「ソノリテについて」をはじめ多くの教本を著し、「フルートの神様」と呼ばれるマルセル・モイーズですが、1984年に亡くなってからもう25年以上がたち、若いフルーティストには実際どんな人だったのか、ご存じない方が多いことでしょう。
この本は、モイーズの弟子であった著者が師の思い出を綴ったもので、写真も多く掲載され、人柄がしのばれる数々のプライベートのエピソードはもちろん、レッスンの様子も垣間見られるものです。
たとえ全部通して読まなくても
“Without the heart, the brain cannot produce music.(心がこもらなくては、頭だけでは音楽は生み出せません)”
“Music is the language of love.(音楽は愛の言葉なのです)”
といったモイーズの言葉を拾い読みするだけでも、彼の音楽に対する真摯な姿勢が伝わります。
英語の本ですが、高校生くらいの英語力で十分読める内容ですので、フルートと音楽を愛するすべての人にぜひ読んで頂きたいと思います。(T)
この本には、1キー・フルートからベーム式フルートまでの歴史から楽器の手入れ方法、その時代のフルート音楽と具体的な演奏習慣、そしてバッハ、ヘンデル、モーツァルト等の名曲を取り上げてその演奏上の留意点に至るまでが詳しく記されています。この時代の人物が残した様々な歴史的資料とその内容をまとめつつも、現代の演奏家の視点も交えて書かれた良書です。図版も充実し、付録にはクヴァンツとロックストロの運指表が付属しています。翻訳者は、以前同出版社から出版された『バロック・フルート奏法』(2017年)(ID:33792)と同じく小林慎一氏です。
日本でもヒストリカル・フルート人気が年々高まる一方で、日本語で読むことができる資料はまだとても限られています。初心者向けの本とは言えませんが、トラヴェルソをお吹きになる方にはもちろんのこと、モダン・フルート吹きの方がこの時代の音楽を演奏するにあたって参考にすることもできる一冊として、広くお勧めいたします。
レイチェル・ブラウンのCDはこちらです。
(CD-ID:2980)レイチェル・ブラウン/J.J.クヴァンツ:フルート・ソナタ集(ピリオド楽器)ID:6313「C.P.E.バッハ:フルート協奏曲集」
(CD-ID:6314)レイチェル・ブラウン/HANDEL AT HOME(Period Instr.)
(CD-ID:6316)レイチェル・ブラウン/ヘンデル:7つのトリオ・ソナタ OP.5(ピリオド楽器)
(M)