ムラマツ・フルート・レッスンセンター講師による
~おもひでの名曲~
Memories Of YouVol.23 中山 広樹 先生
アイルランド民謡
ダニー・ボーイ
私の学生時代はバブル崩壊直後の混沌の時代、そしてジェームズ ・ゴールウェイの全盛期でありました。大学3年生の春、東京でのゴールウェイのリサイタルで、アンコールの「ダニー・ボーイ」を聴き、こんなに美しいフルートの音色は未だかつて聴いたことが無い!と驚きました。ゴールウェイの14金のムラマツフルートから奏でられる音は、フルートという楽器を越え、まるでパヴァロッティが歌うアリアのようでした。当時ADモデルを吹いていた私は、あまりの響きの差に、自分の楽器はどこか調子悪いのかなぁ?と疑いました(笑)。

英語を聞き取るため、他の参加者のレッスンは毎日1番前の席に座って聴講しました。するとゴールウェイのお腹がブレスの度に大きく膨らむ事に気がつきました。燕尾服の演奏会ではなかなか分からない発見でした。
レッスンではマルタンを吹くつもりで練習を重ねてきましたが、聴講しているうちに、超高級レストランに1度しか行けないとしたら、シェフの1番得意な料理を注文するよなぁ、という思いが湧いてきました。


そして私のレッスンの順番となり、マルタンの楽譜を手にドキドキしながらステージに上がった私に、ゴールウェイは「曲は何?」 と尋ねました。ドラえもんの中学英語というマンガを機内で読破し、ネイティブになっていた私が口から発したのは、用意していたマルタンでは無く、「ダニー・ボーイ···」 でした。
「楽譜は?」とピアニストのフィリップ・モルに言われ、私は「持っていません···」と。
すると100人以上聴講している受講生の中から「I have!」の声があり、無事にレッスンが始まりました。
そんなドタバタがありながらも、東京でのリサイタルで聴いた、あの感動のダニー・ボーイを真横で聴きながら、レッスンを受けた私はゴールウェイから「大事な3つのアドバイス」をいただきました。聴講していた外国人達からも、「まさかダニー・ボーイでレッスン受けるとは···、でも面白かった!」と言われました。
帰国後、いくら練習をしてもゴールウェイのようなダニー・ボーイを吹けるようにはなりませんでしたが(当たり前)、あの時の3つのアドバイスがあったおかげで私は大学をトップの成績で卒業出来たのかもしれません(笑)。
その後、フランス留学を経て帰国後の演奏活動と現在に至りますが、起点はこの時のダニー・ボーイのような気がします。
指導者になった今もゴールウェイからの教えを大切に、あの時の感動や経験をレッスンで伝えられたらと思っています。
ダニー・ボーイはアイルランド民謡ですが、私は今でもこの曲を聴くと、あの夏のセミナーで訪れたスイスのルツェルン湖畔を思い出します。


中山 広樹 先生 /横浜教室 木曜日クラス
武蔵野音楽大学大学院修士課程を修了。皇居桃華楽堂にてA.ジョリヴェのフルート協奏曲を御前演奏。卒業後、渡仏。パリ・エコール・ノルマル音楽院高等演奏家資格コースを満場一致のプルミエ・プリで卒業。第8回ビュッフェ・クランポン社主催パリ・リュテス・フルートコンクール第3位(フランス)、第18回 日本フルートコンヴェンションコンクール アンサンブルアワード部門入選。第9回横浜国際音楽コンクール音楽教育者賞受賞。赤坂ジュニア音楽コンクール本選会、日本クラシック音楽コンクール全国大会などの審査員も務めるなど教育にも熱心。ソロ・室内楽・Kバレエカンパニー所属シアターオーケストラトーキョー・ミュージカルなど1000公演以上を演奏。銀座ヤマハホールなどで5回のソロリサイタル、林光氏最晩年の委嘱作品「2月の風」を含むCDをリリース。近年は様々な形態のアンサンブルの可能性を探る活動を続ける。2022年発足「青島広志ブレーメン楽団」フルート奏者。MGAセルフストレッチ・インストラクターコース受講修了。
第42~44回日本フルートフェスティヴァルin東京実行委員長。ザ・フルート誌に連載「デュオ演奏のコツ」執筆中。フルートを工藤重典、マチュー・デュフォー、甲斐道雄、佐伯隆夫諸氏に師事。室内楽をC.ドゥビッシー女史に師事。ムラマツ・フルート・レッスンセンター講師。
Facebook
https://www.facebook.com/hiroki.nakayama.568
Instagram
hiroki.nakayama.bonjour

※プロフィールは、掲載時のものとなります。最新情報につきましては、こちらよりご確認ください。