スタッフのおすすめ

30000点以上もある中から、ムラマツのスタッフが「これは!」と思う楽譜をご紹介します。

水辺の唄(4Fl)

荒井亮介さんは国立音楽大学を卒業したフルート奏者、作曲家で、主にフランスのクラシック音楽やジャズ、ラテンの要素を取り入れた楽曲を作曲されています。
この水辺の唄は、2024年3月に出版されました。 日本各地にある美しい水辺の風景を描いた4重奏の作品です。 3つの楽章から成り、1楽章「雪の雫」は、雪解け水が集まり川の流れとなる様子。涼しげに流れるような旋律がとても美しいです。 2楽章「靄の中から」は、靄のかかった湖から不思議な声が聴こえる幻想の様子。途中から4分の5拍子となりリズミックな曲調へと変化します。 3楽章「都の灯り」は、人々で賑わう都の様子。軽快なリズムや転調をしながら、爽やかな雰囲気で曲を締めくくります。 フルートの音色が水辺の風景とマッチしているので、情景を想像しながら演奏していただくとより楽しんでいただけると思います。 4人のハーモニーの美しさや、リズムの変化も見せ場となるので、アンサンブルコンテストにもお勧めさせていただきたいです。 演奏会のレパートリーとしても、爽やかな曲調が演奏会に色を添えてくれるのではないでしょうか。

【中級者向け】演奏時間:約6分30秒  (NY)

ロマン派初期のフルートオリジナル作品です。(Fl.Pf)

フランツ・ダンツィは1763年マンハイム生まれのロマン派初期の作曲家です。現在では室内楽作品がよく知られています。ウェーバーと親交があったダンツィはオペラやジングシュピールを残していますが、多くは忘れられています。しかし2023年の毎日学生音楽コンクールの高校の部の課題曲に「フルート協奏曲第2番 d-moll Op.31 商品ID:7202」が選ばれ、学生さんの中には演奏したことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
さて、この曲はフルートのために書かれ、急緩急の「第一楽章:Larghetto – Allegretto」「第二楽章:Larghetto」「第三楽章:Polacca」からなる3楽章構成になっています。 第一楽章はゆったりとしたd-mollの16小節の導入部から明るいAllegrettoにつながります。6/8拍子の軽快なリズムはそのキャッチーなメロディも相まって爽やかな雰囲気です。 第二楽章はF-DURの叙情的な美しい旋律です。フルートのみならずピアニストも気に入ることでしょう。 第三楽章はD-DURのPolacca(ポロネーズ)で快活な明るい踊りのまま終わりへと向かいます。
全体的に楽しく明るい雰囲気となっており、演奏会で取り上げればプログラムに華を添えてくれるでしょう。

(MR)

ピッコロ・ニューレパートリー(Pic.Pf)

今回ご紹介するおすすめ楽譜は、ペンシルベニア州フィラデルフィアにゆかりのある人物を題材に作曲されたピッコロ作品です。人物の背景を知ることでこの作品の理解を深めて演奏できるでしょう。ピッコロの新しいレパートリーをお探しの方におすすめです。
T.Vincent Persichetti
ヴィンセント・パーシケッティはフィラデルフィア音楽院で作曲とピアノを学び、交響曲をはじめ室内楽作品を残しています。ピッコロのための≪パラブル第12番≫≪クリスマス賛歌≫≪交響曲第7番≫より“Andante”のピッコロ・ソロの三作品にインスパイアされています。2つの短い動機を発展させたピッコロのカデンツから始まります。
U.John Coltrane
ジョン・コルトレーンの名盤『至上の愛A Love Supreme』のメロディを引用した作品で、自由な出だしの後、“Giant Steps”を引用。“Giant Steps”の複雑なコード進行とハイテンポな曲調を取り入れた第2楽章。フィラデルフィアにはコルトレーンが住んでいた家が今も大切に残されています。
V.Marian Anderson
フィラデルフィアで生まれたコントラルト歌手、マリアン・アンダーソンの“Sometimes I Feel Like a Motherless Child”をアレンジしています。ゆったりとしたテンポが彼女の歌声とマッチするようで素敵なメロディです。歌手でもありますが、人権に関する偏見や問題と向き合い、数々の功績を残しました。
W.Benjamin Franklin
ベンジャミン・フランクリン(1706-1790)は、アメリカの政治家、物理学者で現在の100ドル札に使われています。ガラス製の楽器「ガラスハーモニカ」を発明したフランクリンにちなんだ作品で、ピアノのサスティンペダルで長いフレーズ感を表現しています。
X.Betsy Ross
諸説あるようですが、ベッツィー・ロス(1752-1836)はアメリカの星条旗作成に関わりのある人で、彼女の物語はアメリカで語り継がれるほど有名だそうです。アメリカの愛唱歌をメドレーでリズミカルに締めくくります。

【中・上級者向け】TO 

ゴーベールに捧げられた小品(Fl.Vn.Pf)

フランス近代の作曲家、指揮者だったアンリ・ラボー(1873-1949)はパリ音楽院の院長も務めた人物でした。J.-L.チュルーの後任として1860年から68年までパリ音楽のフルート科教授を務めたルイ・ドリュス(1813-1896)はラボーの祖父にあたります。
この「アンダンテとスケルツェット」は1899年に作曲され、フィリップ・ゴーベールに捧げられました。「アンダンテ」では、ヴァイオリンが奏でる子守歌のような優しく甘美な旋律がフルート、ピアノへと引き継がれ、最後は静かに消えていきます。「スケルツェット」は対照的に速いテンポで元気に動き回る中、「アンダンテ」のモチーフ断片がヴァイオリンで奏でられ、3人そろって最後まで駆け抜けます。3分半ほどの短いかわいらしい小品です。ぜひ演奏してみてください。
【中級者向け】演奏時間:約3分30秒(B)