ムラマツ・フルート・レッスンセンター講師による
～おもひでの名曲～
Memories Of YouVol.35 木ノ脇 道元 先生
B.ファーニホウ
ユニティ・カプセル
大学在学中から自分の音楽活動を軌道に乗せるための方向の一つとして、あるいはまず夢中になれる活動として、現代音楽の演奏に傾倒していた20代半ばに出会ったさまざまな曲たち。その中でも極め付けに複雑な見た目をしているのがブライアン・ファーニホウの作品の楽譜たちだった。
そしてその翌年、同世代の仲間たちと来日したファーニホウ氏を迎え、東京音楽大学の作曲科主催という形でファーニホウ作品のレクチャーコンサートを企画した思い出があるのでファーニホウ作品、とくにフルートソロ曲「Unity Capsule」は現在の奏者としての基礎力を培ってくれた演奏経験だったと思っているのである。
おもひでの楽譜
それにくわえ、この曲の「楽譜」は「演奏」に対して特殊なありかたをしているといえて、複雑怪奇な楽譜を可能な限り正確に再現しようとする奏者の絶望的とも言える肉体の努力にもかかわらず、ぴったり譜面に書かれている通りの響きになることはあまりない、というよりほとんど期待されていないようですらある。楽譜との演奏との乖離のゆらぎの中に作品の音楽的本質がこめられているともいえる。そんな二律背反を考えると「それは音楽を紙の上に定着させるという試みとしては失敗なのでは？」という疑問と「１００%再現ということは原理的にあり得ないのであれば、楽譜を強力な道具として用いる演奏というのはそもそも奏者の努力と楽譜との誤差のあいだにあるものなのではないか？」という思いのあいだのジレンマで、「楽譜」というもののあり方をめぐる考察を深めるきっかけにもなったのである。
様々な演奏の要素を数学的に操作して、最小の演奏形態であるフルート独奏曲に落とし込んでいるから「Unity Capsule」。
この曲に挑む数多の奏者たちの身体は楽譜と楽器の間でひきつり、ゆらぐのである。
KINOWAKI DOGEN木ノ脇 道元 先生 ／新宿教室 水曜日クラス
1989年東京藝術大学入学。
1993年ピアニスト 大井浩明との「Duo Dogen」で、日本現代音楽協会主催「競楽Ⅱ」にて第1位、同時に朝日現代音楽賞、フォルテミュージック特別賞を受賞。
1994年ダルムシュタット夏季現代音楽週間で奨励賞、1997年アリオン音楽賞奨励賞、出光音楽賞受賞。
2011年初めて自作品のみの演奏会「木ノ脇道元作品演奏会」を行い、作曲家としての存在感を示す。
2013年には松井久子監督のドキュメンタリー映画「何を怖れる」で音楽監督として、作編曲、演奏の両方で映画に携わった。
武田又彦、金昌国、細川順三の諸氏に師事。
これまでに、アルバム「blower」「不在の花」「Perfect World」「Crazy Days」をリリース。「The organic space」を配信。
現在、東京藝術大学、神奈川県立相模原弥栄高等学校非常勤講師、ムラマツ・フルート・レッスンセンター講師。アンサンブル・ノマドメンバー、また株式会社シャングリラの登録アーチストとしてスタジオワークも行う。
公式ホームページ
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