうしてまとめられた組曲「ドリー」は、1898年にE.リスレルとA.コルトーによって公開の場での初演が行なわれました。翌年にはA.コルトーの編曲によるピアノ独奏版が作られ、1913年にはH.ラボーによって管弦楽に編曲されてバレエが上演されていることから、この曲は作曲当時から人気があったようです。ちなみに、エレーヌの母親エンマ・バルダックは、1904年にドビュッシーとジャージー島に駆け落ちし、後にドビュッシーと結婚しますが、この2人の間に出来た娘エマ(愛称シュウシュウ)にはドビュッシーが「子供の領分」を作曲しているので、エンマの娘2人は夫々、フランス近代の大作曲家から、後々大変よく知られ愛されるようになった作品を捧げられていることになります。なお、第2曲の「ミ・ア・ウ」、第4曲の「キティのワルツ」は、以前夫々が猫の名前とされてきましたが、現在では、「ミ・ア・ウ」はドリーの兄ラウルが呼んでいたドリーの愛称、「キティ」は「ケティ(Ketty)」のミスプリントで、そのラウルが飼っていた犬の名前とされています。ご紹介する楽譜は全曲で、全楽章、原曲の調性のままです。可愛らしく、美しいこの組曲は、編曲でも十分に楽しめると思います。
(SR)

語源は毒蜘蛛“タランチュラ”(Fl.Cl.Pf)

サン=サーンスは近代フランス音楽の父と呼ばれる大作曲家です。幼い頃からピアニスト・作曲家としての才能を発揮し、モーツァルトをしのぐ神童と言われていました。さらに、音楽だけにとどまらず、天文学や考古学、詩やエッセイまで手がけたと言われています。サン=サーンスが22歳の時、ロッシーニの勧めによりこのフルート・クラリネットのデュエットを書き上げました。当時、ロッシーニは作曲家としての活動はせずにパリ郊外でサロンやレストラン経営をしていました。そのサロンでの夜会での一曲として演奏されたそうです。


【タランテラ】語源 (1)南イタリアのタラントという町の地名から由来する説。 (2)毒蜘蛛のタランチュラに噛まれた時、その毒を抜くために踊ったといわれる踊りという説。


タランテラとは3/8または6/8拍子のテンポの速い舞曲のことです。この曲はその名前にふさわしく弾むようなリズムに乗って始まります。そしてサン=サーンスらしいロマンティックなメロディーへと移り、やがてテンポが上がりドラマティックに最後を締めくくります。演奏時間は6分〜7分ですが聞きごたえも充分です。クラリネットのお友達とレパートリーの一つに加えてみてはいかがでしょうか。
(U)

フルートとクラリネットの曲をお探しですね 2(Fl.Cl.Pf)

近代フランスの作曲家フローラン・シュミットは、パリ音楽院でフォーレやマスネに作曲法を師事しました。また彼の同窓生にはケックランやラヴェルといった著名な作曲家が名を連ねています。シュミットは1900年にローマ大賞を受賞した後、ヨーロッパ中の様々な国を旅行しました。イタリアはもちろんのこと、ドイツ、ハンガリー、モロッコ、そしてトルコにまで足を運んだそうです。そういった旅行で出会った音楽の影響でしょうか、シュミットの作品には、近代フランス的でありながらドイツロマン主義や中欧的な音楽が見え隠れする面白さがあります。この『三重奏のためのソナチネ Op.85』は、フルート・クラリネット・チェンバロ(またはピアノ)のために、1935年に作曲されました。力強いピアノ(or チェンバロ)の主題から始まりクラリネットとの対話を楽しむ第一楽章、変拍子が楽しいワルツのような第二楽章、叙情的で美しい第三楽章、そして軽やかで巧妙に演奏したい第四楽章。演奏時間は長くないのですがしっかりした形式で書かれています。まだ一般にあまり知られていない作品ですが、演奏会のプログラムとしてもオススメできる名曲です。
【上級者向け】 演奏時間:約8分 (A)

たのしくかわいらしいワルツはいかがですか?(Fl.Cl.Pf)

ショスタコーヴィチ(1906−1975)と聞いたら派手な交響曲、戦争などをテーマにした暗く重い作品をイメージされる方も多いのではないでしょうか?
今回ご紹介する曲はそのようなイメージとは違ったかわいらしいワルツです。彼は映画音楽や舞台音楽なども多数作曲しており、それらの曲からは彼の意外な一面を覗くことができます。
この4つのワルツはショスタコーヴィチが作曲した映画音楽とバレエ音楽を友人である作曲家アドミアンが1956年に抜粋し編曲したもので、第1番、第2番はフルートとクラリネットそれぞれの独奏曲になり、第3番、第4番が3重奏の曲になります。時にロマンティックに、そして時に楽しく、かわいらしく!聴いているだけでワルツを踊りたくなるようなこの曲!ぜひレパートリーに入れていただきたい1曲です!
第1番はクラリネットとピアノで映画“ミチューリン”より
第2番はフルートとピアノでバレエ音楽“ボルト”より
第3番はフルート、クラリネット、ピアノで映画“マクシムの帰還”より
第4番はピッコロ、クラリネット、ピアノで映画“馬のあぶみ”より
【中級者向け】 演奏時間:約10分 (NS)

名女優に捧げた曲(Fl.Sax.Pf)

この曲はアメリカ合衆国の名女優ジーン・ハーロウに捧げられた、フルート、サックス、ピアノの三重奏曲です。当初「ロマンス」としてハーロウの生前に構想され、後に「旋律線が彼女に相応しい」と感じたケックランは、自身の歌曲「Epiphanie」(1900年頃、ドリール詩)のモティーフを途中に使用するとともに、その詩の一節「風が彼女のブロンドの髪にふれ、えもいわれぬ余情がその肩に漂う」を引用して書き添え、「墓碑」として彼女に捧げました。サクソフォンについてはその音色が「スターとカリフォルニアの輝きを表す」と説明しています。
ケックラン…1867年パリで生まれました。理工科大学に入学した後、パリ音楽院で、マスネ、ジェダルジュ、ファーレに師事され、長い創作生活の中から独自の世界を編み出しました。
ジーン・ハーロン(1911-37)…19才で『地獄の天使』(30年)の悪女役に抜擢され、セックス・シンボルとして一躍大スターとなるが、その後演技力の評価も高まる中、26才の若さで病に倒れこの世を去りました。飲酒、3回の結婚、夫の自殺などスキャンダラスな生涯が伝記や伝記映画によって語り継がれる伝説の女優です。
とてもきれいなメロディーですが奥の深い曲です。奥が深いだけに室内楽の雰囲気も深くなっていくかもしれません。
【上級者向け】 演奏時間:約4分 (N)

甘いデザートのような優しい響き…。(Fl.Hn.Pf.)

メル・ボニス(1858-1937)はフランスの女性作曲家で、300曲ほど作品を残しました。そのジャンルはピアノ曲、管弦楽曲、宗教的歌曲など、多岐にわたります。ボニスの才能を認めたフランクの手助けにより、彼女は1876年〜81年までパリ音楽院で学びました。この時期の在学生には、ピエルネやドビュッシーも名を連ねています。ボニスはフルーティストのフルーリーと親交が深く、「ソナタ」はフルーリーへ捧げられた作品として知られています。女性が作曲することを認めない、という当時のフランスの社会的背景から、本名は「メラニー」のところを「メル・ボニス」として出版していました。
この「森の情景」は1928年の作品で、「1. ノクチュルヌ」「2. 夜明けにて」「3. 祈り」「4. アルテミスのために」という4つの短い曲で編成されています。フルートとホルン、ピアノという一般にあまり見られない楽器編成で、幻想的な美しい作品。フルートとホルンのやわらかな響きで統一感が生まれる一方、音域の違いによる対比もあり、魅力的です。一つ一つの曲はおよそ3〜5分で、様々な演奏の場で気軽にお使いいただけるでしょう。この作品の、フルートとヴィオラ、ハープの楽譜も同じ出版社(Kossak/ID:23201)から発売されています。
【上級者向け】(YS)

新刊紹介(Pic.Tb.Pf.)

作曲者のヘンリー・クリング(1842−1918)はフランス生まれで、ホルン奏者として活躍しホルンの教則本なども残しています。それだけでなくオルガン奏者としても、また指揮者、作曲家としても精力的に活動しました。
この曲は、ピッコロを蚊に、低音楽器を象に見立てたユニークな曲で、ゆったりと動く象の周りを軽やかに飛び回る蚊をピッコロのヴィルトゥオーゾ風な華麗な技巧で表現しています。
いかにも19世紀後半のサロン音楽風の軽快で楽しい曲です。ピッコロでなくフルートでも演奏できますが、やはりピッコロのほうが対比が効いて面白いでしょう。低音楽器は、トロンボーン、ファゴット、チェロ、ユーフォニウムなどで演奏できます。お相手を見つけて楽しんでください。(でもフルーティストとしては、せめて蜂か小鳥にしてほしかったですね)
【中上級者向け】 演奏時間:約5分 (T)

フルートと歌のアンサンブル(Fl.Vo.Pf/Fl.Cl.Pf)

ビショップ(1786-1855)はイギリスの作曲家。舞台音楽の作曲家や指揮者として活躍していました。この曲はシェイクスピア劇の付随音楽として作曲されたものです。
Allegro non troppoの軽快なフルートのメロディから始まりそれに答えるようにソプラノが続きます。終盤ではフルートとソプラノのカデンツァがあり華やかに曲が締めくくられます。フルートと歌の掛け合いが爽やかな一曲です。歌のパートはクラリネットでも演奏ができ、また違った雰囲気を楽しめます。
【中級者向け】 (E)

オペラの中の二重唱(2Fl.Pf/Fl.Vo.Pf)

フランスの作曲家ドリーブ(1836-1891)は主に歌劇やバレエ音楽の作曲を行い、主要な作品はバレエ音楽「コッペリア」、「シルヴィア」などが挙げられます。歌劇「ラクメ」は上演される事が少ないようですが、「ラクメ」の劇中に歌われる「花の二重奏曲」はCMソングやサウンドトラックに起用されるなど人気が高く、多くの方が耳にしたことのあるメロディではないでしょうか。
歌劇「ラクメ」の舞台は19世紀、イギリス植民地時代のインド。高僧ニラカンタはイギリス統治に憤りを感じ、ヒンドゥー教徒達とイギリスから独立できるように祈りを捧げます。そんな中、聖域であるバラモン寺院の敷地にイギリス人将校・ジェラルドが誤って侵入し、高僧ニラカンタの娘・ラクメと出会い、二人は恋に落ちていきます。二人の恋の行方が気になりますが・・・。
この「花の二重奏」は、第1幕に高僧ニラカンタが町の祭祀に出掛け、残されたラクメと侍女マリカがジャスミンとバラの花が咲く小川で、綺麗な花と小鳥に囲まれて歌う二重唱です。二人のハーモニーから始まり、それぞれのソロを歌い、再び二重唱へと戻ります。ちょっぴり異国風なメロディと美しいハーモニーが魅力的で、演奏する人も聴く人も心地よい気分になります。
ご紹介するバクストレッサー編では、2本フルート・ピアノだけではなく、歌(1st)・フルート(2nd)・ピアノで演奏できるように歌詞付きで出版されています。
演奏時間は約4分弱。サロンコンサートやアンコールでの演奏もいいですね。歌手になった気分で美しい二重唱、いや二重奏を皆さんも楽しんでください。
(TO)

見えない笛(Fl.Vo.Pf.)

『見えない笛』という何とも神秘的な題名の付いたこの曲は、とても不思議な魅力に溢れています。
フランスの文豪、ヴィクトル・ユーゴーの詩にサン=サーンスが曲を付けました。ピアノとフルートに誘われるように歌が始まり、しっとりと語りかけるような旋律が流れる幸福感に満ちた音楽です。
この曲は、Leon Fontbonneというフルーティストに献呈されています。この方は現在も度々来日しておなじみのフランスの名門吹奏楽団Garde Republicaneに所属していた方で、一番フルートを吹いていたようです。サン=サーンスとの関係についてはよく分かりませんが、親交があったと思われます。
今回ご紹介するのはフルート、歌、ピアノの編成ですが、サン=サーンスは30年前(1855年)にもソプラノ、バリトン、ピアノで同じ詩を使って曲を書いています。さらに、カプレ、ゴダール、ピエルネらもこの詩に音楽を付けています。(カプレの楽譜はこちら→ID:7643
当時、文化人としてだけではなく、政治家としてもフランス国民の英雄的存在であったユーゴーは、音楽家達にも大きな影響を与えたようです。

Viens! - une flûte invisible
Soupire dans les vergers.-
La chanson la plus paisible
Est la chanson des bergers.

Le vent ride,sous l'yeuse,
Le sombre miroir des eaux.-
La chanson la plus joyeuse
Est la chanson des oiseaux.

Que nul soin ne te tourmente.
Aimons-nous! aimons toujours!-
La chanson la plus charmante
Est la chanson des amours.

約130年前に書かれた大文豪の愛の詩。美しいメロディーと共に味わってみてはいかがでしょうか。
【中級者向け】 演奏時間:約3分 (U)

4人でブランデンブルグ協奏曲第5番(Fl.Vn.Vc.Pf)

大小様々な編成で書かれたバッハの名曲、6曲の「ブランデンブルグ協奏曲」の中でも小さな編成の第5番は、チェンバロ、フルート、ヴァイオリンのコンチェルティーノ(独奏楽器)と、ヴァイオリン(1)、ヴィオラ、チェロ、ヴィオローネ(コントラバス)のリピエーノ(総奏)という第2ヴァイオリン無しの7パート(7人)で演奏される協奏曲です。これをさらに小編成にして演奏の機会を増やそうとしたのがこの楽譜で、途中でのカットなどは一切ありません。
バッハの作品の多くは、どのパートもそれなりの重要な意味を持っている場合が多く、この作品もその例外ではありません。この曲の場合、チェンバロのパートは特に難しいので、ほぼ原曲のままです。この楽譜はその代わりに、フルート、ヴァイオリン、チェロの3つの楽器は本来のパート以外に、外した楽器の重要な音をそれぞれ吹いたり弾いたりして穴埋めをする形で編曲がしてあります。原曲をよくご存じの方は吃驚されることも多いかと・・・。特にチェロは大活躍することになりますが、この名曲を少人数で演奏できるのですから頑張りましょう。ただし間違っても、もとの編成で演奏する時にこのパート譜を持って行かないようにして下さい。あちこちから睨まれることになります。
その他、この楽譜では校訂者の解釈でリズム処理などの記譜を変えたりしているところがあるので、原譜に当たっておくのも良いかも知れません。
バッハの名協奏曲をたった4人で演奏できる便利な楽譜です。そのためお値段はちょっと張りますが・・・
  【中・上級者向け】(SR)

忘れられた19世紀フランス・オペラ10 (Fl.Vn.Vc.Pf)

19世紀フランス・オペラのシリーズ最終回は、第1回のマイアーベーアと並ぶグランド・オペラ(グラントぺラ)の作曲家、ジャック・アレヴィで締めくくることにいたします。アレヴィは現在、グノーやビゼーらの師匠ということで名を残していますが、代表作である《ユダヤの女》の他にはほとんど聴く機会がありません。ポップの編曲においてもこのオペラのアリアを中心に取り上げています。
オペラが全盛を誇った19世紀前半のフランスにおいて、もっとも豪華絢爛だったのがグランド・オペラでした。歴史スペクタクルとして、歌手、衣装、舞台装置、管弦楽、全てにおいて大掛かりな出し物で、4ないし5幕からなり、バレエを含み、台本は全て歌われる長時間の上演でした。帝政、復古王政の宮廷文化や、新興ブルジョワジーの台頭による資金面の援助が可能にした芸術ジャンルであり、現代の興行ビジネスとしては、採算を取るのが難しい非常に贅沢なものです。そして録音再生装置の無かった当時、オペラ音楽を手軽に楽しむ方法の一つが室内楽編曲をサロンや家庭の中で演奏することでした。今回取り上げるポップの編曲も「サロン用四重奏曲」のタイトルでシリーズ化されて発売された楽譜の一つです。現在入手可能なものには、シューマン(楽譜 ID:23101)、メンデルスゾーン(楽譜 ID:23104)、ウェーバー(楽譜 ID:23102)、マイアーベーア(楽譜 ID:23100)があります。
《ユダヤの女》のあらすじをごく短くまとめると、ローマ近郊に住むユダヤ人のエレアザールが若かりし頃、ブロニ伯爵から迫害を受け町から追放されます。その後ナポリ人によってローマが襲撃され、火事の中から生き残った女の子をエレアザールが見つけ、養子として引き取りました。実は彼女はブロニの娘でラシェルと名付けられ、サミュエルという若者と恋に落ちます。彼はキリスト教徒の王子で、宗教上許されざる関係であったため、ラシェルは父ともども死刑を宣告されてしまいました。とうとう執行の時刻となり、釜茹での刑の大釜の中で油が煮えたぎっています。ラシェルが大釜に向かう中、ブロニがエレアザールに生き別れの娘の居場所を問い詰めると、彼は大釜を指差して「あそこだよ!」と告げ、自身も後に続き、ブロニが絶望してひざまずく中、幕が下ります。
(2022年12月記)(M.N.)

忘れられた19世紀フランス・オペラ1→楽譜ID:26347(ボルヌ/「アフリカの女」による華麗なファンタジー )
忘れられた19世紀フランス・オペラ2→楽譜ID:30704(ドップラー/オペラ・フェイヴァリッツ 第2巻 )
忘れられた19世紀フランス・オペラ3→楽譜ID:26588(タファネル/「ニヴェルのジャン」によるファンタジー)
忘れられた19世紀フランス・オペラ4→楽譜ID:24355(サン=サーンス/パヴァーヌ&夕べの夢 )
忘れられた19世紀フランス・オペラ5→楽譜ID:25608(タファネル/「フランチェスカ・ダ・リミニ」によるファンタジー(ベルノルド編))
忘れられた19世紀フランス・オペラ6→楽譜ID:24046(マスネ/バレエ組曲「ル・シッドより」)
忘れられた19世紀フランス・オペラ7→楽譜ID:20970(グノー/「ロメオとジュリエット」(グノー)によるファンタジー 第2番)
忘れられた19世紀フランス・オペラ8→楽譜ID:30070(ビゼー/耳に残るは君の歌声(歌劇「真珠採り」より))
忘れられた19世紀フランス・オペラ9→楽譜ID:27579(ボワエルデュー/曲集「バグダットの回教国の王」より )
忘れられた19世紀フランス・オペラ10→楽譜ID:23103(アレヴィ/サロン風四重奏曲 (アレヴィ) )

ヴィオラ・ダ・ガンバかチェロの上手なお友達がいる方へ(Fl.Vn.Vdg.Bc/Fl.Vn.Vc.Bc)

テレマンが自伝の中で「フルートのブラヴェ氏、ヴァイオリンのギニョン氏、ガンバ奏者のフォルクレ氏、チェロのエドワール氏といった人たちによって、描写し得る言葉が見つからないほど素晴らしく演奏された」と書いた四重奏曲が「6つのパリ四重奏曲」です。もともと自らトリオ・ソナタの作曲に自信を持っていたテレマンの、あまたのトリオ・ソナタよりさらに上を行く傑作がこの6曲と言っても過言ではありません。
フルート、ヴァイオリン、ガンバまたはチェロという3つの楽器の絶妙なバランスと、それぞれの楽器の特徴を良く生かしたソロ、そしてそれらを支えながらも雄弁な通奏低音。どの曲ひとつとっても傑作というしかありません。
普通であれば、演奏頻度などからしてイ短調の第2番、あるいはニ長調の第1番をご紹介するところですが、今回はあえて第6番のホ短調(楽譜の表記は訳あって12番となっています)。6つの楽章でできていますが、全6曲の中でも特に深みがある曲で、リズム(特に5楽章のシンコペーションは印象的)の面白さや、緊張感と迫力に事欠かない名曲です。
(SR)

縦笛と横笛(Rec.Fl.Bc/Fl.2Rec.Bc)

リコーダーはバロック時代を通じて愛好された楽器でした。イタリアでは“フラウト”と言えばリコーダーを指し、横のフルートは“フラウト・トラヴェルソ(横笛)”、イギリスでは“コモン・フルート”と呼ばれた、つまり常識的な普通のフルートはリコーダーのことで、横笛はやはり“トランスヴァース・フルート(横笛)”“ジャーマン・フルート”などと呼ばれていたのです。その好みがはっきりと横笛に移行していったのは、ちょうどバロック後期から古典派の時代にかけてでした。そのため、バロック後期にはリコーダーとフルートを使って、それぞれの特徴を面白く聞かせる室内楽の名曲がいくつか残されています。

■クヴァンツは、みなさんよくご存知の、バロック時代のフルートの名手で、ドレスデンの宮廷からベルリンに移り、プロイセンのフリードリヒ大王のフルートの先生としても活躍しました。緩‐急‐緩‐急の4楽章からなるこのハ長調のトリオ・ソナタは、アルト・リコーダーとフルートがまったく対等に書かれていて、明るく軽快でありながら迫力もある名曲です。音域的にはフルート2本でも演奏可能ですが、リコーダーとフルートで演奏した方が、高い演奏効果が得られます。同じ曲がアマデウスからも出版されています。(楽譜ID:15816)
■ファッシュは1688年に生まれ、1758年に亡くなったドイツの作曲家で、1722年以降ツェルプストの宮廷楽長を務めました。若い頃、ライプツィヒのトーマス学校で学び、テレマンから多くの教えを受けています。この曲も緩‐急‐緩‐急の4楽章からなり“ソナタ”となっていますが、本来は“協奏曲”といってもいい作りになっています。ヴァオリン2本の代わりになる2本のアルト・リコーダーが美しい響きを作りながら“トゥッティ”を演奏する上に、フルートが華やかなソロを展開します。この曲も音域的にはフルート3本でも演奏できますが、リコーダーのパートはフルート以外の楽器の方がクヴァンツのトリオ・ソナタ以上に効果的で、ヴァイオリンなどにも向いています。
(SR)

縦笛と横笛 その2(2Fl.Rec.Bc/2Fl.2Rec.Bc)

リコーダーはバロック時代を通じて愛好された楽器でした。イタリアでは“フラウト”と言えばリコーダーを指し、横のフルートは“フラウト・トラヴェルソ(横笛)”、イギリスでは“コモン・フルート”と呼ばれた、つまり常識的な普通のフルートはリコーダーのことで、横笛はやはり“トランスヴァース・フルート(横笛)”“ジャーマン・フルート”などと呼ばれていたのです。その好みがはっきりと横笛に移行していったのは、ちょうどバロック後期から古典派の時代にかけてでした。そのため、バロック後期にはリコーダーとフルートを使って、それぞれの特徴を面白く聞かせる室内楽の名曲がいくつか残されています。今回は「その2」として、前回ご紹介できなかった2曲をご紹介します。

■テレマンは1733年にハンブルクで「ターフェルムジーク(食卓の音楽)」という曲集を出版しました。これは宮廷や、市の行事で行なわれる饗宴のときに演奏するためのもので、管弦楽組曲、四重奏曲、協奏曲、トリオ・ソナタ、ソロ・ソナタ、はじめの管弦楽と同じ編成による終曲の5種類の編成による3つの曲集からなっています。今回ご紹介する曲は、その中の第2集の四重奏曲です。アルト・リコーダー1本とフルート2本に通奏低音がつくもので、縦・横のフルートを使ったこの手の曲の中でも特に優れた名曲です。リコーダーのパートはファゴットによる演奏も可能で、ベーレンライター版にはそのパートも付いています。1、3、4楽章は3つの楽器が対等に、しかし部分的にはそれぞれの特徴を生かしながら演奏出来るように書かれており、2楽章は2本のフルートが協奏曲のトゥッティ役割りをする上にリコーダーがソロを展開する迫力と変化に富んだ作品です。フルート3本でもよく演奏されるようですが、本来の編成の方が演奏効果が上がる曲です。
■バロック時代の後期にはベルギーにルイエという作曲家が少なくとも3人居てすべて木管楽器の演奏家兼作曲家として活躍しました。ロンドンで活躍したために“ロンドンのジョン”と呼ばれるジャン=バティスト・ルイエ(1680〜1730)、その弟ジャック(1685〜1748)、そして従弟で同名のジャン=バティスト(1688〜1720頃)はジョンと混同するため“ガン(またはヘント)のルイエ”と呼ばれています。この五重奏は原譜のタイトルに「ルイエ氏のソナタ」としか書いていないため、確定的なことは分かりませんが、“ガンのルイエ”の作品とされることが多いようです。曲は2本の“ヴォイス・フルート(D管のテナー・リコーダー)、2本の横のフルートと通奏低音のために書かれています。それぞれ2本の種類が異なるフルートがセットで美しい響きを作りながら進行していくシンプルな作りの曲です。普通のアルト・リコーダー2本での演奏を考える場合、第2リコーダーに2箇所、本来の最低音Fより半音低いEの音が出てくるため足部管の下の穴を膝で半分ふさぐなどの荒技が必要になります。短3度上のニ短調に移調した楽譜がAmadeus社から出版されています。
(SR)

縦笛と横笛 その3(Rec.Fl.Pf)

以前2回に分けてバロック時代から古典派の時代に移り変わる時期に作られた、リコーダーとフルートを両方使った室内楽をご紹介しましたが、今回はその3回目として、決定的な名曲をご紹介します。
作曲者はテレマン、曲は「リコーダーとフルートのための協奏曲 ホ短調」です。あらゆる楽器のために、見事な作品を数多く残したと言われるテレマンの代表作のひとつです。この2つの楽器は同じ笛属で、発音原理もよく似たリコーダーとフルートですが、音の立ち上がりや響きの構造は微妙に違います。この近くて異なる2つの楽器の違いを絶妙に使い分けたこの曲は、4つの楽章からできています。弦楽器と通奏低音による大変シンプルな伴奏に乗って、流れるような16分音符の音形が美しい第1楽章のラルゴ。リコーダーとヴァイオリン、フルートとヴァイオリン、リコーダーとフルートなど様々に組み合わせを変えながら緊張感あふれる音楽をつくりあげていく第2楽章アレグロ。弦のピチカートの伴奏に乗って2本の笛がよく歌う第3楽章ラルゴ。この楽章の冒頭と末尾は弓を使っての弦楽器の和音で構成されているのでここでは弦楽器か通奏低音による即興的な装飾がほしいところです。第4楽章のプレストは、テレマンが得意としたポーランド風の音楽。迫力あるトゥッティと2本の笛のソロのやりとりは全曲の終わりにふさわしい迫力を持っています。
(SR)

フルートとチェンバロが独奏楽器のトリオ・ソナタ?!(Fl.Cemb.Bc.)

自ら「トリオ・ソナタの作曲には自信がある」豪語していたテレマン。確かに彼のトリオ・ソナタは150曲近くがカタログに載っています。その中には様々な楽器の組み合わせがありますが、これはその中でも変わり種。普通は通奏低音を受け持つチェンバロが独奏楽器として使われているのです。
「なーんだ、それならJ.S.バッハのロ短調のソナタなんかもその形じゃないの」
と思ったアナタ、おしいっ! これは同じではないのです。チェンバロの左手とは別に通奏低音が付くのです。つまり、演奏するときはフルート、独奏用チェンバロ、通奏低音(チェロとチェンバロなど)になるのです。なんと派手な曲でしょう! そして贅沢な! もっともそこまでギャラが払えない方は通奏低音はチェロだけ雇っても何とかなるかも・・・。
テレマンの「音楽練習帳」の中の1曲で、この曲集にはこの形の曲があと3曲、リコーダー用、オーボエ用、ヴィオラ・ダ・ガンバ用がありますが、この編成いずれにしても珍しいものです。派手好きな方、珍しい物が好きな方、賑やかに演奏したい方、そしてチェンバロを2台持っているアナタ、是非試してみて下さい。
【中・上級者向け】 (SR)

オーボエがいない!(Fl.Cl.Hn.Fg)

イタリアの作曲家ロッシーニ(1792-1868)は、『セヴィリアの理髪師』や『ウィリアム・テル』、『セミラーミデ』など生涯に39曲ものオペラを書き、同時代最高の作曲家として人気を博しました。宗教曲や室内楽曲なども手がけており、また美食家としても知られています。 そんなロッシーニの作品から今回は「木管四重奏曲」をご紹介します。
この作品はロッシーニがなんと12歳の時に作曲したもので、当初はヴァイオリン2、チェロ、コントラバスという異例な編成で書かれていました。その後ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロの通常の弦楽四重奏に編曲をして大成功を収め、それがきっかけとなりさらに編曲されたのが今回のフルート、クラリネット、ホルン、ファゴットの編成のものです。オーボエが入っていない木管アンサンブルは貴重ですね!
第1番から第6番まで、全曲通して快調なリズムに無邪気なカンタービレ…かと思えば技巧的な動きのあるフレーズも登場し、各楽器の魅力が存分に引き出されています。
【中級〜上級者向け】 演奏時間:第1番・第2番:約12分、第3番:約14分、第4番:約13分、第5番:約14分、第6番:約11分 (OY)

鳥のさえずりが聞こえてきます♪(Fl.Pf/Fl.4Hn)

フランツ・ドップラーは、19世紀に活躍したフルートの名手です。作曲家や指揮者、教育者としても成功を収めました。4歳年下でやはりフルートの名手だった弟カールとデュオを組み、ヨーロッパ各地でも演奏をして広く名声を博しています。
今回ご紹介する「森の小鳥」は、フルートと4本のホルン(またはピアノ、または足踏みオルガン)の伴奏による珍しい編成で、小鳥が歌っている様子をフルートが、穏やかな森の響きをホルンが奏でています。目を閉じて聴くとまるで森の中にいるような気分になりますが、演奏するとトリルや装飾音符、連符が多く、難易度は高めになっています。軽やかなメロディーが印象的で、フルートの良さが生かされたこの曲。のどかな森の風景を思い浮かべながら、小鳥のさえずりを表現しましょう!
【上級者向け】 演奏時間:約5分30秒 (OY)

木管五重奏のメドレー曲(Fl.Ob.Cl.Hn.Fg.)

木管五重奏によるクリスマス曲のメドレーです。
金管楽器によるファンファーレのような華やかな幕開けから、讃美歌と伝承曲へとつながり、美しくまとまっています。メロディは各楽器に散りばめられ、聴いている人も演奏者も飽きさせません。6曲のメドレーですが、一度は耳にしたことのある曲ばかりだと思います。5人で、クリスマスシーズンを盛り上げてください。
曲目は以下のとおり。
Joy To the World(もろびとこぞりて)〜Hark The Herald Angels Sing(天には栄え)〜It Came Upon the Midnight Clear(天なる神には)〜I Heard the Bells on Christmas Day〜We Three Kings(われらはきたりぬ)〜Angels we have heard on high(荒野の果てに)
【初級者向け】(B)

木管五重奏でダンス!(Fl.Ob.Cl.Hn.Fg.)

アゲイはハンガリー、ブタペスト出身の作曲家です。アメリカに移住して、ピアノ曲も残しています。
ご紹介する曲は5つの短い小品からなり、ポルカ、タンゴ、ボレロ、ワルツ、ルンバ と様々な舞曲が含まれています。シンプルな掛け合いではありますが、それぞれのダンスの特徴的なリズムが面白い作品です。また、5種類の楽器の個性も上手く引き出されており、聴く人を飽きさせません。
木管五重奏をあまり聞いたことがない方でも肩ひじ張らずにお楽しみいただけます。気の合う仲間と踊るように演奏してみてください!
【初・中級者向け】(U)

コミカルな木管五重奏の曲はいかがですか?(Fl.Ob.Cl.Hn.Fg.)

マルコム・アーノルド(1921-2006)は、映画「戦場にかける橋」の音楽を担当したことで知られるイギリスの作曲家で、伝統的な書法で親しみやすい音楽を書きつづけました。 ロンドン・フィルでトランペット奏者を務め、現役の時代から仲間のために優れた室内楽を多数残しており、この曲もその1つで、わかり易さとウィットに富んだリズムとメロディーが持ち味のユーモアに満ちた作品になっています。
Shanty(シャンティー)とは船員が仕事の調子に合わせて歌われたリズミカルな労働歌のことを意味します。「酔いどれ水夫をどうしよう」、「ボニーは兵士だった」、「ジョニー爺さんヒロに来い」の3曲からなり、7分程度の短い曲になりますが、それぞれが個性的で楽しく、聴いている方もリズムを刻みながら思わず口ずさみたくなるような陽気でコミカルな作品です。
【中級者向け】 演奏時間:約7分 (NS)

ルーマニア民俗舞曲(Fl.Ob.Cl.Hn.Fg)

バルトークはハンガリー最大の作曲家で、ハンガリーの農村などで民謡を収集しました。この『ルーマニア民俗舞曲』は、「棒踊り」「飾り帯の踊り」「足踏み踊り」「ブチュムの踊り」「ルーマニア風ポルカ」「速い踊り」の6曲からなっています。(ブチュムとは、アルペン・ホルンに似た牧人の角笛です。)1915年にピアノ曲として作曲され、ヴァイオリンへの編曲で知られています。どのような踊りなのか想像しながら、また、踊っている様子などを思い浮かべながら、是非その雰囲気に浸って演奏してみて下さい。きっとバルトーク作品の“とりこ”になるはずです!こちらは木管五重奏用の版です。それぞれの楽器の音色などの特徴を引き立たせる編曲になっています。3曲目のみピッコロ持ち替えです。スコアとパート譜がセットになっていますので、使いやすいと思います。

弦楽四重奏曲を木管五重奏で(Fl.Ob.Cl.Hn.Fg.)

「ロシア5人組」のひとり、アレクサンドル・ボロディンの名曲「弦楽四重奏曲 第2番 ニ長調」の全楽章を木管五重奏用に編曲したものです。TVのCMでも使われていますので、耳にしたことがある方も多いと思います。全体を通して叙情豊かな優美な作品で、特に、第3楽章の「夜想曲(ノットゥルノ)」は単独でも演奏される機会の多い、メロディの美しい楽章です。この編曲では、イングリッシュ・ホルンとフルートがメロディを受け持ちます。
全4楽章。T.Allegro moderato、U.Allegro、V.Andante、W.Finale:Andante – Vivace
※クラリネットはA管で、オーボエはイングリッシュ・ホルンの持ち替えがあります。
【上級者向け】 演奏時間 約30分 (B)

あの素敵な弦楽四重奏曲を木管五重奏で!!!(Fl.Ob.Cl.Hn.Fg)

チェコの国民楽派の作曲家、ドヴォルジャークの在米中の代表作の一つ、弦楽四重奏曲 作品96「アメリカ」。 今回はモラゲス木管5重奏団のオーボエ奏者、ダヴィッド・ワルターが編曲した木管5重奏版の楽譜を紹介いたします。
ニューヨークのナショナル音楽院の初代院長に就任すべくアメリカに渡ったドヴォルジャークは、最初の夏季休暇をチェコからの移民が多く住んでいたアイオワ州スピルヴィルで過ごした事がきっかけとなり、この曲を書き上げます。2週間程で完成したこの曲は新天地アメリカで触れた黒人霊歌、インディアンの音楽と、持ち前のボヘミアの音楽を融合させた魅力溢れる名曲です。原曲は弦楽四重奏版ですが、木管五重奏版もそれぞれの楽器の個性を生かした素敵な編曲となっています。
第1楽章(ソナタ形式)、冒頭のヴィオラによる懐かしい雰囲気の5音音階による旋律はファゴットが受け持ち、その後にフルートが引き継ぎます。第2楽章(三部形式)ヴァイオリンとチェロが交互に切々と歌い上げる部分はオーボエとファゴットによって奏でられます。第3楽章(スケルツォ)こちらは第2トリオと続く主部の反復が省略されています。第4楽章(ロンド形式)導入部に続いてアウフタクトで始まる軽快な主要テーマはフルートで奏でられます。原曲とは違った木管五重奏ならではの響きで、ドヴォルジャークのあの親しみを感じるようなどこか懐かしい旋律を奏でてみませんか?
【上級者向け】 演奏時間:約20分 (NS)

ハンガリー舞曲(Fl.Ob.Cl.Hn.Fg.)

ハンガリー舞曲と言えばブラームスの作品が有名ですが、この曲はハンガリーの作曲家ファルカシュにより作曲されたものです。1943年にピアノ曲として作曲され、その後、弦楽四重奏やオーケストラなど様々な編曲版が作られました。この木管五重奏版は1959年の作です。ファルカシュはバルトークと同じようにハンガリーの民族舞曲の収集に情熱を注ぎ、この曲は17世紀のハンガリーで流行していた舞曲をもとにINTRADA(序奏)、LASSU(ゆるやかな踊り)、LAPOCKAS TANC(肩の踊り)、CHOREA(舞踏歌)、UGROS(跳躍の踊り)の5曲から構成されています。2分前後と短い曲ばかりですが、それぞれ特徴的な舞曲です。なお、フルートとピアノ版も出版されておりますので、「木管五重奏はメンバーが揃わないから・・・」とおっしゃる方は、是非ピアノ伴奏版(ID:19550)でお楽しみ下さい。
(I)

あの曲を、木五で!?(Fl.Ob.Cl.Hn.Fg)

今や知らない人はいない、と言ってもいいほどの人気曲、「ラプソディー・イン・ブルー」をなんと木管五重奏で演奏できる楽譜です。ピアノは入らず、通常の木五の編成でできるので、使いやすい編曲版です。この作品は「のだめカンタービレ」でも登場し、いっそう有名になりました。
作曲は1924年(管弦楽への編曲はファーディ・グローフェ)。同年の「近代音楽の実験」という演奏会にガーシュインが弾くピアノのパート譜の完成が間に合わず、本番当日にアドリブで弾いた、という話が残っています。また、一説によると、冒頭のグリッサンドが特徴的なクラリネット・ソロは、練習の合間に奏者がふざけて演奏していたものを採用したとか。このように自由な発想から生まれた作品は、時代を経てなお名曲として人々に愛されています。
この楽譜ではアドリブの部分も特に指定はなく、そのままでも演奏できますが、仲間と色々試してみるのも面白そうです。“木管五重奏ならではのラプソディー・イン・ブルー”を探求してみてはいかがでしょうか?
(YS)

美しい愛の歌です (Fl.Eh.Cl.Hn.Fg)

レイナルド・アーン(1875-1947)はベネズエラ・カラカス生まれのフランスで活躍した作曲家です。パリ音楽院で、マスネに作曲を師事しました。またサン=サーンスにも個人的に師事していました。最も有名な歌曲「私の詩に翼があったなら」は、『20の歌曲 第一集』の中の1曲です。今回ご紹介する「クロリスに」もよく知られた歌曲で、こちらは『20の歌曲 第二集』に収められています。詩は17世紀のフランスの詩人テオフィル・ド・ヴィオー(1590-1626)の作。美しいピアノの伴奏と心洗われるような優しい旋律が魅力です。3分ほどの短い曲ですのでアンコールにもおすすめです。もともとは歌詞があることを意識して演奏してみてください。
楽譜ID:15736は、フルート(またはオーボエ、ヴァイオリン)とピアノへの編曲。
楽譜ID:36603は木管五重奏(オーボエはイングリッシュ・ホルン、クラリネットはA管)への編曲で、モラゲス五重奏団のオーボエ奏者、ダヴィッド・ワルターによるものです。
【初・中級者向け】 演奏時間:約3分10秒 (B)

木管五重奏の名曲です!(Fl.Ob.Cl.Hr.Fg.)

ヒンデミットは1895年生まれのドイツの作曲家です。オーケストラの楽器ほぼ全てのためのソナタを作曲し、生涯で600以上の作品を残した多作家でした。作曲だけでなく、指揮者やヴィオラ、ヴァイオリン奏者の顔も持ち、1956年におこなわれたウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の初の日本公演では指揮者として来日しています。1938年、ナチスの迫害によりスイスへ亡命し、さらに1940年にはアメリカへ亡命しました。第二次世界大戦後スイスへ移り、1963年にフランクフルトで亡くなりました。
この曲は1922年に作曲されました。第1楽章「快活に。程よく速い四分音符」は、冒頭の旋律が繰り返し出てくるのが印象的で、各楽器の音色の特色を生かした快活な楽章。第2楽章「ワルツ。徹底的に静かに」はピッコロに持ち替え。他の楽器といかに音色が溶け合うかが腕の見せどころ。第3楽章「安らかに。そして簡素に」は、再びフルートに持ち替え。穏やかな旋律が印象的な楽章。第4楽章「速い四分音符」は、トゥッティとソロの部分が交代であらわれ、短いながらも各楽器の技巧が光る楽章。第5楽章「きわめて生き生きと」は、複数の楽器が同じ音形で動く部分が多いパワフルな楽章。
各奏者それぞれの技術だけでなく、アンサンブル能力も試される曲です。演奏会のプログラムに是非どうぞ☆
【上級者向け】 演奏時間:約14分 (I)

グリム童話が基になったオペラです(Fl.Eh.Cl.Hn.Fg/Fl.Ob.Cl.Hn.Fg)

グリム童話の「ヘンゼルとグレーテル」を基に、ドイツの作曲家、エンゲルベルト・フンパーディングが全三幕のオペラを作曲しました。1893年に初演されています。この『夕べの祈り』は、第二幕で、森の中でヘンゼルとグレーテルが眠りにつくときに、祈りを捧げる場面で歌われます。とても美しい旋律の曲で、前奏曲でも同じ旋律が使われています。
編成は、フルート、イングリッシュ・ホルン、クラリネット(B管)、ファゴット、ホルンですが、イングリッシュ・ホルンがない場合は、オーボエで代用できます。イングリッシュ・ホルンがある場合とない場合とで、編曲が少し異なります。クラリネットとホルンのパート譜は裏表で印刷されていますので、演奏する際にお気を付けください。※フルートとファゴットはどちらの編曲でも同じ譜面です。
演奏時間:約2分半 (B)

モーツァルトの最も有名な曲です。(Fl.Ob.Cl.Hn.Fg)

「交響曲第40番!?どんな曲だっけ??・・・知らないなー。」と思われる方でもきっとどこかで一度は耳にしたことがある曲だと思いますので、演奏会のプログラムとしてお使いになるほか、第1楽章だけ(もしくは別の楽章だけ)をアンコールで演奏するというのもいかがでしょうか?原曲通り、全楽章が編曲されています。
【中・上級者向け】 演奏時間:約26分 (I)

「木5」の新しいレパートリーにいかがでしょうか?(Fl.Ob.Cl.Hn.Fg)

この曲は1922年、ニールセンがスウェーデンのエーテボリ交響楽協会から客演指揮者として招かれていた時期に作曲され、同年の4月に完成しました。ニールセンと言えば1926年作曲のフルート協奏曲がよく演奏されますが、この曲もニールセン特有の茶目っ気のある世界が広がっており、魅力的な作品です。公開の初演はコペンハーゲンのオッド・フェロー・パレスの小ホールで行われました。
 第一楽章のアレグロ・ベン・モデラートはソナタ形式で書かれ、どこかとぼけたようなニールセンらしいモティーフがうつろっていきます。第二楽章はメヌエット、第三楽章はアダージョの序奏で始まり、続く彩りに富んだ11の変奏によって終わりを迎えます。変奏冒頭に登場する厳かで清らかな雰囲気の主題は、ニールセン作曲の聖歌集に含まれる「イエスよ、我が心を受けとめたまえ」に由来するものです。軽やかな印象はありますが曲としてはしっかりと構築されており、やりがいのある一曲と言えるのではないでしょうか。
(YS)

春のおすすめ(Fl.Ob.Cl.Hn.Fg)

フランス6人組を代表する、フランシス・プーランク(1899−1963)といえばフルートソナタが有名ですが、今回ご紹介する曲は木管5重奏の曲です。
この曲は1927年〜1928年に書かれたピアノ独奏曲「2つのノヴェレッテ」の1曲で、音楽好きの伯母リエナールに献呈されています。 木管5重奏への編曲者はジョフリー・エマーソン。 ノヴェレッテとは短編小説という意味があります。
簡潔、明快なスタイルで書かれ、シンプルで短い音楽ですがプーランクの個性が十分に刻印されており、詩的で優しい雰囲気をもつ美しい曲です。 春の訪れと共にこの季節にぜひ演奏していただきたい曲です。アンコール・ピースとしてもおすすめです。
【中級者向け】 演奏時間:約3分 (NS)

多くの人に親しまれるプッチーニの名曲です。(Fl.Ob.Cl.Hn.Fg)

プッチーニはイタリアのオペラ作曲家で、「ラ・ボエーム」「トスカ」「蝶々夫人」「トゥーランドット」など、今でも数多くの演目が上演されています。
この「私の大好きなお父さん」は、プッチーニ唯一の喜劇オペラ「ジャンニ・スキッキ」の中の1曲で、父親に結婚を反対されている娘が「お父さん、お願い」と訴える場面で歌われるアリアです。 親しみやすい旋律で、演奏会の演目として取り上げられる機会も多い曲です。携帯電話の着信メロディにもなっています。
今回ご紹介するのは、木管五重奏用に編曲された楽譜です。演奏会の演目として、またアンコールなどにいかがでしょうか。
(I)

あの名作を演奏してみませんか?II(Fl.Ob.Cl.Hn.Fg)

こちらの楽譜も「サウンド・オブ・ミュージック」のアレンジです。編成はフルート、オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットの木管五重奏。フルートアンサンブル版(ID:14431)とは編曲者が異なりますので、使用している曲やアレンジが全く違いますが、同じように“Fine Ending”と“To Continue”が用意されており、曲の長さを変えることが出来ます。フルートアンサンブル版とはまた違った演奏を聴かせてみませんか。
(B)

ジャズとクラシックの融合(Fl.Ob.Cl.Hn.Fg)

古典的な4楽章構成の曲です。この曲でも3楽章に「rhythm & blues feel」と指定があるようにジャズなどの語法を取り込んだスタイルで、イングリッシュ・ホルンやB管、バス・クラリネットへの持ち替えがあります。また、ファゴットは他の旋律楽器と同様の動きがあり、ホルンも高い技術を要するハードな曲です。
演奏時間:約20分

星条旗よ永遠なれ(Fl.Ob.Cl.Hn.Fg)

1854年〜1932年アメリカ出身・作曲家・指揮者。 スーザは、100曲以上の行進曲を作曲したことからマーチ王と呼ばれるようになりました。 スーザの曲といえば、『雷神』、『自由の女神』、『ワシントン・ポスト』、といった曲が、吹奏楽で盛大に演奏されますが、その中でも特に有名なのが『星条旗よ永遠なれ』でしょう。 この曲を、ぜひ木管五重奏で演奏してみてはいかがでしょうか。
とても名曲すぎるがゆえに、吹奏楽と比べて多少音の響きや厚み等で物足りなさがでてしまうかもしれませんが、個人個人の楽器が大いに活躍し楽しめる作品です。 演奏時間:約5分程度(M)

タファネルの世界を木管5重奏で!!(Fl.Ob.Cl.Hn.Fg.)

タファネル(1844-1908)といえば、まず「17の日課大練習」(ゴーベールとの共著)が思い浮かぶのではないでしょうか。他にも、「ファンタジー」、「アンダンテ・パストラルとスケルツェッティーノ」、「『魔弾の射手』によるファンタジー」など数多くの素晴らしいフルート作品を書いていますが、作曲家、フルーティスト、指揮者、指導者だけではなく、1879年に管楽器のための室内楽協会を設立し、新作の初演やモーツァルトやベートーヴェンなどの過去の作品の発掘にあたり、管楽合奏曲のさらなる発展のきっかけをもたらしたといわれています。
今回ご紹介するのは、そんなタファネルが作曲した木管5重奏曲ト短調です。3楽章編成で、印象的な旋律から始まるソナタ形式の1楽章は、対照的な2つの主題が進行していきながら、各パートのそれぞれの役割が流れるように変化していくのがとても魅力的です。そして叙情的なホルンの旋律から始まる2楽章。カンタービレの美しい旋律は木管アンサンブルならではの温かみのある響きをお楽しみいただけることでしょう。フィナーレの3楽章はロンド形式で躍動感あふれるイタリアの舞曲サルタレッロのリズムにのって進んで行き、最後はト長調で華やかに締めくくられます。木管5重奏の魅力がぎゅっと詰まったこの曲、演奏会にいかがでしょうか?
【上級者向け】 演奏時間:約25分 (NS)

魅力的な木管五重奏の小品(Fl.Ob.Cl.Hn.Fg.)

ツェムリンスキー(1871-1942)はポーランド系のオーストリアの作曲家、指揮者、音楽教師であり、 その名前は現代音楽の教祖のアルノルト・シェーンベルクの師として知られています。作曲家としてはほとんど知られていませんが、7曲 のオペラと喜歌劇、バレエ、劇音楽などを残しており、シェーンベルクは「ワーグナー以降の作曲家で、彼以上に優れた音楽的実質を伴って、劇場の要求を満足させることができた作曲家を私は知らない。」と言っています。
木管五重奏のための「フモレスケ」はナチスの迫害を恐れて1938年にアメリカに亡命し、生活の糧を得るために制作した「2つの学習用室内楽曲」の1曲です。学習用に書かれた作品で、5分程度の小品ですがしっかりとした構成で木管アンサンブルの楽しさを味わう事ができる素敵な作品です。
【中級者向け】 演奏時間:約5分(NS)

変奏が楽しい六重奏曲です♪(Fl.Ob.Cl.Hn.Fg.Pf)

ドイツの作曲家であり、指揮者としても活躍したテオドール・ブルーマーの六重奏曲をご紹介いたします。この作品は主題と7つの変奏曲で構成されています。
穏やかな情景が浮かぶ、ゆったりとした雰囲気が特徴の主題で曲は始まります。冒頭は管楽器の五重奏でピアノは登場しません。この主題が、後の7つの変奏で様々な曲調に変化します。(各変奏曲に組曲のような題名が付けられています。)
第一変奏は「Improvisation(即興曲)」と題し、ピアノの独奏曲で、流れる優美な和音が印象的な変奏です。
第二変奏以降は、各楽器が一曲ごとに主旋律を担当します。第二変奏曲の主旋律はフルートで奏でられ、第一変奏の曲調とは一変して「Capriccio(とても生き生きと、快活に)」と題した軽快で楽しい曲です。明るい雰囲気が特徴の変奏で、フルートらしい華やかな音色を味わえます。
第三変奏から、オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットが順に各変奏曲の主旋律を担当し、第七変奏の「Finale(終曲)」でクライマックスを迎えます。
主旋律を担当するそれぞれの楽器の特色が、曲の雰囲気から伝わってきます。また調性やリズムの面白さもあり、どの変奏も馴染みやすい曲調ですので、奏者も聴衆も楽しみながら聴くことのできる作品です。演奏会プログラムの一曲として、取り入れてみてはいかがでしょうか。
(CM)

フルート奏者あこがれの一曲を木管アンサンブルで。(Fl.Ob(Eh).Cl.Hn.Fg.Pf.)

ドビュッシーの残した名曲の中でも特にフルート奏者にとって重要な作品「牧神の午後への前奏曲」。フルートをやっているからには一度は吹いてみたい!という方も多いのではないでしょうか? ただ、学校や所属オーケストラなどでは、なかなか演奏する機会が得られないこともありますよね。「吹きたいけれど、フルートとピアノだけでは物足りない……」というあなたにご紹介したいのが、こちらの楽譜です。木管五重奏とピアノの編成は、オケの響き…とまではいかなくても、各楽器の響きの重なりや個性を活かして、幅広い表現をすることができます。モラゲス五重奏団のオーボエ奏者ダヴィッド・ワルターによる編曲です。
「牧神の午後への前奏曲」は、フランス近代の詩人マラルメの「半獣神の午後」という詩から発想を得て作曲され、ドビュッシーがローマ大賞を獲得した10年後の1894年に初演されました。ギリシャ神話に登場する牧神は醜い容姿だったと言われますが、まどろみや繊細な心情を表現するような、美しい作品です。この曲を基盤にして、ニジンスキー(ロシアのバレエ・ダンサー)によって振り付けされたバレエ「牧神の午後」も存在し、こちらは1912年に初演されました。詩から音楽、バレエへとその表現方法を広げていった歴史も面白く、演奏へのインスピレーションが広がりそうです。
(YS)

暗くなったらビヤホールに行こう〜(Fl.Ob.Cl.Hn.Fg.Pf)

この曲ほど曲想と日本語のタイトルが一致していない音楽も少ないのではないでしょうか。
調べてみると、原題のHEUREは「時間」でBERGERは「羊飼い」ですから、そのまま「羊飼いの時間」と訳したり、多くは「恋人たちのたそがれ」「恋人の黄昏時」などで、さらに「安らぎの時間」としている例もあります。恋人達がたそがれてしまうと具合が悪いことになりますし、なんで突然「恋人」「黄昏」なんて出てきたのだろうとの疑問を持つ方もおられるのでは?
バロック時代に題材としてよく使われた「忠実な羊飼い」もそうですが、ギリシャ神話以来、羊飼いは「恋人」の代名詞のように使われるようになりました。「恋人たちの時間」、つまり恋人たちにとって都合の良い時間は、薄暗くなって誰だか見分けにくくなる黄昏(誰そ彼)時ということで、フランス語の「L’HEURE DU BERGER」はまさに「たそがれ時」という意味があります。音楽を愛する方々がタイトルにロマンティックな味付けをしたくて「恋人」と「黄昏」をくっつけてしまったようです。
この曲の副題は「ビヤホールの音楽」です。“黄昏時から賑わい出す飲み屋”を音楽で表現したものと考えられ、3つの楽章も「めかし込んだ老人たち」「ピンナップ・ガール」「とんがった若者たち」と、騒々しく猥雑でそれでいて楽しい高揚感のある酒場の情景が活写されているようです。フランセらしい、機知に富んだ音楽を楽しんで下さい。
原曲は1947年にピアノと弦楽オーケストラのために作曲され、この版は1972年にフレデリクK.ヴァネクによりフランセの許可を得て編曲されています。
(SR)

イギリスの木管6重奏曲はいかがですか?(Fl.Ob.Cl.Hn.Fg.Pf)

ゴードン・ジェイコブ(1895−1984)はロンドンの王立音楽大学で教鞭をとり、管弦楽法の理論書なども残した20世紀のイギリスを代表する作曲家です。この曲は、ホルン奏者として名高いデニス・ブレインが率いる管楽合奏団と、ジョージ・マルコムのピアノによって、1956年4月30日に初演され、デニスの父親で、やはりホルン奏者であったオーブリー・ブレイン(Aubrey Brain)の思い出に捧げられたと言われています。全五楽章で、すべての楽章にオーブリーの名前の一部に由来する音、“A,B,E,B,A”という音列が出てきます。
第一楽章「悲しみの前奏曲」は冒頭部で重要な主題を管楽器がユニゾンで威勢よく提示し、ピアノは上記の音列を静かに奏でます。第二楽章は躍動的な「スケルツォ」。第三楽章は哀愁を漂わせる「行列」。第四楽章は古典的な部分とモダンな雰囲気を持つ「メヌエットとトリオ」。そして最終楽章「エピローグを伴ったロンド」は、各楽器の機能をフルに発揮させた対話風の音楽がひとしきり続いた後、第一楽章の冒頭の主題から派生したメロディーをホルンが繰り返すうちに、音楽はやがて消えていきます。フルートはピッコロに、またオーボエはイングリッシュホルンに持ち替える楽章もあり、すべての楽章がそれぞれの楽器の魅力溢れる曲になっています。
【中・上級者向け】 (NS)

あなたの「青春」は?(木管六重奏[Fl(Pic).Ob.Cl.Hn.Fg.B-cl])

「青春」と聞いて、何を思い浮かべますか? わき目もふらず何かに打ち込んだ日々や、まだ見ぬ未来へ抱いていた希望と不安、切ない恋の思い出……。また、青春の只中で素晴らしい日々を送っている方もいるでしょうし、青春ならではの悩みと日々向き合っている方もいることでしょう。
19世紀後半から20世紀前半にかけて活躍したチェコの大作曲家レオシュ・ヤナーチェク(1854-1928)にとっての「青春」は、彼が10代の頃(11歳から15歳)に聖歌隊員として過ごした少年時代の思い出だったようです。この作品の第3楽章は、この曲が作られる少し前(1924年の5月半ば)に作曲された「青服の少年たちの行進曲」という曲の楽器編成を変えた改作となっています。「青服の少年たち(=Modráček)」とは、彼が所属していた聖歌隊の隊員のことを指す言葉です。組曲「青春」は、それが明らかな第3楽章だけでなく、全体を通して彼の少年時代の思い出を曲にした作品と考えられています。
さて、この組曲「青春」が書き上げられたのはいつだったのか。それは、1924年の7月、なんと彼が70歳を迎えた誕生月のことでした。それも、書きかけだった歌劇「マクロプーロス事件」の作曲を一時中断までして! ……実は「青春」は、彼が誕生日を祝う行事のために故郷フクバルディに滞在し、そこで書かれたバースデー・ミュージック(?)だったのです。この頃の、彼の“元気な”エピソードも残っているようですが、組曲「青春」もまた彼のみなぎる生命力をそこに感じられるような、輝かしく快活な作品に仕上げられています。いくつになっても青春、というのが良いかどうかは人それぞれでしょうが、活き活きとした青春のパワーを感じながら演奏するひとときを楽しんでみてはいかがでしょうか。
全4楽章/演奏時間:約16分30秒 (YS)

ロマンティックな管楽6重奏曲(Fl.Ob.Cl.Hn.Fg.Pf)

ルートヴィヒ・トゥイレ(1861-1907)はイタリアの出身でドイツで活躍した作曲家。彼は22歳の若さでミュンヘンのコンセルヴァトワールの作曲家の教授になり、多くの門弟を育てました。彼の代表作と位置づけられているこの作品は、結婚したばかりの最愛の妻エマに献呈され、初期の作品でありながらも、巧みな楽器法の手腕が存分に発揮されたリリシズムにあふれた作品となっています。親交が深かったリヒャルト・シュトラウスはこの曲を初めて聴いた後、とても感激しトゥイレを激励したといわれています。各楽器の絶妙なコンビネーションとバランス感覚が光を放ち、みずみずしくロマンティックな作品です。
※4楽章編成ですべて演奏すると30分程ですが、短めな3楽章だけ取り上げて、アンコールに演奏するのもおすすめです。
【上級者向け】 演奏時間:約30分 (NS)

木管九重奏の作品(Fl.2Ob.2Cl.2Hn.2Fg)

シャルル・グノーはフランスの作曲家。この曲は、1885年に作曲された管楽合奏のための作品です。フルートの名手でもあり、当時、フランスの管楽器室内楽協会の創設者でもあったP.タファネルから依頼を受け献呈された作品でもあります。
この曲の編成は、フルート(1)、オーボエ(2)、クラリネット(2)、ホルン(2)、ファゴット(2)の計9名で演奏される室内楽曲です。大きく4つの楽章にわかれており、演奏時間は約20分程度の作品です。フルート以外のパートは2人ずつで演奏されるため、曲全体の響きも管楽合奏のように深く厚みがあり、初めて耳にする方もとても聴きやすい作品だと思います。
特に第2楽章(Andante Cantabile)は、雰囲気を変えてフルートの美しいメロディーが優雅に流れる作品です。そのため、第2楽章のみフルートとピアノの編成で演奏することもあります。
ぜひ、この機会に違う楽器の方たちと一緒に管楽合奏を楽しんでみてはいかがでしょうか。
T.Adagio Allegretto U. Andante Cantabile V.Scherzo W.Finale
演奏時間:約20分 (M)

美しい女性に囲まれて・・・(Fl.Hp)

イギリス出身のウィリアム・オルウィンは、祖国でフルーティストと作曲家の二刀流で活躍しました。多才な彼は、ロンドン交響楽団のフルート奏者、そして英国王立音楽院で作曲の教授も務めました。オルウィンの作品は室内楽曲から交響曲に及び、ドキュメンタリー番組や映画音楽の為の作曲も数多く手がけました。作品には独自の十二音技法を用いて、繊細かつミステリアスな雰囲気を持たせています。
ライネッケ作曲の「ソナタ『ウンディーヌ』」やドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」、ムーケの「パンの笛」といった、ギリシア神話を題材とした作品はフルート吹きの皆様にはお馴染みですよね。
今回ご紹介する作品「ナイアデス」は、ギリシア神話に登場する「泉や川のニンフ(精霊)」を意味しています。全体にわたって美しい旋律が続く中で、時々怪しげな雰囲気や緊迫感のあるフレーズが見え隠れします。中盤には拍子が3/4のワルツに変わり、躍動感のあるパッセージが続きます。
ロマン派から近現代の楽曲を行き来するような、とても神秘的な作品です。演奏会のレパートリーとして是非お使いください。
【中・上級者向け】 演奏時間:約12分 (CK)

静かに、美しく輝く曲です。(2Fl.Hp)

フランス生まれ。ロマン派を代表する作曲家。表題音楽の創始者、ベルリオーズの代表作である「幻想交響曲」は特に有名な作品です。形式にとらわれない自由な管弦楽法は多くの作曲家に多大な影響を与えました。この曲はオラトリオ「キリストの幼時 Op.25 」の第三部で演奏される「二本のフルートとハープの為のトリオ」と題されており、信じがたいほど穏やかで、優美な曲です。ハープの代わりにピアノでも多く演奏されますし、チェンバロでも可能です。題材からクリスマスのコンサート等でも多く演奏されるようです。又、アンコール曲のレパートリーにもいかがでしょうか。
【中級者向け】 演奏時間:約7分 (Y/K)

フランス音楽の小品をお届けいたします(Fl.Hp)

ビュセールはパリ音楽院でフランク、ヴィドール、ギロー、グノーに師事しました。純フランス風な音楽をご賞味ください。この曲は当時のパリ、オペラ座の主席フルートソロ奏者、J.BOULZEに捧げられています。アンコール曲にもおすすめいたします。伴奏はピアノまたはハープになっておりますが、私はハープで演奏することをおすすめいたします。これらの曲を聴いていると、ブローニュの森を散策しながら、リスたちが楽しそうに遊んでいたり、白鳥が優雅に泳いでいる情景が目に浮かんできます。
(注、私はフランスに行ったことはありません) 
(Y)

フランスとアフリカ音楽の融合( Fl.Hp/Fl.Pf)

ジャン・クラ(1879〜1932)は、フランスの海軍士官として従事しながら作曲を続け、声楽曲や室内楽をはじめ様々な作品を残しています。音楽好きの両親に育てられた彼は、幼少期から音楽が大好きで、音楽の美しさに触れながら成長しました。アンリ・デュパルクから作曲を習い、海軍としてのキャリアを積み、作曲もあきらめることなく続けました。彼の作品は、海軍生活で訪れた国々の音楽が影響しており、今回ご紹介する作品も、西アフリカのパーカッションのパラフォンからインスパイアされて、1927年に作曲されました。
第1曲「Preambule」序奏。ハープのグリッサンドから始まり、フルートがハープの和音を受け継ぎ分散和音で奏でます。フランスの田園風景が思い浮かぶような優しく軽やかな響きが印象的です。
第2曲「Modere」モデラート。第1曲に続き、軽やかな舞曲風のメロディ。
第3曲「Assez lent」十分に遅く。音の動きが波のようで、中間部に向かって激しくなり、航海中の荒れた海のように揺れ動きます。交互に奏でる16分音符の刻みや、ハープの響きはパラフォンを連想させます。
第4曲「Danse a onze temps」11拍子のダンス。陽気で軽快なリズムをフルートの低音から高音まで使って演奏します。
この作品は、フルートとハープにために作曲されましたが、楽譜はピアノでも演奏できるように書かれています。ぜひ演奏してみてください。
【中級者向け】演奏時間:約15分(TO)

新刊紹介(Fl.Hp/Fl.Pf)

なんといってもフルートでも演奏される「ヴァイオリン・ソナタ イ長調」が有名なベルギー出身の作曲家フランクは、作曲だけでなくオルガニストとしても活躍していました。
「前奏曲、フーガと変奏曲」はもともとはオルガンのために作曲されたもので、彼の代表作の一つとされ、ピアノでもよく演奏されます。
タイトル通り三部からなり、前奏曲はアンダンティーノ・カンタービレ、ゆったりとした優美なメロディがどこかもの悲しげです。
フーガは荘厳なコラールからバッハを思わせるフーガ、変奏曲はアンダンティーノでアルペジオの伴奏が終始流れる中、前奏からのメロディの変奏が続きます。
今回ご紹介する楽譜では、マガリフが手を加え前奏曲の後にさらに即興的なパッセージを付け足し、フーガでは別の旋律を加え、変奏曲ではフルートの独奏曲を増やしているなど、オリジナルとはかなり異なるものになっていますが、全体的にゆったりととても美しい曲です。ハープとの演奏がおすすめですがピアノ伴奏でも可能です。なお弦楽伴奏版も出版されています
【中級者向け】 演奏時間:約15分 (T)

フルートだけではないフレンチ・スクール3

ハープというと豪華な装飾のついた王宮の調度品、というイメージがあるかもしれません。その優美なフォルムや音色から「楽器の女王」と呼ばれることもあります。これは、フランスのマリー・アントワネットがハープを嗜んだエピソードが知られていることもその理由の一つでしょう。そして彼女のハープを製作したのがハープ奏者で製作者でもあったジャン=アンリ・ナーデルマン、今回のフランソワ=ジョゼフの父でした。このハープはシングル・アクション・ペダル・ハープでまだ半音階が不自由でした。そして19世紀に入り、ピアノで有名なエラール社が1810年にダブル・アクション・ペダル・ハープを開発し、あらゆる調を演奏することができるようになると、コンサート楽器としての地位を確立し、多くの独奏曲が作曲され、オーケストラ内で効果的な使用がなされるようになります。
フランソワ=ジョゼフ・ナーデルマン(1781-1835)は1825年にパリ音楽院(コンセルヴァトワール)のハープ科の初代教授となった、ハープのフレンチ・スクールの祖と言っても良いでしょう。当時の名手J.-B.クルムホルツに師事した後、ハープ奏者として活躍しました。
《ノクチュルヌ》はやはり当時のフルートの名手であり、パリ音楽院の教授を務めたジャン=ルイ・チュルー(1786-1865)との共作によるヴィルトゥオーゾ小品です。華やかな序奏に続き、ロッシーニの歌劇《ウィリアム・テル》の第3幕第2場のチロル人の合唱のテーマによる素朴な中間部、軽快なロンドレットの3部構成です。それぞれ当時一流の奏者が作曲・監修しているので、それぞれの楽器の演奏効果が遺憾なく発揮されており、演奏会に花を添えてくれることでしょう。
ちなみに、チュルーが旧式の多鍵式フルートの擁護者であり、彼の退任後、初めてベーム式がパリ音楽院で採用されたように、ナーデルマンも旧式のシングル・アクョン・ペダルの擁護者で、彼の死去に伴う退任後、初めてダブル・アクション・ペダルが採用されたのは興味深いです。当時は機構が単純な代わりに、繊細な表現ができる楽器が好まれたのでしょう。
(2023年12月記) 【中級者向け】 演奏時間:約10分30秒 (M.N.)

フルートだけではないフレンチ・スクール1→楽譜ID:34035(デュヴェルノワ/三重奏曲 第1番)
フルートだけではないフレンチ・スクール2→楽譜ID:4843(バルボトゥー/スケッチ)

2本のフルートとハープの曲を紹介します(2Fl.Hp)

ゴーベールはフランス近代を代表するフルート奏者でもありますが、作曲と指揮の分野でも大変活躍し、フルートの作品を数多く残しています。
ハープ の奏でるリズムに乗って三度の和音を保ちながらゆっくりと流れて行く2本のフルートとのハーモニーは、ギリシャのどこまでも広がる真っ青なエーゲ海と白い建物が連なる風景を思い起こさせる一曲です。
(E)

トリオでイベールを(Fl.Vn.Hp/Fl.Vn.Cemb)

フルーティストにはおなじみのイベールの室内楽作品です。
今回ご紹介させていただく「2つの間奏曲」はフルートとヴァイオリンとハープの編成の曲です。ドンファンの物語を下敷きにした演劇“Le Burlador”の付随音楽として1946年に作曲されました。 フルート&ギター(or ハープ)で演奏される「間奏曲」はご存知の方も多いと思いますが、この「2つの間奏曲」は意外と知られていないのではないでしょうか。
1楽章(Andante espressivo)はゆったり流れるメロディとハーモニーが優雅でとても美しいです。2楽章(Allegro vivo)は1楽章とは対照的に、激しさの中にも異国情緒あふれる雰囲気が漂っています。 ハープに代えてピアノでも演奏可能です。演奏会や発表会で是非取り上げてみて下さい!
【中級者向け】 演奏時間:約7分30秒 (OU)

疲れたときの、この一曲。(Fl.Hp./Fl.Pf.)

ベルギーの作曲家ジョゼフ・ジョンゲン(1873-1953)の美しい小品です。1919年、第一次大戦の開始後に一家で移り住んだ英国の地で作られたとのこと。フルートとハープのための作品ですが、フルートとピアノの実用的な編成でも演奏できます。ゆったりと流れるような雰囲気で、繊細な和声の移りかわりやハープ(ピアノ)の上で響くフルートのメロディーが、とても魅力的です。ピアノと合わせる際も、ハープのきらっと輝くような音色を意識すると、より一層完成度が高まることでしょう。
ジョゼフ・ジョンゲンはベルギーのリエージュ出身。1897年にローマ大賞を受賞しました。同時代の作曲家にはフォーレ(1845-1924)、ダンディ(1851-1924)、リヒャルト・シュトラウス(1864-1949)、また新ウィーン楽派のシェーンベルク(1874-1951)、ヴェーベルン(1883-1945)などがいますが、ジョンゲンは比較的分かりやすい、フランス近現代の音楽に通じるような作品を残しています。フルートにも充実した曲をいくつか残している、興味深い存在です。
(YS)

今宵のメインディッシュに是非どうぞ。(Fl.Hp)

シャポシニコフはロシアの作曲家で、ストラヴィンスキーと同じ時代に活躍しました。 オペラ、バレエ、管弦楽曲、室内楽、ピアノ曲等、様々なジャンルの作品を残していますが、 なかなか取り上げられる機会が少なく、知る人ぞ知る作曲家になっているようです。
この曲はフルートとハープの持つ美しく、優雅で、はかなげな雰囲気が充分に表されています。 作曲者が一時期ロシア(旧ソ連)南部の民俗音楽の発展に力を入れていた事もあり、なんとなく民族的な印象も受けます。 フランス近代の様な明るく、華やかな作品とは一味違った、秘めた美しさを持つ曲です。 ピアノでも可能ですが、ハープでの演奏をおすすめします。 ハープと競演する演奏会のプログラムに是非加えて頂きたい一曲です!
T Andante con moto   U Allegretto   V Allegro molto
【上級者向け】 演奏時間:約12分 (U)

憧れのハープと(Fl.Hp/Fl.Pf/Fl.CD)

優しい響きを持つハープとフルートのアンサンブルはとても美しく、イベール、ドビュッシー、モーツァルト、武満徹など多くの作曲家が作品を残しています。
いつかハープと一緒に演奏してみたいと憧れる方も多いと思いますが、なかなか機会が得られないという方がほとんどではないでしょうか。
今回ご紹介する楽譜には、カラオケとしては珍しい、プロの演奏によるハープの伴奏CDが付属されており、どなたでもハープとの共演が実現できてしまう一冊となっています。
収録曲は、映画ミッションより「ガブリエルのオーボエ」やフォーレの「シシリエンヌ」、宇多田ヒカルの「First Love」など様々な音楽ジャンルから選曲されており、全16曲の中から気分によって選べるのが嬉しいポイントです。
また、ピアノでも演奏可能な伴奏譜と模範演奏CD(Fl.+Hp.)も付属されており、充実した内容の贅沢な楽譜となっています。是非フルートとハープの極上の音色をお楽しみください。
※CDに収録されている曲は全16曲中、12曲です。
【初・中級者向け】(HS)

ラテンのリズムにのって♪(Fl.Guit)

日本でもおなじみのギター・デュオ「アサド兄弟」は、その音楽性の高さや技術的な完璧さ、そして並外れた表現力の広さはあのピアソラを驚嘆させ、彼らのために「タンゴ組曲」を作曲した程です。セルジオ・アサドは自らこのデュオの編曲も担当し、さらに自作の曲も書いています。曲は単一楽章で、プレリュード風の曲頭、旋律的なアンダンテ、打楽器風のリズムで始まるモヴィード、フルートとギターの丁々発止としたかけ合いなどで盛り上がり、最後には初めのプレリュード風の部分が戻って終わります。全体を通して調性が目まぐるしく変わって行くのも特徴の一つです。ラテンの薫りを持ちながら、ピアソラ以上に斬新で、現代的な名曲と言えましょう。演奏には音楽性、リズム感の良さが求められ、技術的にもハードですが挑戦しがいのある曲です。
(SR)

ギターとのアンサンブル(Fl.Guit)

クラシック・ギターの世界的な人気デュオ「アサド兄弟」の一人セルジオが、同じブラジル出身でボサ・ノヴァの創始者A.C.ジョビンへのオマージュとして作った曲です。技術的にはそう難しくありませんが、ボサ・ノヴァ特有のリズムの揺れにうまく乗るのが面白い演奏の鍵でしょう。アンコール・ピースとしてもよさそうです。
【中級者向け】 (T)

ルーマニア民俗舞曲(Fl.Guit)

バルトークはハンガリー最大の作曲家で、ハンガリーの農村などで民謡を収集しました。この『ルーマニア民俗舞曲』は、「棒踊り」「飾り帯の踊り」「足踏み踊り」「ブチュムの踊り」「ルーマニア風ポルカ」「速い踊り」の6曲からなっています。(ブチュムとは、アルペン・ホルンに似た牧人の角笛です。)
1915年にピアノ曲として作曲され、ヴァイオリンへの編曲で知られています。どのような踊りなのか想像しながら、また、踊っている様子などを思い浮かべながら、是非その雰囲気に浸って演奏してみて下さい。きっとバルトーク作品の“とりこ”になるはずです!フルートとギターで演奏出来るように編曲された版で、ピアノ伴奏とは一味違った雰囲気が楽しめます。6曲の中からいくつか選んで、演奏会などのアンコールにもお使い頂けると思います。

『これって、ボザ・・・』(Fl.Guit)

今まであまりご紹介されていなかった、フルートとギターの編成をご紹介します。
この曲は、2つの楽章に分かれた約3分程度のとても短い作品です。
第1楽章:子守歌  まさに『子守歌』というタイトルから、ゆったりとした心地よいテンポで流れる音楽です。ボザの作品『イタリアン・ファンタジー』の一部分を抜粋した作品で、一度聴いたら忘れることの出来ない美しい旋律をもつ、春の季節にふさわしい暖かい感じの音楽です。
第2楽章:セレナーデ  第1楽章とは一味違った、さわやかな雰囲気をもつ音楽です。とても短い作品なため、 思わず口ずさんでしまうような印象深い作品です。
とても癒されるボザの作品、あなたのレパートリーの一つにぜひ加えてみませんか。
演奏時間:約3分(全2曲) (M)

新刊紹介(Fl.Guit)

作曲者のクリストファー・カリエンドは現代アメリカの作曲家・ギタリストで、タンゴやフラメンコなどを素材にしたワールド・ミュージックと呼ばれるジャンルで活躍しています。ギター音楽だけでなく、交響曲や室内楽なども書いていて、フルートの曲もたくさんある人気作曲家のひとりです。
この度ご紹介するのは、本人曰く「タンゴ・アダージョ」というもので、イタリアに住む自身の叔母が自分の人生を振り返る姿になぞらえたものです。
タイトル通りひっそりとした悲しみをたたえた哀愁のタンゴですが、中間部では甘い思い出に浸るような穏やかで優しげなメロディーも流れる、親しみやすく美しい曲です。
フルートもギターも技巧的には難しくありません。アンコールやちょっとしたサロンコンサートなどにも使えるでしょう。ギターとの新しいレパートリーをお探しの方におすすめします。
【中級者向け】 演奏時間:約5分 (T)

カステルヌォーヴォ=テデスコ!(Fl.Guit.)

カステルヌォーヴォ=テデスコ(1895−1968)はイタリア系ユダヤ人としてイタリアのフィレンツェに生まれました。スペインのギタリスト、アンドレアス・ゼコビアとの出会いをきっかけに、ギターの作品を生涯100以上も手掛けました。第2次世界大戦前にムッソリーニのファシスト政権から逃れアメリカへ亡命。ハリウットで映画音楽などを作曲するようになります。教え子にはヘンリー・マンシーニ、ジョン・ウィリアムズ、アンドレ・プレヴィンなどがいたそうです。
この曲はもちろんフルートとギターのオリジナルです。
フルート、ギターの巧みな掛け合いが光る作品ですが、ギターの持つ軽やかさと哀愁漂う音色が技巧的な印象を与えません。旋律も聞きやすく洒落た雰囲気で、演奏会のプログラムにもピッタリです。テデスコは20世紀ギター音楽の大家と言われています。ギタリストとの共演がある方は是非挑戦してみて下さい!
1.Allegretto grazioso
2.Tempo di Siciliana
3.SCHERZO RONDO Allegretto con spirit
【中・上級者向け】 演奏時間:約11分 (U)

フルートとピアソラ(Fl.Guit)

アンブロジオ・デ・パルマは、比較的若い世代に属するイタリアの作曲家、編曲者、指揮者です。指揮と作曲を学び、さらに楽曲分析からクラシック・ギターやヴィウエラなどの演奏も修め、現在ではジャズを中心に作曲・編曲で活躍しています。 ピアソラの曲が好きな方の中には、ピアソラの作品の中にもこの曲と同じタイトルの「タンゲディアIII」という曲があるのを覚えている人もおられることでしょう。「タンゲデディア」という言葉は、ピアソラ独特の造語でTANGO+TRAGEDY+COMEDY(タンゴ+悲劇+喜劇)という意味を持ち、「ガルデルの亡命」という映画でこの言葉が使われたようです。 その後、ピアソラはTANGO+TRAGEDY+COMEDY+KILOMBO(スラングで「娼館」の意)がNEW TANGOだということをいっていますから、ピアソラの音楽を理解するキーワードになっているようです。 デ・パルマはこのタイトルを使って3分に満たない小品を書き、ピアソラに捧げていますが、曲はピアソラの音楽に見られるイディオムも使いながら、デ・パルマのオリジナルな作品になっています。
(SR)

情熱の国スペインの音楽(Fl.Guit)

「スペイン音楽」ときいて、何を思い浮かべますか?
北西部ガリシア地方のティン・ホイッスルやバグパイプを使った懐かしさや陽気さを感じるケルト音楽から、南はアンダルシア地方の情熱的なフラメンコ音楽まで、スペイン音楽のルーツを辿ると民族的なアイデンティティが見え、中々興味深いものです。
今回はスペインの代表的な音楽家の1人、エンリケ・グラナドス(1867-1916)の作品をご紹介します。カタルーニャ地方で生まれたグラナドスは、マドリードにあるリセウ高等音楽院を卒業したのちに、作曲家兼ピアニストとしてデビューしました。 グラナドスの最も有名な作品である、ピアノのための「スペイン舞曲集」は、12の曲から成る小品です。その中から、第4番《ヴィラネスカ》と第5番《アンダルーサ》の2曲が抜粋されて、フルートとギターの編成で演奏できます。
《ヴィラネスカ》スペイン語で「村娘」とも訳され、2/4拍子で進むギターの低音と繰り返し続くフルートのフレーズが、素朴でのんびりとした心地よさを感じさせます。
《アンダルーサ》この作品の中で、とりわけ演奏機会の多い曲です。スペイン音楽の特徴でもある裏拍に重心をおくことで、エキゾチックな雰囲気がより引き立ちます。
演奏会ではもちろん、気軽にアンサンブルされたい方や、気分が高まった時!など、さまざまなシーンで楽しんでいただける作品です。
【中級者向け】演奏時間:第4番 約6分20秒 / 第5番 約4分15秒 (A.K.)

フルートとギターでラテン音楽のオリジナル作品を(Fl.Guit)

マカド(マシャド?)はブラジルの音楽家の家系に生まれた現代作曲家です。ブラジル音楽のショーロを自作に取り入れたヴィラ=ロボスにも、ギター独奏で5曲からなる「ブラジル民謡組曲」(1908〜1912)がありますが、マカドの作品はサンバやボサノヴァといったさらに新しいリズムを取り入れた曲集になっています。

目指せ!ブラジルの女!?(Fl.Guit)

ダリウス・ミヨー(1892-1974)は、1917年から約2年間、友人のフランス大使の秘書としてブラジル(リオ)に滞在していました。そこでブラジルの文化、音楽の影響を受け、自作に取り入れていきました。「スカラムーシュ」はそんなブラジルの音楽を感じさせる人気の楽曲です。
元々は、モリエールの喜劇「Le Médecin volant(空飛ぶ医者)」の付随音楽として作曲されました。そして後に、パリ万博で演奏する楽曲の依頼を受け、2台のピアノのための組曲「スカラムーシュ」として改作しました。「Vif」「Modere」「Brazileira」の3楽章からできており、今回ご紹介するのは3曲目の「Brazileira(ブラジルの女)」のフルートとギターへのアレンジです。演奏のカギはラテンのリズム、シンコペーションでしょう!明るく、強く、美しい、ブラジルの明るい太陽のようなイイ女が踊っている姿を想像して(または、なりきって)演奏してみてはいかがでしょうか。演奏時間は4分弱と短めなので、アンコールにもおすすめです。ちなみに、タイトルの「スカラムーシュ」とは、「空飛ぶ医者」の公演が行われていた劇場の名前だそうです。
【中・上級者向け】 演奏時間:約3分40秒 (U)

ピアソラ フルート&ギターの代表作です(Fl.Guit)

言わずと知れたモダン・タンゴの王者アストル・ピアソラが、1986年にリエージュのギター・コンクールのために書いたフルートのための代表作です。初演はマルク・グローウェルスによって行なわれ、その時の実況録音も残っています。フルートも難易度は高いのですが、演奏する上ではギターのリズム感とテクニックに左右されることの多いこの曲は、ギターの名手が得られるか否かで演奏の成否が決まることが多いようです。曲は、タンゴ発祥の場所を描いた1.酒場(売春宿)1900、港の宿から少し一般化されてきた2.カフェ1930、3.ナイトクラブ1960、そして4.現代のコンサートと、タンゴの芸術性を高めるために生涯を賭したピアソラならではの作品です。
(SR)

フルートとギターのレパートリーをお探しの方へ(Fl.Guit)

プジョル(プホール?)は1957年にブエノスアイレスで生まれた、アルゼンチンの現代作曲家です。アルゼンチンの作曲家としては先輩にあたるピアソラがクラシック系の作品も書いているのとは逆に、どちらかといえばクラシック系のギターを中心に作品を書いているプジョルですが、タンゴを取り入れたり民謡を取り入れた作品も作っています。4つの曲から成っており、初めの1.ポンペイア、2.パレルモの2曲は、ピアソラの曲にも見られる叙情性と哀感を感じさせる美しい作品で、ヴァイオリン奏者やファゴット奏者の中にも愛奏する人がいる程です。3.サン・テルモもシンコペーションの特徴的なリズムを持つ親しみ易い曲。4..ミクロチェントロは技術的に他の3曲よりかなり難しく、複雑ですが中間にパレルモのテーマが戻る部分があります。
(SR)

慣用版と原曲の両方を載せたヴィヴァルディのフルート協奏曲(Fl.Storch)

ヴィヴァルディのフルート協奏曲といえば「海の嵐」「夜」「ごしきひわ」を含む作品10の6曲がよく知られています。これは1729年頃アムステルダムの出版社ル・セーヌが6曲セットで出版したものです。しかしこれらの曲は別の楽器編成の手稿譜があることから、そちらが原曲と言われるようになりました。出版社のル・セーヌが人気作曲家だったヴィヴァルディに「フルート協奏曲」の楽譜出版を依頼したところ、忙しいヴィヴァルディは以前作曲した室内協奏曲など6曲を出版社に送り、編曲を出版社にまかせたのではないかというのが最近の有力説です。例えば「海の嵐」の原曲はフルート、オーボエ、ファゴット、ヴァイオリン・ソロ、弦と通奏低音という比較的大きい編成。「ごしきひわ」の原曲はフルート、オーボエ、ファゴット、ヴァイオリン・ソロと通奏低音という室内協奏曲といった具合です。今回出版された楽譜は作品10の6曲と、その原曲5曲を交互に並べて1冊にした現代譜のスコアで、鑑賞や研究その他に大変便利なものです。唯一残念なのは、「夜」の原曲として入っている曲がフルートの入っていないファゴット協奏曲RV 501であることですが、他の4曲だけでも充分に価値がある楽譜です。しかも最後にピッコロ協奏曲のハ長調RV 444まで入った徳用版。2002年に編纂校訂された新しい楽譜です。 (SR)

フルート協奏曲 ヘ長調 RV 433「海の嵐」 → 協奏曲(Fl.Ob.Fg.Vn.Storch.Bc.) ヘ長調 RV 570「海の嵐」
フルート協奏曲 ト短調 RV 439「夜」 → ファゴット協奏曲(Fg.Storch.Bc.) 変ロ長調 RV 501「夜」
フルート協奏曲 ニ長調 RV 428「ごしきひわ」 → 室内協奏曲(Rec.Ob.Vn.Fg.Bc.) ニ長調 RV 90「ごしきひわ」
フルート協奏曲 ト長調 RV 435 → (同一)
フルート協奏曲 ヘ長調 RV 434 → (Rec.Storch.Bc.) 第2楽章 ヘ短調 RV 442(同一曲で、第2楽章のみト短調がヘ短調になっている)
フルート協奏曲 ト長調 RV 437 → 室内協奏曲(Rec.Ob.Vn.Fg.Bc.) ト長調 RV 101
ピッコロ協奏曲(Rec.Storch.Bc.) ハ長調 RV 444
ギターを含む/ハープを含む/管楽器とのアンサンブル/弦楽器とのアンサンブル/その他/