フルート豆知識

Repair Room
  • 技術課長 伊藤史安
  • 皆さんが日頃フルートに関して何だろう? なぜ? どうして? と思っていることをお話します。

    技術課長 伊藤史安

Vol.3 H足部管について

なぜH足部管はあるのでしょう?
H(ハー)管と呼んだりしますが、ドイツ音名でH(シの音) まで出るものをこう呼びます。アメリカではB-Foot(ビーフット)とよびます。
私が学生の頃には、まだH管を使っている人は少なかったと思います。プロの中でも一部の方が使っているだけでした。最近は音大生や音大を目指している高校生の方たちもH管の楽器をお使いになっている方が多くなってきています。
  • フルート写真
  • H音イラスト
クラリネットやホルンやトランペットの等の場合、B管やA管やF管等と呼ぶ場合は「調性」を意味しています。ですから、同じ指使いで出てくる音はまったく違います。フルートの場合、ただ最低音が1つ下のシの音が出るだけなのでお間違えのないように…。
ドップラーの曲(ハンガリー田園幻想曲・ヴァラキアの歌など)には低いHの音が出てきます。これは、このHの音がメロディーに必要で使われていますが、H足部管を使用する目的はそれだけではありません。よくオーケストラの1番吹きの人がH足部管の楽器を使っているのをご存知ですか? 理由のひとつに、高音域の音を上ずらないように安定して出すためにH管が適しているそうです。
例えば、ピッコロは音程を取るのが難しいですよね? それは管が短いからです。H管をお持ちで無い方は厚紙を丸めて35mm長くなるように足部管に押し込んで試してみてください。H管の音色を感じていただけると思います。ハンガリー田園幻想曲はそれで演奏できるはずです。
  • ●円内がギズモキー

    ギズモキー写真
  • Hの時に押すキーの所に小さな押さえが付いています。ギズモキーという名のキーですが、これは最高音のCを出すときに使います。H管の長さがCを出す倍音を作るのを邪魔しているのですが、ギズモキーを押さえることでピアニシモでも楽に出すことができるようになります。

手の小さい方は、小指をピンと伸ばしても届かなく苦労している方が多いようですが、なかなか楽ではありませんので、右手の支えのポジション・位置などを考えてH管に慣れる必要があります。
ランパルやラリューをはじめ多くのフランス人は音の明るさや軽やかさが理由でC足部管を選んでいますし、中音域の音が暗くなるとか、楽器が重くなるという理由からC足部管を使う人もいらっしゃいます。その辺は好みの問題かもしれませんが、何でも付いている楽器が万能ではないということです。ご購入の際は、試奏などをしていただいてお選びください。