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ムラマツ・フルート・レッスンセンター講師による
~おもひでの名曲~

Memories Of You

Vol.9 永井 由比 先生

武満 徹
Voice

大学時代の恩師、野口龍先生に現代曲をレッスンしていただきたいとお願いしたのは今から22年前、2000年の5月でした。
当時現代曲のことも何も知らない私は、無謀にも「先生が初演した曲を演奏したいです!」とご相談したところ、野口先生は満面の笑みで相談に乗ってくださり、武満徹さんの「Voice」を選曲してくださいました。
「Voice」は野口龍先生門下の先輩である橋本岳人さんの演奏を聴いたことで知りました。その素晴らしい演奏は20数年経った今でも記憶に鮮明に残っています。

「Voice」はオーレル・ニコレ氏に献呈した曲ではありますが、初演されたのは野口先生でした。
レッスンにあたり野口先生は初演時の話(マイクを使用していたそうです)や、武満さんがお考えになる表現方法を実際のフルートの奏法にどのように落とし込むか等、様々な話をしてくださいました。
曲というのは何十年何百年も前に完成されたものを演奏するもので、作曲家が生きている!なんてことは想像もしていなかった当時の私にとって、作曲家と演奏家が一体となり曲を創り上げていく現代音楽という分野にとても魅力を感じました。
ご存知の方も多いでしょうが、「Voice」は曲名の通り声とフルートを融合させた表現技法を試みており、瀧口修造さんの詩から引用した一行『誰か?まずは物を言え、透明よ!』(仏語、英語)の言葉が1曲を通してあらゆるところで使われています。
「Voice」以前の曲では声を表現方法の一部として使用することはあっても、声を(表現・効果)1曲を通して融合させていった曲はこの曲が初めてだったように思います。

野口先生がよくおっしゃっていたことは、「最近の演奏ではフランス語の発音を重視するあまり、楽器を通さず(息を通さず)に発音したり楽器を離して発音したりする演奏が多いけれども、この曲は言葉(声)とフルートが『一体』となることが曲の要で、言葉(声)は常に楽器を通して発することで初めて表現として意味を持つことになるのだよ。それを常に頭に入れて練習をしなさい」と指導をいただきました。

「Voice」を練習するにあたっての最初の関門は『キ、ヴァ、ラ!(誰か!)』と叫ぶことでした。
壁の薄い練習室でいきなり叫んだらみんなびっくりするだろうな、なんて思いながら思い切って叫んだ途端、周りの練習音が止んでシーン…としてしまい、中にはレッスン室の窓から覗き込む学生もいたりしましたが、一度思い切って叫んでしまうと後は慣れるもので、毎日練習室で叫んだり、いわゆる特殊奏法の練習に没頭しておりました。

不思議なもので、学内で現代曲を練習していると現代曲好きの仲間と交流ができ、そこで現代曲を演奏するグループを作ったり、また様々なところで現代曲を演奏するきっかけとなりました。
私にとってこの曲は、自分の道を定めてくれた大切な『おもひでの曲』です。

<楽譜のご案内>

楽譜ID:9118

Voice

武満 徹

出版社:SALABERT

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NAGAI YUI
永井 由比 先生 新宿教室 木・土曜日クラス

フルートを青木明、野口龍の両氏に師事。桐朋学園大学短期大学部卒業。同専攻科、研究生修了。(財)地域創造「公共ホール音楽活性化事業」支援アーティスト。
現代音楽分野での演奏を活発に行うとともに、音楽アウトリーチ、ワークショップの活動(演奏、ファシリテーター)を全国各地で展開。桐朋学園芸術短期大学教授。芸術科学科長。ムラマツ・フルート・レッスンセンター講師。

※プロフィールは、掲載時のものとなります。最新情報につきましては、こちらよりご確認ください。

Vol.10 大久保 香 先生(次回掲載予定)