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<題材として取り扱っている楽譜>
・ 楽譜ID : 6836 「バッハ・スタディー 第1巻」
・ 楽譜ID : 6837 「バッハ・スタディー 第2巻」 |
昨今のアマチュアオーケストラ等でも、バッハのカンタータや、オラトリオが演奏されるのを見かけます。また、バッハのフルート作品を勉強するのにも、鍵盤楽器(オルガン,クラヴィア)、弦楽器(リュート、ヴァイオリン、チェロ)のための作品群、あるいは、カンタータ、オラトリオ、モテット、ミサ曲と器楽作品との密接な関連性を知り、バッハの作風を総合的に理解する事は、とても重要です。実際、室内楽やコンチェルトなどのなかには、カンタータからの転用あるいは、同一曲の楽器指定変更が頻繁に行われています。
Sinfonia(BWV156)=Klavier Konzert f-moll(BWV1056) ,
Kantate(BWV146)=Klavier Konzert d-moll(BWV1052) ,
Vn Konzert a-moll(BWV1041)=Klavier Konzert g-moll(BWV1058) ,
同じく、
Vn E-Dur(BWV1042)=Klavier D-Dur (BWV1054) ,
2Vn d-moll (BWV1043)=2 Klav. c-moll(BWV1062) ,
Klavier Konzert F-Dur (BWV1057)=Brandenburgisch Konzert No.4 G-Dur ,
その他、
リュートg-moll(BWV995)=チェロc-moll(BWV1011)のSuite ,
リュート(BWV1000)=Vn(BWV1001)のFuga ,
チェロソナタ(BWV1027)=トリオソナタ(BWV1039)等がその例です。
さて、ここでご紹介するBach-Sutudienは、Fritz Schindlerによって、J.S.Bach作品のなかから24曲を選び出し、フルートソロ用に編曲され、1896年にブライトコップ社より出版されました。その後Gerhard Braun氏によって再校訂され、現在は、その改訂版が入手出来ます。Braun氏は、旧Schindler版にはなかった、原曲を明記し、アーティキュレーションにも点線で自らの解釈による一石を投じています。
では、全24曲の出典を表にしてみます。
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原曲 |
No. |
タイトル |
調 |
原調 |
楽器 |
出典 |
BWV |
備考 |
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Heft (I) |
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C-Dur |
Klavier |
ウィルヘルム・フリーデマンのための音楽帳より |
924 |
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c-moll |
Laute |
リュートのための前奏曲 |
999 |
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C-Dur |
Vc |
無伴奏チェロ組曲 第3番 C-Dur (第3楽章) |
1009 |
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G-Dur |
Vc |
無伴奏チェロ組曲 第1番 G-Dur (第1楽章) |
1007 |
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C-Dur |
Vn |
無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第3番 C-Dur (第4楽章) |
1005 |
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C-Dur |
Klavier |
平均律クラヴィア曲集 第1巻 No.1 |
846 |
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h-moll |
Vn |
無伴奏ヴァイオリンの為のパルティータ 第1番 h-moll (第4楽章) |
1002 |
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d-moll |
Vn |
無伴奏ヴァイオリンの為のパルティータ 第2番 d-mll (第4楽章) |
1004 |
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G-Dur |
Vc |
無伴奏チェロ組曲 第1番 G-Dur (第4楽章) |
1007 |
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D-Dur |
Vc |
無伴奏チェロ組曲 第6番 D-Dur (第1楽章) |
1012 |
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G-Dur |
Vc |
無伴奏チェロ組曲 第1番 G-Dur (第3楽章) |
1007 |
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E-Dur |
Vn |
無伴奏ヴァイオリンの為のパルティータ 第3番 E-Dur (第1楽章) |
1006 |
D-Dur |
Orch |
シンフォニア |
29 |
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Heft (II) |
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D-Dur |
Klavier |
平均律クラヴィア曲集 第1巻 No.5 |
850 |
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h-moll |
Vn |
無伴奏ヴァイオリンの為のパルティータ 第1番 h-moll (第2楽章) |
1002 |
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G-Dur |
Klavier |
平均律クラヴィア曲集 第1巻 No.15 |
860 |
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24/16拍子 |
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a-moll |
Vn |
無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第2番 C-Dur (第4楽章) |
1003 |
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C-Dur |
Vc |
無伴奏チェロ組曲 第3番 C-Dur (第1楽章) |
1009 |
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Es-Dur |
Vc |
無伴奏チェロ組曲 第4番 Es-Dur (第6楽章) |
1010 |
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D-Dur |
Vc |
無伴奏チェロ組曲 第6番 D-Dur (第3楽章) |
1012 |
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F-Dur |
Klavier |
平均律クラヴィア曲集 第1巻 No.11 |
856 |
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Cis-Dur |
Klavier |
平均律クラヴィア曲集 第1巻 No.3 |
848 |
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a-moll |
Orgel |
プレリュードとフーガ |
543 |
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B-Dur |
Klavier |
平均律クラヴィア曲集 第1巻 No.21 |
866 |
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g-moll |
Vn |
無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第1番 g-moll (第4楽章) |
1001 |
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これらを本来バッハが指定した楽器別に見てみましょう。( ) 内の数字は、Bach-Studienの番号です。
☆ 鍵盤楽器のための作品8曲: |
オルガン1曲(No.22) ,
クラヴィア7曲(No.1,6,13,15,20,21,23) |
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☆ 弦楽器のための作品: |
リュート1曲(No.2)
ヴァイオリン7曲(No.5,7,8,12,14,16,24)
チェロ8曲(No.3,4,9,10,11,17,18,19) |
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バッハの二番目の妻アンナ・マグダレーナの回想記によると、バッハが最も好んだ楽器は、オルガンで、その次は、クラヴィアだったということですが、バッハ自身の鍵盤奏法は、「手をまったく安定させておくべき」という根本原則のもとに、「彼自身の手は、演奏する際でも、ただ軽く鍵盤にそって、右や左へ滑らせているのと少しも変わらぬ動かしように見え」さらに、「その手は大きくて、非常な力があり、鍵盤の上で人並みはずれて伸ばしひろげることのできる指間隔を持ち、親指か小指で一つの鍵を抑え、ほかの指だけでもその手が完全に自由自在であるかのように、やすやすと弾きこなすことができた。」そして、そうした技術の完璧さが、一に彼の勤勉努力の賜物にすぎず、誰でもただ真面目に一心不乱に努めれば達成できると、繰り返し弟子達に説いたということです。
Bach-Studienの作者Schindlerは、平均律クラヴィア曲集の中から、主に和声進行のものを選択し、特にNo.21にいたっては、原曲右手の 【譜例1】 メロディライン2小節め以降を、 【譜例2】 のように第1小節と同じ音型に変えて、単旋律楽器フルーティストに欠如しがちなハーモニー感覚を養えるようにという配慮が顕著に感じられます。
弦楽器のための曲では、ヴァイオリンとチェロの無伴奏作品が、ほぼ同数選ばれていますが、6曲の無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータは、バッハ自身の手校譜とアンナ・マグダレーナによる写譜の両方が残されているため問題がないものの、6曲の無伴奏チェロ組曲は、バッハ自身のオリジナル手稿譜が現存せず、アンナ・マグダレーナ(1727-1731)のものをはじめ、オルガニストJ.P.Kellnerによる1726年の写譜の他、数種の手稿譜、1824年パリで最初に出版された、Janet et Cotelle社の初版印刷譜が頼りですが、それぞれ、特にアーティキュレーションの書き方に食い違いがあり、疑問が残ります。詳しく研究したい方は、ヴァイオリン・ソナタ、パルティータのバッハとアンナ・マグダレーナの筆跡の違いがヒントになると思います。また、上記の全てのファクシミリを揃え、当時の楽器やBachの他の作品の検証などあらゆる角度からのアプローチがされているベーレンライター社BA5215は、とても参考になります。フルート用の全曲の編曲版も、全音出版から(P.Meisen編) ,
ツィンマーマン社から(F.Michael編), ルデュック社から(J.-C.Veilhan編:現在入手不能) , ハインリッヒスホーフェン社から(J.C.Veilhan編)
など多数出版されています。
BACH-STUDIENから出発して、さらにバッハの奥深い世界へ足を踏み入れましょう。
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