解説
ベームの作品を見直してみると、彼の発明の進化と共に曲の転調の自在さが変わっていることがわかります。例えば、1831年に作曲された有名な 「グランド・ポロネーズ」 は、まだ旧式のキーの多い楽器を想定しているので、ヴィルトゥオーゾ風の難曲ではありますが、フルートに一番基本的なニ長調を中心として作曲されています。しかし、円錐ベーム式フルートを完成させた6年後の1838年に作曲された 「シューベルトの主題によるファンタジー」 では、序奏で変イ長調からロ長調、そし変ホ長調と移調を行ない、主題は変イ長調、中間の Adagio はホ長調と自在な転調ぶりです。ベームの作曲の発想に明らかに、従来のフルートでは不可能なことに挑戦しようとする野心が見られるのです。もともと、初版が出版された時、この曲のタイトルはベームの思い違いで 「ベートーヴェンの主題による」 となっていましたが、ベームにとっては、そのことは大きな問題ではなかったのでしょう(主題はシューベルトの ”Original Tanze” Op.9 D.365によるもの)。序奏はデリケートな味わいとスケールの大きさを持った音楽。主題は、場合によっては、繰り返しで音域を変えてもよいでしょう。変奏は、いずれもフルートの表現の鮮やかさを聴かせるものです。美しい Adagio を経て、終曲ロンド Allegretto では優雅な曲想ですが、息をつかせない展開で曲を閉じます。(解説/三上明子)ニュース
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