ムラマツ・フルート・レッスンセンター講師による
~おもひでの名曲~
Memories Of YouVol.36 内山 貴博 先生
L.ベリオ
セクエンツァ
今でも頭の中でふと流れる、たくさんのおもひでの作品。その中には初めて人前で吹いた曲や、寝る前必ず聞いていた曲、レッスンで先生に怒られた曲や、コンクールでうまくいった曲など、僕の中でエピソードを持った作品はたくさんありますが、今回は東京藝術大学の入試に向けて準備した作品であり、たくさんの先生にアドヴァイスをいただいた作品でもある、ルチアーノ・ベリオ作曲「セクエンツァ I」についてお話します。中学生の時、東京藝術大学音楽学部の入試では現代音楽を一曲吹かなければならないというお話を聞き、現代の音楽に精通しており、藝大の講師を務めていらっしゃる木ノ脇道元先生のレッスンを受けに行きました。先生は中学生だった僕によくCDを貸してくださいました。貸していただいた中には、名盤である「アンサンブル・アンテルコンタンポラン ベリオ セクエンツァ集」がありました。そのCDをMDに落として、よくレッスンの行き帰りに聞いていたのですが、初めて聞いた時「なんかかっこいい!!」とだけ感じたのを覚えています。どんなふうに書かれているのか想像もせず、早々に「セクエンツァ I 吹きたいです」なんて言ってしまったのです。
無事にベリオを吹いて藝大に入学しましたが、あの「アンサンブル・アンテルコンタンポラン ベリオ セクエンツァ集」で名演を録っているソフィー・シェリエ氏がどういう人なのかという好奇心の方が勝ってしまい、パリへの留学を決めました。その後パリ国立高等音楽院に入学後すぐ、セクエンツァをシェリエ先生のレッスンに持って行きました。そのレッスンは「私の録音を聞いてくれているのね、ありがとう。」という言葉から始まりました。ベリオ本人の前で演奏をして直接意見をもらっているシェリエ先生の解釈は、出版されている2つの版を上手いこと組み合わせたもので、あのCDの名演の理由を知れた気がしました。
(左)木ノ脇先生と初仕事の後の写真(レングリとホリガー)
(右)ソフィー・シェリエのパリ音楽院のクラス写真
毎週のように、新しく生み出された作品に取り組んでいるシェリエ先生の「メシアンとベリオ、ブーレーズはもう現代音楽ではない」という言葉は印象深く、この言葉を聞いてから、セクエンツァに限らず20世紀の音楽への取り組み方が変わっていきました。
そんなルチアーノ・ベリオの「セクエンツァ I 」は、自身の現代音楽への関わり方を大きく変えるきっかけをくれた作品です。今でも愛してやまない作品の一つです。
<楽譜のご案内>
UCHIYAMA TAKAHIRO
内山 貴博 先生 /新宿教室 火曜日クラス
内山 貴博 先生 /新宿教室 火曜日クラス
東京藝術大学附属音楽高等学校を卒業後、東京藝術大学音楽学部入学。その後渡仏。
パリ地方音楽院、パリ・エコールノルマル音楽院を経て、パリ国立高等音楽院第一課程、第二課程(修士課程)を修了。
第30回レオシュ・ヤナーチェク国際音楽コンクール第3位、第35回日本木管コンクール第1位、第88回日本音楽コンクール入選、第3回オーレル・ニコレ国際フルートコンクール第3位など国内外の数々のコンクールで入賞をしている。
これまでにフルートを田村珠美、岩佐和弘、木ノ脇道元、堀井恵、工藤重典、高木綾子、S.ザイフェルト、M.モラゲス、C.ルフェーブル、V.リュカ、S.シェリエの諸氏に、ピッコロをP.デュマイ氏に師事。
また室内楽をL.ハダディ、Ph.ベルノルド、棚田文紀、Ph.フェローの諸氏に師事。
現在、フリーランス奏者として国内のオーケストラや、現代音楽の公演などに客演している。SPAC-Eのメンバー。
T.M.G.音楽企画として、「門天リサイタルシリーズ+C」を主宰。アンサンブル・リカレンス代表。ムラマツ・フルート・レッスンセンター講師。
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