フルート豆知識

Repair Room
  • 技術課長 伊藤史安
  • 皆さんが日頃フルートに関して何だろう? なぜ? どうして? と思っていることをお話します。

    技術課長 伊藤史安

Vol.6 水滴によるトラブル防止法

楽器を長い時間吹いていると、楽器から水滴が落ちてきます。よく“つばが流れて”と皆さんおっしゃいますが、これはつばではありません。結露による水滴です。外が寒い時に暖かい部屋の中では窓に結露で水滴がたくさん付きますが、それと同じです。湿度と気温によってどの位結露するかは違うようですが、夏より冬の方が水滴の量は多いようです。
結露の何が問題なのかというと、トーンホールから水滴が流れ出て、パッドが濡れてしまう事が問題なのです。
次の写真を見てください。
よく目にする光景だと思います。このしぐさは水滴のトラブルの元となります。
  • ●写真1

    フルートの持ち方1
  • ●写真2

    フルートの持ち方2

写真1は左手人差し指のCisキーや次のHキーから水滴が出やすく、写真2は右手小指のEsキーから水滴が出やすい持ち方です。普段何気なくしているしぐさですね。
パッドが濡れることでどういう問題が起こるかというと、キーカップの中にはパッドの高さを決める調整紙と呼ばれるいろいろの厚さの紙とパッドが入っています。パッドのフィッシュスキンも何回も濡れたり乾いたりを繰り返しますと、フィッシュスキンが傷んできて、最後には、破れてしまいます。Trキーなどの普段閉じているキーは水滴が溜まったまま気がつかずに、フィッシュスキンがふやけてしまうことがあります。ふやけることで、パッドのトーンホールへの当たり方が変わって、楽器の鳴りに影響することもあります。もし、水滴が出たことに気がついたら、ティッシュペーパーを挟んで水滴を吸い取ってください。ステージの上など、応急的には息で吹き飛ばしても良いと思います。
皆さんからの質問で、「水滴が出たら、クリーニングペーパーで吸い取ればよいですか?」と聞かれます。クリーニングペーパーよりはティッシュペーパーの方が吸水性は良いですし、それぞれ使用目的が違います。

  • ●写真3

    フルートの持ち方3
  • 何より一番大事なことは、写真3のように、水滴が出ないようにキーを上にして楽器を下ろして持つ癖をつけてください。他の管楽器のプレーヤーは管の中の水滴取りをしょっちゅう行なっています。木管の人はスワブを通したり、金管の人は管を抜いて水滴を捨てたりしていますね。

フルートを使われる方は、最後に1回だけ掃除棒を通すだけという方がほとんどだと思いますが、出来れば頭部管だけでも良いので、たまに掃除をしてください。それだけで、水滴のトラブルは減るはずです。
フルートが木管のまま現代まで使われていれば、皆さんはきっと割れに注意するので、しょっちゅう掃除をしているかもしれませんが、金属の木管楽器(?)に進化したために、それ程気を使う必要が無くなって、あまりケアをしなくなってしまったのでしょう。もう一度みなさん考えてみませんか?