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ムラマツ・フルート・レッスンセンター講師による
~おもひでの名曲~

Memories Of You

Vol.45 鈴木 佐英子 先生

J.S.バッハ
ソナタ ホ短調 BWV1034

楽譜棚の中に、ことのほかヨレヨレ、ボロボロの楽譜があります。バッハのソナタ集です。
大学時代にロ短調ソナタを大友太郎先生のもとで学び、先生から立ち昇るバッハの音楽の美しさに衝撃を受けました。演奏を通じて崇高な世界に触れたような気がして、バッハが大好きになりました。
その後ベルリンでカールハインツ・ツェラー先生に一年間師事した後、先生の定年退官に伴い、後任となったロスヴィタ・シュテーゲ先生のもとで初めて取り組んだのが、このホ短調ソナタです。
ツェラー先生のもとでの一年間は、初めてのドイツ生活に奮闘する中、ただただ必死に先生に喰らいついていく日々でした。夢中でフルートを吹き、先生の仰ることを演奏として理想的な形としようと模索するものの、空回りしているような、自分のお腹の中に音楽が溜まっていかないような感覚を抱いていました。シュテーゲ先生に出会ったのは、ようやく生活にも慣れ、この違和感に腰を据えて向き合わなければ、と思っていた頃です。

そしていざ始まったホ短調ソナタのレッスン。まず新鮮な驚きだったのは、フルートを吹いて示すことを一切されず、全てを言葉のみで伝えることでした。ドイツ語もまだ心許ない中、身体と頭、感性、全てフル回転の、まさにてんてこ舞いでしたが、バロックの語法に始まり、フレーズの行き先、調性感、それに伴う音色の深さ、密度…、あらゆることを緻密に様々なニュアンスで伝えて下さり、そして私が一つ一つの言葉を咀嚼し、想像力を広げた先に何が生まれるか、をじっと待って下さいました。試行錯誤を繰り返す中で、ぎこちないながらも温度や手触りがある何か、を感じた嬉しさを今でも覚えています。
先生が何より伝えたかったのは、音楽が必要とする音を楽譜から聴き、自らの力で立ち上げ、語ること。音楽の外観を装うことばかりに気を取られていた私を、内側へ内側へと導いて下さった先生とバッハの音楽。これからも大切に吹き、いつまでも掘り進めていきたい、思い出の名曲です。

ツェラー先生とシュテーゲ先生と。左から2番目の方は、イサン・ユン研究の音楽学者ヴォルフガング・シュパーラーさん。


…そして忘れてはならない人がもう一人!
いつも教室の机の上に座り、冷静沈着にレッスンをなさるシュテーゲ先生。よく穿いていらしたジーンズの膝に、黄色いニコちゃんマークのワッペンが縫い付けられていました。行き詰ること度々なレッスン中、ニコちゃんを見ることで何度心が軽くなったことか!私の同志でした。ありがとう、ニコちゃん!

<楽譜のご案内>

楽譜ID:337

ソナタ ホ短調 BWV1034

J.S.バッハ

出版社:BARENREITER

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SUZUKI SAEKO
鈴木 佐英子 先生 横浜教室 金曜日クラス 新宿教室 日曜日クラス

国立音楽大学付属高等学校を経て国立音楽大学を卒業。卒業演奏会へ出演。2000年にベルリン芸術大学大学院を首席にて修了。ドイツ国家演奏家資格を取得。卒業演奏会にてベルリン交響楽団と共演。1999年バイロイト国際音楽コンクールに於いてファイナリスト。2002年帰国記念リサイタル、2007年東京文化会館小ホールにてリサイタル、2005年~2021年までバロック音楽のコンサートシリーズ「フルートとチェンバロの愉しみ」を開催する他、主にソロ・室内楽で演奏活動を行っている。これまでにフルートを林ひろみ、杉浦勝彦、大友太郎、クリスティアーネ・ヘルマン、カールハインツ・ツェラー、ロスヴィタ・シュテーゲの諸氏に師事。ムラマツ・フルート・レッスンセンター新宿・横浜講師。

※プロフィールは、掲載時のものとなります。最新情報につきましては、こちらよりご確認ください。

Vol.46 吉田 雅信 先生(次回掲載予定)