ムラマツ・フルート・レッスンセンター講師による
~おもひでの名曲~
Memories Of YouVol.4 野原 千代 先生
尹 伊桑(ユン イサン)
歌楽(ガラク)
「もっとキムチパワーで!」大学4年の夏休み前、私は卒業試験の選曲に奔走していました。
友達同士でどんな曲にするか話したり、先輩方が卒試で演奏した曲をリサーチしたり、色々なレコードを聴いたりしながら、試験曲を模索していました。
そんな中、レッスンの先生にも意見を伺おうと思い、「先生、卒業試験の曲なんですが、どんな曲が、、、」すると私が質問を終える前に「歌楽にしよう」「イサン ユンのガラク」と仰ったのです。
イサンユン?ガラク?聞いたことのない作曲者と作品名に少し戸惑いました。
一体どんな曲なのだろう?と言う思いに駆られながら譜読みを始めたのですが一向に進まないのです。
何故なら、私が思い描いていた「フランスの、、、」「ロマン派の、、、」「美しいメロディーの、、、」とは、まるで別世界の曲だったからです。
尹 伊桑(ユン イサン)は韓国の作曲家で、1963年に作曲された『歌楽』は[ ppppp ][ fff ]の音量幅、ジェットコースターのように上下行する音形、そして「静」と「動」が繰り返され、始終緊張感を保たなければならない曲です。テクニックもさることながら、私は[ fff ]の表現や音色に苦戦していました。
ある日のレッスンで先生が興奮気味に、「そこはもっとキムチパワーで!」と。
ハッ!とした瞬間、燃えるような、発汗するような、熱い気持ちで吹いた[ fff ]の音に対して、
先生が「そう!!!」と一言。
長い時間をかけて練習し、じっくり向き合い、試行錯誤し、この曲の難しさや表現の幅広さ奥深さを知り、試験の頃には楽しいと思えるまでになった思い出の一曲です。
レッスンで先生が仰ったキャッチーな一言。
私も心に響く言葉やキャッチーなフレーズで、わかりやすく楽しいレッスンとなるよう努めたいと思います。
NOHARA CHIYO
野原 千代 先生 /横浜教室 火、金曜日クラス
野原 千代 先生 /横浜教室 火、金曜日クラス
国立音楽大学附属音楽高等学校を経て国立音楽大学を卒業。卒業時に武岡賞受賞。 読売新人演奏会出演。東京文化会館オーディション合格。
これまでに、篠崎史子氏(ハープ)と共に、ルーマニア・ジョルジュディマ・フィルハーモニー交響楽団と共演する他、ソロ、アンサンブルで演奏活動する。
国立音楽大学附属高等学校・中学校講師、ムラマツ・フルート・レッスンセンター講師。
フルートを大友太郎、パウル・マイゼンの各氏に師事。
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