解説
ゲオルク・フィリップ・テレマンはフルートを含む多種多様な室内楽作品を数多く残しており、その作品群はこのジャンルの 「宝庫」 となっています。彼の作曲した多くの室内楽曲集からすると、多作家の彼にしては同種楽器による二重奏曲集 [2Fl or (2Rec) ] の数は少なく、主要な作品は、それぞれに特徴を持って書かれた4セット 【TWV:101-135】 のみです。その特徴とは、パリのJ.B.deボワモルティエが流行を追って同種楽器 [2Fl etc.] の重奏曲を一気に集中して作曲したのに対して、ハンブルクのテレマンは器楽曲の分野において多くの曲集で知られる通り、楽器編成法の可能性を生かした様々な作品を手掛け、異なる種類の楽器とのコンビネーションを好んだこと、これらの同種楽器による各二重奏曲集の作曲年代に10年余りの隔たりがあり、時代の転換期に亘ることです。テレマンの二重奏作品は当時の18世紀前半にパリを始めとする欧州各主要都市で出版され愛好されましたが、再び戦後のバロック復興を機にベーレンライター社が ≪テレマン作品選集≫ (1953-1955) を編纂した際に蘇り、その後各社からこぞって校訂実用譜が多く出版されました。作品番号TWVは器楽作品部門の研究者マルティン・ルーンケ氏 (Martin Ruhnke) による主題目録 [Vol.1, 2 & 3 (1984/1992/1999) ] によるものです。この分類項目 「TWV 40 :」 は無伴奏室内楽作品 (通奏低音無し) の項目で、独奏曲と二、三、四重奏曲が含まれています。『6つのカノン風ソナタ 作品5』 第1巻 [G, g, D]・第2巻 [d, A, a] (TWV 40:118-123) は、全6曲ともカノン書法で書かれた3楽章構成 (急・緩・急) の美しく洗練された曲集で、楽器指定は [2Fl or 2Vn or 2 Basse de Viole] となっています。1737年の秋に、テレマンはM.ブラヴェらフランス音楽家達の招待を受け、念願であったパリに向け旅立ち、そこに8ヶ月滞在しました。パリでは20年間の出版権を保証され、予約形式で、有名な ≪パリ新四重奏曲≫ とこの ≪カノン風ソナタ≫ を書きおろしました。初版は1738年にパリ [Boivin, Le Clerc] で銅版印刷され、その仏語タイトル頁に [CANONS MELODIEUX / ? SONATES EN DUO] = 「旋律的カノンによる6つの二重奏ソナタ」 とあるように、二人 [1st& 2nd] の美しい調べのかけ合い (カノン) は見事に調和して爽快です。中でも 「第3番 ニ長調」 「第4番 ニ短調」 は一際人気のある曲で、演奏される機会が多い傑作です。(解説/佐野悦郎)ニュース
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