ムラマツ・フルート・レッスンセンター講師による
~おもひでの名曲~
Memories Of YouVol.37 加藤 勇仁 先生
J.S.バッハ
トリオ・ソナタ ト長調 BWV1039
パリに留学していた時に、室内楽での巡業のお仕事をさせていただいたことがあります。ドイツ人のコントラバス奏者が主催の、2本のヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスにソロ楽器1名という編成のアンサンブルで、私が参加した時はフルートがソロを担当しました。ヴァイオリンの2人が年齢の近いポーランド人の男女、ヴィオラとチェロはロシア人の男性、それにコントラバスの主催者とその奥様がドイツ人(+飼い犬)という、なんともバラエティー豊かなパーティーでした。

サン・ジャン=バティスト教会
そんな演奏会では弦楽をバックに多くのソロを吹かせていただきましたが、その中の一つがこの『トリオ・ソナタ BWV1039』です。J.S.Bachが書いたこの作品は2本のフルートと通奏低音のためのものですが、この時は2ndフルートをチェロが担当し、伴奏を残りの弦楽にアレンジして演奏しました。他にもヴィヴァルディの『秋』やモーツァルトの『オーボエ四重奏曲』、リムスキー=コルサコフの『熊蜂の飛行』などをフルートソロのアレンジで吹かせていただきました。これらの曲をほぼ毎日、数十人が入ればいっぱいになる村の集会所のような教会から、何百人も入るような大聖堂まで、様々な大きさや建材の会場で演奏出来たのは本当に貴重な経験で、今の私のフルート人生に大いに役立っています。なかでも印象的だったのは、スペイン国境近くにある、大西洋に面した人気リゾート地として有名なサン=ジャン=ド=リュズの、ルイ14世とマリー=テレーズが結婚式をあげたことで知られるサン・ジャン=バティスト教会です。絢爛豪華なこの大聖堂での演奏は一生忘れることができないでしょう。また、まるで中世から時が止まったかのような小さな村ラコストも印象的でした。南仏プロヴァンスのリュベロン地方にあるこの石造りの美しい村は、サド公爵の城があったことで有名です。このような様々な19の町や村で演奏させていただきました。
他にも真夜中の波一つない地中海で、満月の明かりが海面に映る、まるで映画のワンシーンのような中を泳いだことなど、見て聴いて感じたそれら多くの体験は、今の私の音楽を形作る上での貴重な“おもひで”となっています。


加藤 勇仁 先生 /大阪教室 金曜日クラス
大阪教育大学教育学部教養学科芸術専攻音楽コース卒業、パリ・エコール・ノルマル音楽院修了。
在仏中にブラティスラヴァ室内オーケストラのフランス・スイス国内への演奏旅行にニ度ソリストとして同行。2003年4月、2010年6月、2014年11月にソロリサイタル開催。2001年、2009年に奈良フィルハーモニー管弦楽団とのコンチェルト共演の他、様々な室内楽、ソロ、フルートオーケストラ、吹奏楽、オーケストラなど幅広いジャンルでのコンサートを精力的に行っている。
「日本フルートフェスティバルin奈良」立ち上げに携わり、1996年の第1回より実行委員を、 第4回から現在まで実行委員長を務め、奈良のフェスティバル独自の大がかりな企画は好評を博している。
さらに、代表を務めるまほろばフルートオーケストラによる様々なジャンルのコンサートや、 フルート愛好家を対象としたワークショップ「奈良アマチュアフルート合奏団’S 演奏会」を企画・主催するなど、 フルートの楽しみを広めるべく活動している。
また自らベルエキップ音楽教室を主宰する他、各地の音楽教室や学校にて後進の指導にも力を注いでいる。フルートを保坂真弓、中務晴之、クロディーヌ・クルトゥールの諸氏に、室内楽をシャンタル・ド・ビュッシー、ニーナ・パタルシェの諸氏に師事。
まほろばフルートオーケストラ代表。 ドルチェミュージックアカデミー、ムラマツ・フルート・レッスンセンター、相愛大学音楽学部、相愛高等学校音楽科各講師。 一般社団法人日本フルート協会理事、日本フルート協会関西部会事務局長。

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