ムラマツ・フルート・レッスンセンター講師による
~おもひでの名曲~
Memories Of YouVol.21 森岡 広志 先生
M.モイーズ
24の旋律的小練習曲と変奏
1973年、マルセル・モイーズのスイスでの講習会があると聞き、参加しました。その前年から旅行会社が企画し、講習会とヨーロッパ観光を組み合わせたツアーが始まっていたのです。モイーズについては、もちろん名前は知っていたし、ムラマツから出ていたモイーズのLP も聴いていたとはいえ、それほどモイーズの演奏に興味を持っていたわけではありませんでした。「フルートの神」と言われているし、もう当時84歳という高齢でしたので聴いておいてもいいかな、という程度でした。それよりも、初めての海外旅行、初めてのヨーロッパということで、高校生の私はとてもこのツアーを楽しみにしていたのです。
まず素晴らしいと思ったのは、この短いわずか16小節のメロディーに対するモイーズの分析です。時にはモーツァルトの2つの協奏曲を引用しながら、この短いメロディーがどのように大作曲家の名曲に応用できる大切な原則を含んでいるか、どのように演奏すれば美しくなるかを、ダンスと歌で、とてもわかりやすく説明してくださいました。さらに練習曲の1番について「この曲は、病気の子供を持つお母さんが子供が早く良くなりますようにと祈っているところなんだよ」とおっしゃって祈っている様子を見せてくださいました。曲の分析と曲に込められた感情を考えて演奏することを学びました。この練習曲の1番から5番までレッスンしていただきましたが、それぞれの曲に音楽の原則が含まれていて、この練習曲も、ダンスと歌のモイーズも大好きになりました。

講習会でモイーズ先生と
2010年に私は脳梗塞になり右半身が思うように動かなくなりました。その時まず取り出したのが、この練習曲です。2、3年かかって不完全ながら1番から5番は吹けるようになりました。レッスンも再開しましたが、いつもモイーズのことが頭に浮かびます。もちろん同じようには全然できないし、ダンスも踊れませんが、曲の分析と、込められている感情を伝えるレッスンをするように促してくれたのが、この「24の旋律的小練習曲と変奏」です。


森岡 広志 先生 /新宿教室 火、金曜日クラス
桐朋学園大学に入学。林リリ子、小出信也の両氏に師事。1976年渡仏。ヴェルサイユ国立音楽院に入学し、J.カスタニエ氏に師事。1979年同院を金賞で卒業。1981年パリ・エコール・ノルマル音楽院に入学。C.ラルデ氏に師事。1983年演奏家資格を得て卒業。この間、サンマキシマン音楽祭、サンポールドヴァンス音楽祭、他フランス各地で演奏会を行った。1987年よりメゾンラフィット音楽院教授を勤め、1988年に帰国。ムラマツ・フルート・レッスンセンター講師。

※プロフィールは、掲載時のものとなります。最新情報につきましては、こちらよりご確認ください。