解説
作曲家の解説によると、タイトルの「聖玻璃の風」(せいはりのかぜ)は、宮沢賢治の詩『春と修羅 - mental sketch modified -』の一文から取ったもので、透き通った4本フルートの響きと木管楽器特有のテクニックを活かした楽曲を制作したいと考えたとのことです。「玻璃」とは水晶の意味であり、聖なる水晶のような透き通った風を指すようです。単一楽章の三部形式で書かれ、前半のModeratoは4度累積和音 [(Cis)-Fis-H-E-A-D-G] の分散跳躍動機が乱舞し、次に現代ラテン風リズムの軽妙な4(5)度和音を合成したオスティナート伴奏 [〔E-H〕-〔D-A〕-G-A-〔H-Fis〕] に姿を変え、同じ音列からメロディーと対旋律が生まれ、変容し対話します。時折、急速なループ状の上下行音階が吹き荒れます。中間部のAdagiettoからは累積和音に [Cis] が加わって古風な旋法を形成し、持続トリルの中にBreath noiseを交えて民謡風の牧歌旋律が歌い、乱舞する跳躍動機と対話して、印象派的な美しい情景描写をしています。後半では、前半部がさらに姿を変えて多彩で重厚な響きとなり、最後は冒頭の動機が回帰して、風が吹き止みます。山下久幸氏は山梨大学大学院教育学研究科を修了し、作曲を藤原嘉文氏に師事しています。静岡、山梨を拠点にして、主に吹奏楽関連の創作活動をしています。(解説/佐野悦郎)ニュース
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