ムラマツ・フルート・レッスンセンター講師による
~おもひでの名曲~
Memories Of YouVol.38 矢口 瑞穂 先生
W.ペッテション=ベリエル
フレースエーの花々
フルートを習い始めて2年もたたない1974年頃、外国人フルート奏者を招いた公開レッスンを行う合宿に参加しました。まだ、公開レッスンなどあまり行われていなかった時代。しかも超初心者中学生の私がそんな会に参加しても良いものか… でも「こんな機会他に無いから!」という先生の強いお勧めで参加することになりました。
レッスンの合宿の参加者は、プロ奏者に音大生、音大受験生。そして初めて聞く難曲!こんな世界があるんだ!凄いカルチャーショックを受けました。その時、私がレッスンを受けた曲はJ.S.バッハの『ソナタBWV1031 Es dur』の第二楽章「シチリアーノ」でした。やっと音符を追う程度の私に、とても丁寧なレッスンをしてくださったのはパウル・マイゼン先生でした。その時に教えていただいたフルートの持ち方、アンブシュアそしてアーティキレーションに沿った抑揚のつけ方等々、あの時のマイゼン先生のレッスンが、私のフルートの第一歩になりました。

レッスンセンターでは年に一回の発表会があり、曲探しも指導の一環です。選曲の目安は、難し過ぎず、簡単過ぎず、フルートも伴奏ピアノも美しく聴き映えのする曲であること。 新宿店の楽譜売り場に行っては、膨大な蔵書の中から宝探しのように曲を発掘するのが楽しみでした。
ある日、新宿店に電話をした時のこと「しばらくお待ち下さい」の後に流れる保留の音楽がとてもきれいなフルートの曲。後日、お店で「あの曲は何の曲ですか?」と尋ねると「ピーターソン=ベルガーの『フレースエーの花々』」と教えてもらいました。お店の方が音源を発掘して保留音に設定して、それを聴いた人がちょっと心に留める。そんな出会いの曲でした。すぐに楽譜を入手しましたが、スウェーデンの作曲家なので、作曲家名もスウェーデン語の発音に寄せた読み方に変更されたそうで、ペッテション=ベリエルということになったそうです。

この曲はスウェーデンのフレースエー島の風景を切り取った6つのスケッチからの組曲です。
1.「夏の歌」 2.「バラへ」 3.「お祝い」 4.「テニス」 5.「フレースエーの教会」 6.「帰還」
保留音で出会ったのは1曲目「夏の歌」でした。冒頭の登っていくメロディーの高音を輝かしく伸びやかに響かせるために、どのような練習が必要かを考えたり、各曲の風景をイメージしながら吹いて欲しい、全曲とも素敵な曲です。ですが、生徒さんの発表会には全曲演奏は長過ぎ。ならば、自分の演奏会で「皆さんにも吹いて欲しい曲」として演奏することに。私が演奏会を企画するにあたって、会場取り、プログラムの作成等々の当然の準備に加えてドレス製作もしています。ちゃんと洋裁を習ったことも無く自己流の下手の横好きレベルですが、自分の衣装はずっと自作していました。特に年齢(体型にも!)に合ったドレスってどうしたものか…
そこで出会ったのが着物リメイクドレス。
なので、プログラムを決めたら古着着物屋さんに行って曲のイメージの着物を探します。フレースエーの花々にぴったり!と思って購入したのは…薄い緑色の帯。
曲選びと共にドレス作りも楽しい思い出です。


矢口 瑞穂 先生 /新宿教室 火曜日クラス
国立音楽大学卒業。同大学院修了。1984年、武岡賞受賞。音楽堂新人演奏会出演。1987年、東京文化会館推薦新人演奏会出演。大友太郎、高橋安治の両氏に師事。また、P.マイゼン、C.ショッホウ、K.レーデルの諸氏に指導を受ける。
1991年リサイタルを行う。92年「音楽会に行こう」室内楽シリーズを企画 等、横浜を中心にソロ・室内楽の演奏活動を行う。ムラマツ・フルート・レッスンセンター講師。

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