今もなお多くの人に愛されるフルーティスト、マルセル・モイーズ。
演奏家であり教育者であった彼はフルートへの愛に溢れ、その人柄と演奏は世界中の人々を魅了しました。
フランス革命期にパリ音楽院の設立に関わったドヴィエンヌから歴代の著名なフルーティスト達により古典派、ロマン派、近代へと発展し続けたフレンチ・スクールは現代、モイーズの真摯にフルートと向き合う探究心によって進歩し続けました。
その功績は多くのフルーティストによって継承され続けています。
今ではその実像に触れることはできませんが、彼が残した数々の教則本から彼のフルートへの愛情が伝わることでしょう。
今回、モイーズの教則本を「基礎教則本」「演奏・奏法について」「オリジナル練習曲」「編曲作品による練習曲」「モイーズ校訂による練習曲」に分類してご紹介します。
この機会に彼が残した教則本に触れていただき、彼と共にフルートの上達への道を歩んでみてはいかがでしょうか。


マルセル・モイーズ (1889-1984)

マルセル・モイーズは1889年、フランス東部ジュラ県のサンタムールに生まれ、1984年、アメリカ・バーモント州のブラトルボロで亡くなったフランスの偉大なフルーティストです。1904年よりパリに居を移してアドルフ・エヌバンに師事し、翌年パリ音楽院のタファネルのクラスに入学、さらにその翌年、わずか一年の在籍で一等賞を獲得し卒業しました。演奏家としてオペラ=コミック座管弦楽団、パドルー管弦楽団、パリ音楽院管弦楽団、等の首席奏者を歴任しました。作曲家からの信頼も厚く、1934年にはイベールのフルート協奏曲をパリで初演しています。教育者としても1932年にゴーベールの後任としてパリ音楽院の教授となり、途中大戦期の5年間の休職を挟んで1948年まで在職しました。その後はアメリカに渡り、ピアニストのルドルフ・ゼルキン、ヴァイオリニストのアドルフ・ブッシュらとマールボロ音楽祭を立ち上げ、またスイスのボスヴィルをはじめとした世界各地でのマスタークラスにおいて多くのフルーティストに影響を与えました。息子ルイ・モイーズをはじめアンドレ・ジョネ、オーレル・ニコレ、トレヴァー・ワイといった多くの素晴らしいフルーティストを指導しました。日本には晩年、1973年(松本/東京/神戸)と77年(松本)に訪れ特別レッスンを行いました。