スタッフのおすすめ「フルートと他の楽器」(その他)

このコーナーでは、ムラマツのスタッフが、長年の経験から「これは!」と思う楽譜を、その目的や内容の解説付きでご紹介します。
定期的にご紹介する楽譜を更新して行きますので、皆様の目的に応じた「使える」楽譜が見つかることと思います。

縦笛と横笛(Rec.Fl.Bc/Fl.2Rec.Bc)

リコーダーはバロック時代を通じて愛好された楽器でした。イタリアでは“フラウト”と言えばリコーダーを指し、横のフルートは“フラウト・トラヴェルソ(横笛)”、イギリスでは“コモン・フルート”と呼ばれた、つまり常識的な普通のフルートはリコーダーのことで、横笛はやはり“トランスヴァース・フルート(横笛)”“ジャーマン・フルート”などと呼ばれていたのです。その好みがはっきりと横笛に移行していったのは、ちょうどバロック後期から古典派の時代にかけてでした。そのため、バロック後期にはリコーダーとフルートを使って、それぞれの特徴を面白く聞かせる室内楽の名曲がいくつか残されています。

■クヴァンツは、みなさんよくご存知の、バロック時代のフルートの名手で、ドレスデンの宮廷からベルリンに移り、プロイセンのフリードリヒ大王のフルートの先生としても活躍しました。緩‐急‐緩‐急の4楽章からなるこのハ長調のトリオ・ソナタは、アルト・リコーダーとフルートがまったく対等に書かれていて、明るく軽快でありながら迫力もある名曲です。音域的にはフルート2本でも演奏可能ですが、リコーダーとフルートで演奏した方が、高い演奏効果が得られます。同じ曲がアマデウスからも出版されています。(楽譜ID:15816)
■ファッシュは1688年に生まれ、1758年に亡くなったドイツの作曲家で、1722年以降ツェルプストの宮廷楽長を務めました。若い頃、ライプツィヒのトーマス学校で学び、テレマンから多くの教えを受けています。この曲も緩‐急‐緩‐急の4楽章からなり“ソナタ”となっていますが、本来は“協奏曲”といってもいい作りになっています。ヴァオリン2本の代わりになる2本のアルト・リコーダーが美しい響きを作りながら“トゥッティ”を演奏する上に、フルートが華やかなソロを展開します。この曲も音域的にはフルート3本でも演奏できますが、リコーダーのパートはフルート以外の楽器の方がクヴァンツのトリオ・ソナタ以上に効果的で、ヴァイオリンなどにも向いています。
(SR)

縦笛と横笛 その2(2Fl.Rec.Bc/2Fl.2Rec.Bc)

リコーダーはバロック時代を通じて愛好された楽器でした。イタリアでは“フラウト”と言えばリコーダーを指し、横のフルートは“フラウト・トラヴェルソ(横笛)”、イギリスでは“コモン・フルート”と呼ばれた、つまり常識的な普通のフルートはリコーダーのことで、横笛はやはり“トランスヴァース・フルート(横笛)”“ジャーマン・フルート”などと呼ばれていたのです。その好みがはっきりと横笛に移行していったのは、ちょうどバロック後期から古典派の時代にかけてでした。そのため、バロック後期にはリコーダーとフルートを使って、それぞれの特徴を面白く聞かせる室内楽の名曲がいくつか残されています。今回は「その2」として、前回ご紹介できなかった2曲をご紹介します。

■テレマンは1733年にハンブルクで「ターフェルムジーク(食卓の音楽)」という曲集を出版しました。これは宮廷や、市の行事で行なわれる饗宴のときに演奏するためのもので、管弦楽組曲、四重奏曲、協奏曲、トリオ・ソナタ、ソロ・ソナタ、はじめの管弦楽と同じ編成による終曲の5種類の編成による3つの曲集からなっています。今回ご紹介する曲は、その中の第2集の四重奏曲です。アルト・リコーダー1本とフルート2本に通奏低音がつくもので、縦・横のフルートを使ったこの手の曲の中でも特に優れた名曲です。リコーダーのパートはファゴットによる演奏も可能で、ベーレンライター版にはそのパートも付いています。1、3、4楽章は3つの楽器が対等に、しかし部分的にはそれぞれの特徴を生かしながら演奏出来るように書かれており、2楽章は2本のフルートが協奏曲のトゥッティ役割りをする上にリコーダーがソロを展開する迫力と変化に富んだ作品です。フルート3本でもよく演奏されるようですが、本来の編成の方が演奏効果が上がる曲です。
■バロック時代の後期にはベルギーにルイエという作曲家が少なくとも3人居てすべて木管楽器の演奏家兼作曲家として活躍しました。ロンドンで活躍したために“ロンドンのジョン”と呼ばれるジャン=バティスト・ルイエ(1680〜1730)、その弟ジャック(1685〜1748)、そして従弟で同名のジャン=バティスト(1688〜1720頃)はジョンと混同するため“ガン(またはヘント)のルイエ”と呼ばれています。この五重奏は原譜のタイトルに「ルイエ氏のソナタ」としか書いていないため、確定的なことは分かりませんが、“ガンのルイエ”の作品とされることが多いようです。曲は2本の“ヴォイス・フルート(D管のテナー・リコーダー)、2本の横のフルートと通奏低音のために書かれています。それぞれ2本の種類が異なるフルートがセットで美しい響きを作りながら進行していくシンプルな作りの曲です。普通のアルト・リコーダー2本での演奏を考える場合、第2リコーダーに2箇所、本来の最低音Fより半音低いEの音が出てくるため足部管の下の穴を膝で半分ふさぐなどの荒技が必要になります。短3度上のニ短調に移調した楽譜がAmadeus社から出版されています。
(SR)

縦笛と横笛 その3(Rec.Fl.Pf)

以前2回に分けてバロック時代から古典派の時代に移り変わる時期に作られた、リコーダーとフルートを両方使った室内楽をご紹介しましたが、今回はその3回目として、決定的な名曲をご紹介します。
作曲者はテレマン、曲は「リコーダーとフルートのための協奏曲 ホ短調」です。あらゆる楽器のために、見事な作品を数多く残したと言われるテレマンの代表作のひとつです。この2つの楽器は同じ笛属で、発音原理もよく似たリコーダーとフルートですが、音の立ち上がりや響きの構造は微妙に違います。この近くて異なる2つの楽器の違いを絶妙に使い分けたこの曲は、4つの楽章からできています。弦楽器と通奏低音による大変シンプルな伴奏に乗って、流れるような16分音符の音形が美しい第1楽章のラルゴ。リコーダーとヴァイオリン、フルートとヴァイオリン、リコーダーとフルートなど様々に組み合わせを変えながら緊張感あふれる音楽をつくりあげていく第2楽章アレグロ。弦のピチカートの伴奏に乗って2本の笛がよく歌う第3楽章ラルゴ。この楽章の冒頭と末尾は弓を使っての弦楽器の和音で構成されているのでここでは弦楽器か通奏低音による即興的な装飾がほしいところです。第4楽章のプレストは、テレマンが得意としたポーランド風の音楽。迫力あるトゥッティと2本の笛のソロのやりとりは全曲の終わりにふさわしい迫力を持っています。
(SR)

フルートとチェンバロが独奏楽器のトリオ・ソナタ?!(Fl.Cemb.Bc.)

自ら「トリオ・ソナタの作曲には自信がある」豪語していたテレマン。確かに彼のトリオ・ソナタは150曲近くがカタログに載っています。その中には様々な楽器の組み合わせがありますが、これはその中でも変わり種。普通は通奏低音を受け持つチェンバロが独奏楽器として使われているのです。
「なーんだ、それならJ.S.バッハのロ短調のソナタなんかもその形じゃないの」
と思ったアナタ、おしいっ! これは同じではないのです。チェンバロの左手とは別に通奏低音が付くのです。つまり、演奏するときはフルート、独奏用チェンバロ、通奏低音(チェロとチェンバロなど)になるのです。なんと派手な曲でしょう! そして贅沢な! もっともそこまでギャラが払えない方は通奏低音はチェロだけ雇っても何とかなるかも・・・。
テレマンの「音楽練習帳」の中の1曲で、この曲集にはこの形の曲があと3曲、リコーダー用、オーボエ用、ヴィオラ・ダ・ガンバ用がありますが、この編成いずれにしても珍しいものです。派手好きな方、珍しい物が好きな方、賑やかに演奏したい方、そしてチェンバロを2台持っているアナタ、是非試してみて下さい。
【中・上級者向け】 (SR)

歌とフルートのデュオ(Fl.Vo)

ルーセルは、1869年にフランス北部のトゥールコワンで生まれ、1937年にフランス西部のルーアンで亡くなった、近代フランスを代表する作曲家です。フルート作品としては、1924年にフルートとピアノのために作曲された「笛吹き達 op.27」が有名ですが、今回ご紹介するのは同年に歌とフルートのために作曲された「ロンサールの2つの詩 op.26」です。
この曲は、「Rossignol, mon mignon…(わが愛しのナイチンゲール)」と「Ciel, aer et vens…(空、空気と風)」の2曲からなっており、2曲ともフルート独奏で始まります。技術的に難しいところはあまりなく、特殊奏法もありません。楽譜にはpour chant & fluteと書かれていますが、ソプラノとフルートで演奏されることが多いようです。歌ってくれる人が身近にいないから・・・と思われる方は、フルート二重奏やフルートとオーボエの二重奏などで演奏しても楽しめるのではないでしょうか。
【中級者向け】 演奏時間:約9分 (I)

フルートと歌のアンサンブル(Fl.Vo.Pf/Fl.Cl.Pf)

ビショップ(1786-1855)はイギリスの作曲家。舞台音楽の作曲家や指揮者として活躍していました。この曲はシェイクスピア劇の付随音楽として作曲されたものです。
Allegro non troppoの軽快なフルートのメロディから始まりそれに答えるようにソプラノが続きます。終盤ではフルートとソプラノのカデンツァがあり華やかに曲が締めくくられます。フルートと歌の掛け合いが爽やかな一曲です。歌のパートはクラリネットでも演奏ができ、また違った雰囲気を楽しめます。
【中級者向け】 (E)

オペラの中の二重唱(2Fl.Pf/Fl.Vo.Pf)

フランスの作曲家ドリーブ(1836-1891)は主に歌劇やバレエ音楽の作曲を行い、主要な作品はバレエ音楽「コッペリア」、「シルヴィア」などが挙げられます。歌劇「ラクメ」は上演される事が少ないようですが、「ラクメ」の劇中に歌われる「花の二重奏曲」はCMソングやサウンドトラックに起用されるなど人気が高く、多くの方が耳にしたことのあるメロディではないでしょうか。
歌劇「ラクメ」の舞台は19世紀、イギリス植民地時代のインド。高僧ニラカンタはイギリス統治に憤りを感じ、ヒンドゥー教徒達とイギリスから独立できるように祈りを捧げます。そんな中、聖域であるバラモン寺院の敷地にイギリス人将校・ジェラルドが誤って侵入し、高僧ニラカンタの娘・ラクメと出会い、二人は恋に落ちていきます。二人の恋の行方が気になりますが・・・。
この「花の二重奏」は、第1幕に高僧ニラカンタが町の祭祀に出掛け、残されたラクメと侍女マリカがジャスミンとバラの花が咲く小川で、綺麗な花と小鳥に囲まれて歌う二重唱です。二人のハーモニーから始まり、それぞれのソロを歌い、再び二重唱へと戻ります。ちょっぴり異国風なメロディと美しいハーモニーが魅力的で、演奏する人も聴く人も心地よい気分になります。
ご紹介するバクストレッサー編では、2本フルート・ピアノだけではなく、歌(1st)・フルート(2nd)・ピアノで演奏できるように歌詞付きで出版されています。
演奏時間は約4分弱。サロンコンサートやアンコールでの演奏もいいですね。歌手になった気分で美しい二重唱、いや二重奏を皆さんも楽しんでください。
(TO)

見えない笛(Fl.Vo.Pf.)

『見えない笛』という何とも神秘的な題名の付いたこの曲は、とても不思議な魅力に溢れています。
フランスの文豪、ヴィクトル・ユーゴーの詩にサン=サーンスが曲を付けました。ピアノとフルートに誘われるように歌が始まり、しっとりと語りかけるような旋律が流れる幸福感に満ちた音楽です。
この曲は、Leon Fontbonneというフルーティストに献呈されています。この方は現在も度々来日しておなじみのフランスの名門吹奏楽団Garde Republicaneに所属していた方で、一番フルートを吹いていたようです。サン=サーンスとの関係についてはよく分かりませんが、親交があったと思われます。
今回ご紹介するのはフルート、歌、ピアノの編成ですが、サン=サーンスは30年前(1855年)にもソプラノ、バリトン、ピアノで同じ詩を使って曲を書いています。さらに、カプレ、ゴダール、ピエルネらもこの詩に音楽を付けています。(カプレの楽譜はこちら→ID:7643
当時、文化人としてだけではなく、政治家としてもフランス国民の英雄的存在であったユーゴーは、音楽家達にも大きな影響を与えたようです。

Viens! - une flûte invisible
Soupire dans les vergers.-
La chanson la plus paisible
Est la chanson des bergers.

Le vent ride,sous l'yeuse,
Le sombre miroir des eaux.-
La chanson la plus joyeuse
Est la chanson des oiseaux.

Que nul soin ne te tourmente.
Aimons-nous! aimons toujours!-
La chanson la plus charmante
Est la chanson des amours.

約130年前に書かれた大文豪の愛の詩。美しいメロディーと共に味わってみてはいかがでしょうか。
【中級者向け】 演奏時間:約3分 (U)

慣用版と原曲の両方を載せたヴィヴァルディのフルート協奏曲(Fl.Storch)

ヴィヴァルディのフルート協奏曲といえば「海の嵐」「夜」「ごしきひわ」を含む作品10の6曲がよく知られています。これは1729年頃アムステルダムの出版社ル・セーヌが6曲セットで出版したものです。しかしこれらの曲は別の楽器編成の手稿譜があることから、そちらが原曲と言われるようになりました。出版社のル・セーヌが人気作曲家だったヴィヴァルディに「フルート協奏曲」の楽譜出版を依頼したところ、忙しいヴィヴァルディは以前作曲した室内協奏曲など6曲を出版社に送り、編曲を出版社にまかせたのではないかというのが最近の有力説です。例えば「海の嵐」の原曲はフルート、オーボエ、ファゴット、ヴァイオリン・ソロ、弦と通奏低音という比較的大きい編成。「ごしきひわ」の原曲はフルート、オーボエ、ファゴット、ヴァイオリン・ソロと通奏低音という室内協奏曲といった具合です。今回出版された楽譜は作品10の6曲と、その原曲5曲を交互に並べて1冊にした現代譜のスコアで、鑑賞や研究その他に大変便利なものです。唯一残念なのは、「夜」の原曲として入っている曲がフルートの入っていないファゴット協奏曲RV 501であることですが、他の4曲だけでも充分に価値がある楽譜です。しかも最後にピッコロ協奏曲のハ長調RV 444まで入った徳用版。2002年に編纂校訂された新しい楽譜です。 (SR)

フルート協奏曲 ヘ長調 RV 433「海の嵐」 → 協奏曲(Fl.Ob.Fg.Vn.Storch.Bc.) ヘ長調 RV 570「海の嵐」
フルート協奏曲 ト短調 RV 439「夜」 → ファゴット協奏曲(Fg.Storch.Bc.) 変ロ長調 RV 501「夜」
フルート協奏曲 ニ長調 RV 428「ごしきひわ」 → 室内協奏曲(Rec.Ob.Vn.Fg.Bc.) ニ長調 RV 90「ごしきひわ」
フルート協奏曲 ト長調 RV 435 → (同一)
フルート協奏曲 ヘ長調 RV 434 → (Rec.Storch.Bc.) 第2楽章 ヘ短調 RV 442(同一曲で、第2楽章のみト短調がヘ短調になっている)
フルート協奏曲 ト長調 RV 437 → 室内協奏曲(Rec.Ob.Vn.Fg.Bc.) ト長調 RV 101
ピッコロ協奏曲(Rec.Storch.Bc.) ハ長調 RV 444