解説
このソナタは、ギリシャ神話に出てくる牧神パンの笛を題材とした親しみ易い曲です。顔は人間でも角をもち、四肢は山羊のパンは、野原や森を駆け回ったり、小川のほとりでまどろんだり、気ままな暮らしをしていますが、このソナタでは、そのようなパンの姿が生き生きと描きだされています。牧神パンの吹く笛は、葦を何本も並べて作られていましたが、このムーケの曲では、どのような歌を聞かせてくれるでしょうか。「パンと羊飼いたち」 牧神パンの大事な役目の1つは、羊を守ることでした。冒頭から心地よさそうに歌いだすメロディーが転調をしながら一段落すると、牧歌調の穏やかな部分が現われます。つなぎに小川の流れを思わせる音階が続き、フルートとピアノの右手が対話を始めます。このソナタの原版 LEMOINE 社の楽譜には、ギリシャの叙情詩人アルセーの牧羊にいそしむパンへの讃歌が引用されています。この楽章では、2分の2であることを忘れずに、テンポの運びに留意するとよいと思います。「パンと小鳥たち」この楽章では、小鳥の歌声を笛に模した自由な雰囲気の音楽となっています。アダージョのゆったりとしたテンポの中で小鳥の歌声のパッセージは生真面目に音価を守るのではなく、多少の伸び縮みがあった方が自由でしょう。小鳥のさえずりに対しては、叙情的なメロディーが配されて対照をつくっています。LEMOINE版には、ギリシャの女流詩人アニュテの詩が引用されています。「パンとニンフたち」ニンフは、やはりギリシャ神話に登場する山や川、木などの精霊で若く美しい女性の姿をしています。パンは、美しいニンフたちを見つけると、追いかけごっこをしたり、戯れたりして楽しいひとときを過ごしますが、この楽章ではそのような光景が描写されています。(解説/三上明子)ニュース
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