皆さんが日頃フルートに関して何だろう? なぜ? どうして? と思っていることをお話します。
技術課長 伊藤史安
●フレンチモデル
●カバードモデル
リングキーとはベームが開発する以前に、リングの付いた部分を直接押さえる(クラリネットでは現在も使われています)キーの事を指しています。今の日本ではリングキーというとフレンチモデル、つまり穴開きのキーを指しています。誤解のないように英語ではリングキーの事はOpen-Holeと呼びます。
リングキーとカバードキーの違いは一目で分かりますが、なぜこの2つの仕様があるのでしょう?
現在のフルートの形ができる前の話になりますが、フラウト・トラベルソから始まり、トーンホールを直接“指で塞いで演奏する形”が通常の形でした。
●フラウト・トラベルソ
テオバルト・ベームが管の内径を19mmにしてトーンホールを大きくし、大きな音量が出せる現在のフルートを作ったときに、指で塞ぐ事ができるようにカバードキーのフルートが出てきます。フランスではルイ・ロット等が今ではフレンチモデルと呼ばれるリングキーの楽器を作り、それまでの流れを汲んだフルートを発展させてきました。ドイツではハンミッヒやメーニッヒのようにカバードスタイルにEメカ等いろいろなオプションを付けた楽器が主流になりました。それぞれの国民性を感じます。
最近では、初心者モデルがカバードモデル、上級者モデルがフレンチモデルというイメージがありますが、実際、初心者でもリングキーを使っても問題ない場合もありますし、ウィーン・フィルのシュルツさんのように24KのカバードモデルH足部管、Eメカ付きを使用しているプロのフルーテイストもいらっしゃいます。
フレンチモデルを使うメリットは、2つあります。ひとつは現代曲を演奏する上で必ずリングキーではないとできないことがあります。リングの部分だけ押さえたり、指を滑らせて、穴を少しずつ開けていったりと、カバードキーの楽器ではできない奏法を可能にすることができます。もうひとつはリングキーの場合、指がカップの真ん中を押さえて穴を塞がないと音が出ないため、指の形が綺麗になり、指の力が抜けて早く動かせる事ができます。
また、デメリットもあります。指を早く動かすときにうまく塞がらないと音を外してしまったり、足部管のキーで小指が動くときに薬指が動いて息もれして音が出なかったりすることがあります。