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ムラマツ・フルート・レッスンセンター講師による
~おもひでの名曲~

Memories Of You

Vol.10 大久保 香 先生

中田喜直
日本の秋の歌(主題と変奏曲)

「中田先生にお願いしてフルートの曲を書いていただいたのよ。フランス人が一回演奏したけどあとはまだ誰もやってないの。大久保さん、あなた、吹いてちょうだい。」

そう言って、京都で音楽企画をやっておられた朝倉康子さんから中田喜直先生自筆譜のコピーが送られてきました。「日本の秋の歌」と題されたその曲は、「ちいさい秋みつけた」のメロディを主題にした変奏曲。変奏曲というと、曲が進むにつれて技巧的に難しくなり途中から「もー吹けない!」ってなるものが多いのですが、この曲は平易に書かれていて中級程度なら十分演奏できます。変奏は6つありますが「あのメロディがこんな風に変奏するんだ」と新鮮な感動を覚えました。特に第4変奏は、それまでの短調が長調に変わり、あたたかな陽だまりの中にたたずんでいるような気分になって大好きです。
朝倉さんによると私が「初演者」ということになるそうですが、初演の場所は熊本県八代の山の中の小さな小学校。そこには、私が小学5年生でフルートを始めるきっかけとなった吹奏楽部の清田公介先生が校長となって赴任しておられました。音楽室に集まった子どもたちは純朴そのもの。「アルルの女」は知らなくてもこのメロディは知っているんですね。私のフルートを、目をキラキラさせて聴いてくれました。演奏の謝礼として受け取ったのは村特産の晩白柚(ばんぺいゆ)。ボーリングの玉のように大きくて丸い晩白柚はみずみずしくて香りが豊かで、今でも忘れられない味です。

その後この曲は出版され、中田先生ご自身が出演される「中田喜直の宇宙」というコンサート(楽屋前、中田先生とのおもひでの写真)で、ピアノのアルバート・ロトさんと一緒に国内数か所で演奏しました。出版譜が出て驚いたのは、後半の変奏曲の順番が入れ替わって曲の終わり方が全く異なっていたことです。3年後にも改訂版が出されましたが、ここでも終わりの部分にいくつかの変更が加えられていました。この半年後に先生は他界されてしまうのですが、作曲者の言葉として楽譜の解説にこう書かれています。「現代音楽の多くが、メロディがなく、一般の人々から離れてしまった傾向にあるので、このような曲も必要だと思っている。」

夏の思い出、めだかの学校、雪の降るまちを・・・誰にでも親しまれるメロディを数多く残してくださった中田喜直先生の貴重なフルート作品、多くの方に演奏していただきたいと願っています。

<楽譜のご案内>

楽譜ID:23153

日本の秋の歌(主題と変奏曲)

中田喜直

出版社:HAPPY-ECHO

※ご好評につき完売いたしました。現在、再販未定です。

OKUBO KAORI
大久保 香 先生 大阪教室 火曜日クラス

京都市立芸術大学音楽学部卒業。同大学院音楽研究科修了。フルートを渡辺義仁、青木明、白石孝子、伊藤公一の各氏に師事。独奏の他、主に関西のオーケストラや吹奏楽団の客演奏者として活動。室内楽ではアンサンブルシュテルン、レトワールブランシェ管楽合奏団、アンサンブルあお のメンバーとして公演を続ける。’19年より京町家カフェにてマンスリーコンサート「笛遊び」を開催。

※プロフィールは、掲載時のものとなります。最新情報につきましては、こちらよりご確認ください。

Vol.11 濱田 千枝 先生(次回掲載予定)