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~生誕225年企画~
フランツ・シューベルト

Franz Schubert

第3回 「しぼめる花」より、<第2、3、4ヴァリエーション>


※今回の内容は、楽譜と合わせてご覧いただくことをお薦めします。(関連楽譜はこちら

<第2ヴァリエーション>

―――フルートとピアノの役割はどのようなものでしょうか。

この作品は、ピアノ伴奏とフルート独奏というような曲ではありません。完全なフルートとピアノの二重奏曲です。特にこの第2ヴァリエーションは、ピアノ主導で書かれています。

―――ピアノのスタッカートの表現はどうするといいでしょうか。

このオクターヴの進行は、ピアニストにとって難しいテクニックが求められます。例えば、1回目は長めのスタッカートで、2回目は少し短めのスタッカートで演奏する、またはその逆で演奏するなど変化をつけた演奏もいいですね。もしくは、全く同じように演奏するのもいいでしょう。

―――110小節目からのフルートはどう演奏するといいですか。またトリルの後打音について教えてください。

トリルの後打音は付けても付けなくてもいいと思います。しかしEとCisのトリルは両方とも同じ速さで演奏するよう心がけてください。

―――112小節目のトリルの上に♮が書かれていますが。

楽譜によっては112小節目のCisの上に♮が書かれています。ということは、Cis→Dのトリルになりますが、シューベルトは♮を書いていません。ピアノパートの112小節の1拍目を見ると、それまではDis の音になっています。ですから、Cis→Disかもしれません。しかし112小節のピアノパートのバスの2拍目を見るとDになっていますね。どちらが合っているかは演奏する皆さんに託します。

譜例1「現代譜と自筆譜の比較」

―――トリルの練習方法を教えてください。

これは非常に難しい質問です。人間の薬指と小指は非常に動きが悪いです。トリルを練習しすぎてシューマンのように指を壊してしまうことがありますので、長時間かけて薬指や小指の訓練をするのはよくありません。それをよく考えて短時間で練習する事が大切です。 例えば、始めは2つの音で、次に2つの音を往復、そして今度は2往復するなどの練習をしてはどうでしょうか。人によって練習方法が違うと思いますが、少しでもこれらが速くなるような訓練が必要だと思います。でもあまりやり過ぎないように。 私の師匠であり、友達であったオーボエのハインツ・ホリガーさんは、若い頃から指を速く動かすために指に鍵を巻いて、指を重くして練習したりしていましたが、そこまでやる必要はないかと思います。

―――トリルの指の動きは、均等にすべきでしょうか。

もちろん均等に速さを同じようにしたいですね。動く指だけ速く、動かない指はゆっくりと不均等にならないように。

―――110~116小節の16分音符にスラーが付いている音符と付いていない音符がありますが。

そうですね、表情を変えたかったかもしれません。

―――現代譜では繰り返し記号がついていますが、114小節目はシューベルトが2拍書き忘れていますか。

この曲は8小節単位の音楽で出来ています。ですから110小節目から小節を数えてみて下さい。 7小節しかありません。恐らくシューベルトの勘違いでしょう。114小節のモティーフが同じ形で1小節(2拍)足りないと思います。ですからこれは新しい譜面に記されているように1小節(2拍)おなじ形を加えて演奏するのが良いと思います。

―――第2ヴァリエーションのポイントをお願いします。

最初の8小節はfで強い音楽ですが、繰り返しの後の102小節目はpになっています。最初のfの強さと、それからpの優しさとか繊細さとかそういった表情が後半には出てきます。このコントラストが特徴で面白い。それをいかに皆さんが表現できるかにかかっています。 冒頭は、ピアニストが待ってました!と弾き出すオクターヴの進行ですね。これに対して繰り返しの後はバスが単音になって動きます。pでとても素敵なメロディですので、そのコントラストの表現が大切だと思います。また110小節から再びオクターヴの進行になりますが、これもppと書いてあります。はじめのpのものと違った表情が求められます。

<第3ヴァリエーション>

―――ピアノの6連符と上手く合わせるコツはありますか。

まずゆっくりからお互い聴き合い、確かめながら練習をすることですね。それができるようになったら、このメロディをいかに上手く歌えるかを考えてみましょう。

―――メロディの表情についてはいかがでしょうか。

多くのメロディは、言葉の文法に置き換えることができます。譜例2 をご覧ください。モーツァルトの時代までは、ある意味モティーフによって形容詞あるいは名詞などに分かれることがあります。モーツァルトまでの古い音楽は形容詞よりも名詞の方が大切ですが、ロマン派の時代になってからは、最初の形容詞にあたるものが名詞よりも大切になります。全てがというわけではなくて例外もあります。例えば、117小節目のGisの音はより大切に響かせ、その後のFis-E-Dis-Cisは1音ずつおしゃべりするような表情が欲しいです。上手くアゴーギクを使って素敵な歌にしたいですね。ピアノの6連符は淡々と弾かれるべきだと思います。

譜例2「言葉の文法に置き換えた考察」

―――125小節目のピアノにアクセントがあります。また同じように127小節目と140小節目のフルートにもアクセントが書かれています。どのようなアクセントですか。

125小節目と127小節目はsfのようなアクセントが欲しいですね。140小節のアクセントはワイングラス型のアクセント(第2回参照)の方がいいと思います。

―――第3ヴァリエーションのポイントをお願いします。

このヴァリエーションは歌そのものです。最初にpと書かれているだけで、その後はダイナミックの指示が何も書かれていませんが、優雅に優しさをもって美しい歌に仕上げたいですね。122小節目からは、ピアノとフルートが同じ形態で書かれています。それらはぴったり合わせるようにしたいです。他にも126、130、134、140小節目もピアニストと息を合わせて演奏しましょう。しかし、バスの16分音符の6連符は、淡々と演奏されていいと思います。 またこの曲は、最初から音程が難しいところがあります。117小節目をご覧ください。 最初のHは普通に吹いていいですが、Cisの音はどうしても高くなりがちですから音程を下げて、Disの音は下がりがちですので音程を上げるように。それからEの音も下がりがちですので上げるようにし、Gisは普通に。H-Cis-Dis-E-Gisだけでも音程の難しいものがあります。よく自分で自分の出している音を聴きながら調整できるようにしましょう。

<第4ヴァリエーション>

第3ヴァリエーションの終わりはリタルダンドし、直ぐ第4ヴァリエーションに入りましょう。その時、ピアニストは自分の番だ!と興奮してこの第4ヴァリエーションに入りますので、あんまり間を空けずに演奏したいですね。

―――クロマティックの連符の時に指が滑ってしまいそうです。練習方法があれば教えてください。

以前もお話しましたが、速いパッセージはとてもゆっくりのテンポから付点を付けたり、逆付点にしたり、徐々に速くなるように練習してください。特に速い形は音が崩れやすくなります。ですから、自分が出している音をよく聴いて練習することが大切です。

―――第4ヴァリエーションのアドバイスをお願いします。

ピアノパートの142小節目に出てくる1拍目のバスのEの音が聴こえ難いです。同じように146小節目も、このEがある程度聴こえるように演奏しましょう。 次に、フルートパートで150、152、156小節目の最後の音にアクセントがついていますが、これはおそらくディミヌエンドの間違いだと思います。何度もオリジナルの譜面を見ましたがどうも疑わしい。私はディミヌエンドだと思って演奏しています。このフレーズの最後にアクセントって、どうも腑に落ちません。ですから、オリジナルの楽譜と現代譜をよく見比べて演奏しましょう。

譜例3「150、152小節目、最後の音のアクセント(自筆譜)」

次回は、第5ヴァリエーションからお話いたします。

<関連楽譜>

NISHIDA NAOTAKA
西田 直孝(フルート)

桐朋学園大学に入学し、吉田雅夫、斎藤秀雄の両氏に師事。卒業後、ドイツ・フライブルグ国立音楽大学に入学。オーレル・ニコレ氏に師事。同大学在学中DAAD西ドイツ政府奨学金を得る。ソリストとしてダルムシュタット現代音楽祭、グラーツ現代音楽祭などで演奏。卒業後イスラエル・チェンバー・アンサンブルの首席フルート奏者として迎えられる。その後チューリッヒにおいてアンドレ・ジョネ氏に師事。アーガウ州立教育大学講師を経て1976年帰国。
パン現代音楽コンクール1位入賞の他、ロッテルダム・ガウデアムス国際現代音楽コンクール、ロワイアン国際現代音楽コンクール、ミュンヘン国際音楽コンクール等に入賞及び入選。ソロ活動のほか、室内楽奏者としてホリガー、ヘフリガー、ロス・アンヘルス各氏等と共演。協奏曲のソリストとしてベルティーニ、ベリオ、マリナー、小澤征爾各氏等と共演。元神戸女学院大学教授。

※プロフィールは、掲載時のものとなります。

Vol.4(準備中)