解説
「アルペジョーネ・ソナタ」 は、今日では、チェロやヴィオラによって演奏されるのが常ですが、もともと、アルペジョーネという楽器のために作曲されたソナタでした。この楽器はシューベルトがこの曲を作曲する前年に、ヴィオール属とギター属の合いの子のような変種としてつくられましたが、すぐにすたれてしまいました。この曲の生み出された幸運を思うと皮肉なことですね。シューベルトには、「しぼめる花変奏曲」 というフルートの大切なレパートリーがありますが、あの一種の難解さと違って、この曲は、素直にシューベルトの美しさ、楽しさに直結しています。第1楽章はソナタ形式で叙情味豊かな第1主題と、軽快な第2主題が織りなしています。調性の移り変わりが実に美しい。第2楽章はシューベルトの歌曲の世界を垣間見るようです。第3楽章は、ロンド主題、ハンガリー的な主題、さらに即興風の味を持った第3主題を交えて息をもつかせぬ構成となっています。アルペジョーネの音域は極めて広かったので、フルートで演奏する場合は、音域など少し手を加えなければなりません。ベーレンライター原典版を元にして分からないことがあったら、他の版を参考にするとよいでしょう。(解説/三上明子)ニュース
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