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ムラマツ・フルート・レッスンセンター講師による
~おもひでの名曲~

Memories Of You

Vol.51 鈴木 茜 先生

E.シュルホフ
フルート・ソナタ

ドイツでの留学生活の終盤、最後にステージで演奏したソロ作品が、E.シュルホフ作曲の「ソナタ」でした。当時私は、1年間という留学としては短い期間の中で、日本とヨーロッパの演奏スタイルの違いや、目指すべき音楽の方向性に悩んでいました。師であるR.グライス=アルミン先生にも、「もう一つ殻を破ってほしい」と言われ、演奏会の課題として与えられたのがこの「ソナタ」だったのです。先生の書き込みが多く残るこの譜面は、だいぶ使い古した今でも私の宝物です。
「殻を破る」というのは、その時の私にとって大変難しい課題でした。自分では一生懸命表現して演奏しているつもりでも、先生からは「もっと、もっと」と言われ、音色の変化やリズムの捉え方など何から何まで、少しずつ遊び心が足りなかったのです。まるでこれまでの自分の生き方そのものが投影されているようでした。今思えば、日本では触れたことのなかったシュルホフという作曲家の持つ前衛的、時に民族的、そしてジャズ的な要素は、私に求められていたものに完全に合致しており、課題として完璧だったのです。

共演したピアニストの先生からも和声に関するたくさんのアドバイスをもらい、民族音楽や舞踊の動画を見て勉強し、イメージトレーニングを重ねていきました。そして、初夏の爽やかな風を感じる6月の夕方、この曲の世界観を表現しきるという集中力の高まりから、一種の清々しさのようなものを感じて、ステージに立ちました。半年前に初めてドイツで演奏したときの緊張感とは全く違う、温かな会場の空気や聴衆と一体になったような感覚はいまだに忘れられません。演奏後には、多くの地元のお客さんに声をかけていただき、先生からも最大級のハグをもらいました。「もう少しドイツで勉強したい」と強く思った、帰国2ヶ月前の一夜でした。

シュルホフの「ソナタ」を演奏したステージ


留学経験で得た学びはたくさんありますが、やはり一番はその場にいないと感じられない「空気」だと感じます。湿度の違いという物理的な空気の差も音楽には大きいですが、クラシック音楽の生まれ故郷での生活経験そのものが、現在に至る私の音楽人生に大きな影響を与えていると日々実感しています。シュルホフの「ソナタ」は、楽譜を開くたびにその原点を思い出させてくれる、大切な『おもひでの名曲』です。

<楽譜のご案内>

楽譜ID:17858

フルート・ソナタ

E.シュルホフ

出版社:CHESTER

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SUZUKI AKANE
鈴木 茜 先生 横浜教室 木曜日クラス 新宿教室 水・金曜日クラス

国立音楽大学演奏学科を経て、同大学大学院修士課程および博士後期課程修了。ドイツ後期ロマン派の作曲家・S.カルク=エラートの研究で博士号を取得。2013年DAAD奨学金を得てドイツ・ライプツィヒへ、2014年協定留学生としてドイツ・カールスルーエへ留学。
第15、16回びわ湖国際フルートコンクール入選、第38回フルートデビューリサイタル出演。
これまでに大友太郎、佐久間由美子、大木淳子、レナーテ・グライス=アルミンの各氏に師事。現在、桜美林大学、国立音楽大学、ムラマツ・フルート・レッスンセンター講師。

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Vol.52 飯澤 優美 先生(次回掲載予定)