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日本・オーストリア友好150周年特別企画 W.A.MOZART


第3回「モーツァルトらしさ」って何? 
〜フルート作品を例に〜その1

「モーツァルトらしさ」とは?

古典派の代表的作曲家であるモーツァルトなのですから、たとえばこの時代を代表するソナタ形式の曲を、典型的な作曲技法で書いたのでしょうか?

実はそうではありません。彼は、典型的ではありません。
モーツァルトに限らず、偉大な作曲家たちは例に漏れず、セオリーに囚われず、その作曲家の生きた時代の常識を打ち破りながら作曲しました。ありふれたセオリー通りの曲が無数にあった中で、モーツァルトの作品は違いました。

少し変わっているけど、そこがいい!
そんな魅力が、モーツァルトの音楽には溢れています。

ホモフォニーとポリフォニーの融合 〜他の例〜

前回の連載でも取り上げたように、モーツァルトがウィーンでバッハやヘンデルを体験した前と後では、大きく作風は変化しています。残念ながら、フルートの作品を見てみると、≪フルート四重奏曲 イ長調 K.298≫以外は、バッハ体験の前に書かれたものです。

フルート四重奏曲でもっとも有名な≪フルート四重奏曲 ニ長調 K.285≫は、まるでフルート協奏曲のようにフルートが旋律を歌い上げる下で、3本の弦楽器が和音を奏でながら伴奏する、まさに典型的なホモフォニーの書法で書かれています。これに対して、唯一バッハ体験後に書かれた≪フルート四重奏曲 イ長調 K.298≫は、1786年から1787年の間に書かれたようです。その前の1783年に書かれた、モーツァルトの<ハイドン・セット>の中の≪弦楽四重奏曲 第15番 ニ短調 K.421(417b)≫の第4楽章と、≪フルート四重奏曲 イ長調 K.298≫の第1楽章は書法が似ています。両曲とも変奏曲になっているだけでなく、随所にホモフォニーとポリフォニーの融合が見られるのです。

ハイドンから学んだこと

モーツァルトが、ハイドンの≪太陽四重奏曲 作品20≫の6曲から学んだことの一つに、4小節+4小節の規則的なフレーズの回避があります。たとえば、有名な歌曲≪すみれ K.476≫の冒頭は、8小節ではなく1小節短い7小節です。このほか、ピアノ・ソナタ K.283やK.284の第1楽章などにも、このような不規則性が見られます。

また、誰でも知っている≪ピアノ・ソナタ ハ長調 K.545≫の第1楽章のテーマ「ドーミソシードレド」は、主調のハ長調では1度しか現れません。本来であれば、再現部でもう一度主調のハ長調で現れるはずですが、再現部ではなんと下属調のへ長調です。テーマ自体が、たったの2度しか現れないこと自体異例なのですが、その1度しか出てこないハ長調のテーマを、皆が知っていることが、モーツァルトのすごい!ところです。

フルート作品で、セオリー通りでない例も挙げてみましょう。
≪フルート協奏曲 第2番 ニ長調 K.314≫の第1楽章で、本来ならば独奏楽器であるフルートは、オーケストラで冒頭に演奏される第1主題を、あらためて高らかに演奏するのが協奏曲のお決まりですが、フルートは全曲に渡って1度もこの第1主題を独奏することがありません。F.リストの≪ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調≫やM.ラヴェルの≪ピアノ協奏曲 ト長調≫など、ロマン派以降のピアノ協奏曲には独奏楽器が第1主題を演奏しない作品もありますが、古典派の協奏曲で、しかも単旋律楽器が第1主題を演奏しないのは、極めて異例です。


おまけに、再現部が始まってからたった5小節目で減7の和音が鳴り響き、主調のニ長調から離れホ短調に転調してしまいます。再現を期待しているであろう聴衆を裏切ることによって、逆に聴衆に新たな期待を抱かせているかのようです。


モーツァルトのフルート作品ってどれ?

ヘンリック・ヴィーゼ氏と

さらに、「モーツァルトらしさ」を探しながら、フルートが独奏楽器となっている、フルート協奏曲やフルート四重奏曲を見ていきたいのですが、厄介なことに、一言にモーツァルトのフルート作品といっても、これまでの定説は覆ってきています。

私たちフルート奏者のもっとも重要なレパートリーである、2曲のフルート協奏曲(ト長調 K.313、ニ長調 K.314)と3曲のフルート四重奏曲(ニ長調 K.285、ト長調 K.285a、ハ長調 K.285b)は、長い間、裕福なアマチュアフルート奏者フェルディナンド・ドゥジャン(1731〜97)より1777年に頼まれて、1778年までの間に作曲された、という説が一般的でした。しかし、バイエルン放送交響楽団のヘンリック・ヴィーゼ氏(写真)や様々な音楽学者などが、この説に異を唱えていて、ついに、確実にこの間に作曲されたのは、≪フルート四重奏曲 ニ長調 K.285≫と≪フルートとオーケストラのためのアンダンテ ハ長調 K.315≫の2曲だけ、という説が有力となっています。さらに、フルート四重奏曲のト長調 K.285aとハ長調 K.285bの2曲は、モーツァルトの真作でないという説もありますが、真偽のほどはわかっていません。

このような、真贋問題や作曲年にまつわる問題が起こる大きな原因のひとつは、この2曲のフルート四重奏曲と2曲のフルート協奏曲には、真作であることを裏付ける自筆譜が残されていないことです。


フルート協奏曲の出版楽譜のいろいろ

モーツァルトの場合、新モーツァルト全集以降、たとえばランパルなどの巨匠によるいわば独創的な意見などを排除した、なるべくモーツァルトの自筆譜に近い、または自筆譜がなくても、作曲者モーツァルトの意図に近いであろう楽譜(これを一般的には「Urtext=原典版」と呼びます)を出版しよう、という考え方が時代の趨勢となりました。フルート協奏曲の場合は、肝心の自筆譜がないため、歴史的に最も古い、その後の出版譜の大元になった筆写譜や出版譜をもとに編纂された楽譜が主流となっています。とはいえ、時代と共に進化するモーツァルト研究によって、アーティキュレーションや音自体にも疑義が投げかけられる部分もあるため、多くの楽譜では疑義のある部分については校訂報告が載せられ、最終的に「原典版」として出版されています。しかし、厄介なことに、この疑義への解決法は校訂者によって違っていますから、結果的にいくつもの原典版が出版されることになるのです。

深化を遂げる楽譜

このような背景で出版されている「原典版」ですが、この楽譜には元の姿を追い求めたがための問題点もあります。それは、モーツァルトの時代には音楽記号(f、mp、cresc.、rit.など)がほとんど使われず、アーティキュレーションも全体的に少ないことです。つまり、「原典版」のままでは、専門に勉強していない人にとっては、情報が少なく、演奏し辛くなってしまったのです。そこで、その問題をクリアし、演奏者の手助けをするために、できるだけ独創性を排しながら、さらにそれまでのモーツァルト研究を考慮し、そして校訂者が加筆した部分を明らかにして編集された楽譜もあります(例えば、マイゼン編纂版がそれに当たります)。ですから比較的最近まで新しい楽譜が出版されてきました。
このような楽譜の問題を根本的に解決するには、これらの楽譜を比較検討したり(こう言うと大変そうですが、意外な発見が見つかり楽しめるかもしれません)、できるだけ自筆譜が残されているモーツァルトの音楽、そして楽譜(できれば自筆譜がよいです。最近は、インターネットでも閲覧できる自筆譜も増えています)に触れたりして、演奏する人自身がひとつひとつ問題を解決しながら、自分の解釈を深めて演奏するしかありません。

モーツァルトの出版譜の歴史的な変遷
自筆譜 ⇒ 筆写譜 ⇒ 初版譜 ⇒ 旧モーツァルト全集 ⇒ 
巨匠などによって編纂された出版譜 ⇒ 新モーツァルト全集 ⇒ 様々な原典版 
⇒ 再編纂版(マイゼン編纂版など)

「美しい」と感じる心

先に挙げた、2曲のフルート四重奏曲のように、自筆譜がなく、さらに真作であるかどうか自体が疑われているという、いわゆる真贋問題は、私が博士論文でも取り上げた、J.S.バッハの≪フルートとオブリガートチェンバロのためのソナタ 変ホ長調 BWV1031≫などにも当てはまります。しかし、私たちがこのような曲を演奏したり聴いたりする時に忘れてはならないことは、モーツァルトやJ.S.バッハが作曲したから、その曲が「美しい」のではない!ということです。たしかに、モーツァルトやJ.S.バッハは、美しい作品をたくさん残しましたが、誰が作曲したのか、ということよりも、その作品自体の「美しさ」に目を向ければ、私たちはこのような偽作とされる作品でも、「真に」楽しむことができるのです。


竹澤 栄祐

東京芸術大学音楽学部器楽科フルート専攻を経て、同大学院修士課程修了。さらに博士後期課程に進み、「J.S.バッハの作品におけるフルートの用法と真純問題をめぐって」についての研究と演奏で管楽器専攻としては日本で初めて博士号を授与される。
過去9回、銀座・王子ホールにてリサイタルを開催。
アジア・フルート連盟東京の会報では、創刊号から10年以上「J.S.バッハのフルート」を連載中。ソウル大学や上海音楽学院などで講演を行っている。
これまでにフルートを北嶋則宏、播博、細川順三、金昌国、P.マイゼン、室内楽を山本正治、中川良平、故岡山潔、音楽学を角倉一朗の各氏に師事。
現在、アジア・フルート連盟東京常任理事、東京芸術大学非常勤講師、埼玉大学教育学部芸術講座音楽分野教授。

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