生誕200年特別企画

バイエルン放送交響楽団の首席フルート奏者 ヘンリック・ヴィーゼ氏による
魅惑的?!カール・ライネッケのバラードop.288についての3つの考察

2024年は、カール・ライネッケ(1824-1910)の生誕200年のメモリアルイヤーです。
この記念の年に、ライネッケ≪フルート協奏曲≫ op.283の校訂を手掛けたヘンリック・ヴィーゼ氏に≪バラード op.288≫について執筆いただきました。
彼による最新の研究をぜひお読みください。

《バラード》op.288の新版への取り組みを通じて、この作品に関する新たな資料はほとんど見つかりませんでした。今回、唯一新しい資料として発見されたのは、マインツのツィンマーマン出版アーカイブにある、出版社ユリウス・ハインリヒ・ツィンマーマンとマルガレーテ・ライネッケ夫人の間で取り交わされた契約書です。《バラード》op.288の自筆譜は今なお見つかっていません。現時点では、オーケストラパート譜とフルートとピアノのための編曲版の初版の二点のみが、音楽的に重要な資料として残されているものです。残念ながら、これまでに調査されたライネッケの書簡や著作物の中には、この作品についての記述は見つかっていません。

しかし、これらの数少ない資料の中には、まだ多くの探求すべき点があります。この研究の成果が、《バラード》op.288への新たな関心を呼び起こし、フルート・ソナタ《ウンディーネ》op.167や《フルート協奏曲》op.283と同じように人気作品になる一助となることを願っています。

ヘンリック・ヴィーゼ(ミュンヘンにて)

ヘンリック・ヴィーゼ

  • フルートをイングリット・コッホ・デルンブラク、パウル・マイゼン各氏に師事。ドイツ音楽コンクール(1995年)、神戸国際フルートコンクール(1997年)、ニールセン国際音楽コンクール(1998年)、ミュンヘン国際音楽コンクール(2000年)など、国内外の多数の国際コンクールで入賞。1995年〜2006年までミュンヘンのバイエルン州立歌劇場の首席フルート奏者を務めたのち、2006年よりバイエルン放送交響楽団の首席フルート奏者を務めている。

    ソリストとしては、ヘルベルト・ブロムシュテット、クリストフ・フォン・ドホナーニ、マンフレート・ホーネック、マリス・ヤンソンスなど数々の著名指揮者の指揮で、バイエルン放送交響楽団、マッジョ・ムジカーレ・フィオレンティーノ管弦楽団、ベルリン放送交響楽団、NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団と共演。芸術活動は多岐にわたるが、特に室内楽の分野で数多くのCDをリリースしている。

    ザルツブルクのモーツァルテウム大学をはじめ、ハンブルク、ライプツィヒ、ブレーメンなどドイツの音楽大学で長年教鞭をとり、教授にも就任した。

    編集者としてはブライトコプフ&ヘルテル、ユニバーサル出版、ヘンレといった名高い出版社より楽譜を出版。ユニバーサルから出版されたオーケストラ・スタディー『ピッコロ&アルトフルート・オーディション』は、ドイツ音楽出版アワード2021/2022(「ベスト・エディション」)を受賞した。その他に編曲も数多く手がけている。教則本『Vom Klang zum Ausdruck』はツィンマーマン音楽出版社より今秋に出版される予定。

    ヴィーゼは共感覚を持っており、この稀有な自然からの贈り物は、彼にとって重要なインスピレーションの源である。

訳:秋元 万由子

  • 東京都出身。幼少時よりヴァイオリン、マリンバを通じて音楽に親しむ。10歳よりフルートとピアノを始める。高校時代をアメリカで過ごした後、フライブルク音楽大学を経てルツェルン音楽大学(スイス)を満点で卒業。その後ミュンヘン音楽大学大学院にてA.リーバークネヒト氏に師事。

    2018年紀尾井ホール「明日への扉」リサイタルシリーズに出演、好評を博す。

    第9回神戸国際フルートコンクール第4位、第64回ミュンヘン国際音楽コンクール特別賞、第37回スイス・リッド音楽コンクール第2位、第69回ジュネーヴ国際音楽コンクール特別賞、第11回日本ジュニア管打楽器コンクールフルート部門高校生の部金賞など国内外の数々のコンクールで入賞。

    ルツェルン交響楽団、ユンゲ・ドイチェ・フィルハーモニー管弦楽団、PMF(パシフィック・ミュージック・フェスティバル)オーケストラアカデミー、フライブルク歌劇場オーケストラ、タングルウッド音楽祭ヤング・アーティスト・オーケストラにてオーケストラの経験を積む。

    これまでにフルートを北村薫、酒井秀明、平野正子、J.ベンソン、J.グラント、F.レングリ、J.プルチーニ、S.モレル、P.グレールの各氏に師事。ムラマツ・フルート・レッスンセンター講師。