解説
グルックによる「精霊の踊り」は、古今東西のフルートのための曲の中でも、白眉と言える存在にある曲のひとつでしょう。1762年にウィーンで初演されたオペラ 「オルフェウスとエウリディーチェ」 の中には、この曲はまだ含まれていませんでしたが、1774年に、パリで新しいヴァージョンとして再演された折に、第2幕第2場の天国の幕あきに加えられました。幸福な精霊の園で美しい花々や静かな小川や茂みの舞台で精霊たちがヘ長調のメヌエットを踊ります。この至福のメロディーは、中間部でニ短調に転じ、ヴァイオリンの16分音符の伴奏で、フルートのソロにより、非常に内面的な音楽へと誘われます。格調の高い中に絶望の淵を垣間見るような、フルートにのみ表現できる響きではないかと思います。グルックが、パリの聴衆のために、この曲を加えたのには、どんな考えがあったのでしょうか。ヘ長調からニ短調に転じる時に、原版には、「同じ速さで」と楽譜に記されているので、余り遅くし過ぎない方がよいと思います。ヘ長調での清らかな響きとニ短調での内面的な響きの移り変わりが、この曲の永遠の魅力です。(解説/三上明子)ニュース
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