今もなお多くの人に愛されるフルーティスト、マルセル・モイーズ。
演奏家であり教育者であった彼はフルートへの愛に溢れ、その人柄と演奏は世界中の人々を魅了しました。
フランス革命期にパリ音楽院の設立に関わったドヴィエンヌから歴代の著名なフルーティスト達により古典派、ロマン派、近代へと発展し続けたフレンチ・スクールは現代、モイーズの真摯にフルートと向き合う探究心によって進歩し続けました。
その功績は多くのフルーティストによって継承され続けています。
今ではその実像に触れることはできませんが、彼が残した数々の教則本から彼のフルートへの愛情が伝わることでしょう。
今回、モイーズの教則本を「基礎教則本」「演奏・奏法について」「オリジナル練習曲」「編曲作品による練習曲」「モイーズ校訂による練習曲」に分類してご紹介します。
この機会に彼が残した教則本に触れていただき、彼と共にフルートの上達への道を歩んでみてはいかがでしょうか。


演奏・奏法について
楽譜ID:12154

私のフルート論
THE FLUTE AND ITS PROBLEMS: TONE DEVELOPMENT THROUGH INTERPRETATION FOR THE FLUTE

オペラ作品や様々な楽曲を収集し、オペラ歌手や弦・管楽器の奏法を模倣することでフルートのテクニックにどの様に結びつけるか等、果てしない研究を続けてきた内容がこの教則本より読み取る事ができます。また「トーン・デヴェロップメント」や「ソノリテについて」がどのように考えられたか等の内容も書かれています。モイーズが美しい音を奏でるために努力を惜しまず、常に「音楽」と向き合っている姿勢は何度読んでも胸が熱くなります。モイーズ自筆のカリグラフィと有馬茂夫氏訳、吉田雅夫氏監修による日本語訳付き、巻末にはオペラ作品などから集めた譜例集と低音域と広い音域の跳躍の練習曲が付いています。ぜひこの教則本からモイーズが生涯研究し続けた「美しい音」への追求心を感じて下さい。

楽譜ID:23288

アンブシューア、イントネーション、ヴィヴラートの練習(訳:増永弘昭)
HOW I STAYED IN SHAPE

現在ヴィブラートは音楽表現するうえで欠かせない技術の1つですが、1900年初頭の管楽器のヴィブラートはどうだったのでしょうか。当時の演奏スタイルについてモイーズの視点で語られているのが大変興味深いです。収録されている曲は、練習曲や様々な楽曲のフレーズを厳選して集めており、ダブル・タンギング、スラー、前打音等アンブシュアを整えた後、音づくりなど技術練習を取り入れる内容で、プロの演奏家をはじめ音楽を愛する愛好家の方へ向けて晩年に作られた教則本です。(楽譜ID:21825の日本語訳です)

楽譜ID:21825

どんな方法で、私は調子を保ったか
HOW I STAYED IN SHAPE (ENGLISH/FRENCH/GERMANY)

1974年にモイーズの自筆譜で出版されたこの教則本は、ニコラス・ダニエル校訂で1998年にSchott社より3ヶ国語(英・仏・独)に翻訳され出版されました。世界中のフルーティストに愛用されている教則本の1つで、日本語訳はシンフォニア社より出版されています(楽譜ID:23288)。
この教則本については、吉田雅夫氏の「フルートと私」(楽譜ID:19008)で述べられており、実際のモイーズのレッスン話等、当時の様子を窺い知ることができます。

楽譜ID:21461

上級フルーティストのためのテクニック修得
TECHNICAL MASTERY FOR THE VIRTUOSO FLUTIST(FACSI.)

高難度な指使いについて考察した内容で、シャミナード「コンチェルティーノ」を例に指使いの難しい個所を取り出し練習方法を探っていきます。これまでの音階と分散和音だけではなく、この教則本では新しい時代の作品にも対応すべく、どのような練習方法が効果的なのかを読み取ることはできます。こちらの教則本はモイーズの自筆譜とヴェルナー・リヒター氏によるドイツ語訳に三上明子氏、三上時子氏共訳の冊子をお付けしています。生涯フルートの上達について考え続けていたモイーズを身近に感じられると同時に強い探究心も感じとれます。