Vol.30 平田 茉莉子 先生

丹波 明
フルート・ソナタ

大学の卒業試験の選曲をしていた時、恩師である待永望先生に丹波明さんの「フルート・ソナタ」を提案していただきました。作曲家も曲も知らなかった私。どんな曲か気になりましたが、当時は今みたいに、YouTubeなどですぐに音源が聴ける時代ではなく（今は本当に恵まれています）とりあえず楽譜を見てみたら、かなりの数の音、連符、跳躍に頭がくらくら、目が回る。

それでもどうしても音源が聴きたくて、調べてたどり着いたのが、26才という若さでアルプス・モンブランで遭難して亡くなられたフルーティスト、加藤恕彦さんのパリでのリサイタル音源でした。加藤さんの事もこの時初めて知りました。
初めてこの曲を聴いた時は、私の音楽の概念がひっくり返ったような衝撃を受け、この曲をどう捉えて、どう表現すればよいのかと思いましたが、不思議な事に譜読みをしていくうちに、どんどんこの曲の魅力に引き込まれていったのです。ピアノもかなりのボリュームでしたが、ピアニストも根気強く付き合ってくれて最後には暗譜で（今では絶対無理!）演奏するほどに、ハマりました。
卒業試験の後、卒業演奏会の機会も与えていただき、大舞台で二度も演奏させていただいた思い出の曲です。

年月を経て、ムラマツ・フルート・レッスンセンターの講師をご一緒させていただいている大江浩志先生が、丹波さんと食事に行かれた時のお話です。帰りに丹波さんが間違えられて、村松のスタッフの靴を履いて帰ってしまわれたとか。

丹波さんの靴は、何と大江先生にシンデレラフィット!!フランス製でモノが良く快適で、丹波さんに連絡後、その靴を引き取ってボロボロになるまで履いたそうです。「今でもあんな靴ほしい」とおっしゃる大江先生（笑）。私にとって丹波さんは雲の上の存在ですが、このエピソードを聞いてグッと親近感が湧いたのを覚えています。

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