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ムラマツ・フルート・レッスンセンター講師による
~おもひでの名曲~

Memories Of You

Vol.41 森本 英希 先生

パブロ・エスカンデ
2つのダンス

パブロ・エスカンデ(ここからはパブロと呼びます)は私の2歳年上の友人で私の激推しメンのひとりです。私の推しについて語らせてください。
パブロはブエノスアイレスとアムステルダムで音楽を学び、現在は京都に住んでいる作曲家で、指揮者、ピアニスト、通奏低音奏者としても大活躍中です。大阪音楽大学、京都女子大学で後進の指導もされています。 多方面で活躍中のパブロとは、いろんなシチュエーションで一緒になるのですが、それぞれの場面での私の推しポイントを語らせてください。
【コレペティトゥーアとしてのパブロ】
彼はオランダにいる頃はマックス・ファン・エグモントという有名な(古楽の世界では神様みたいな人)バス歌手の下でコレペティトゥーアと呼ばれる、歌手の練習を共にするピアニストを長年勤めていました。
コレペティトゥーアは歌手のさまざまなレパートリーに即座に対応しながら伴奏したりアドバイスするのが仕事です。そのためパブロは声楽作品の知識はめちゃくちゃ深いです。そんな彼に助けてもらった思い出があります。
大阪教室でも教えておられる加藤勇仁先生が中心となり奈良で開催されているフルートフェスティバルにおいて、ヘンデル作曲の「メサイア」をフルートオーケストラで演奏する時に、大変光栄なことにソリストとして呼んでいただきました。歌のソロの部分を演奏することになったのですが、その中でレチタティーヴォ(言葉を話すように歌う部分)が含まれていました。
私は歌手ではないので、レチタティーヴォを歌った事はありません。楽譜通りに練習してもなんか変なのです。
その時私は「パブロはコレペティ(コレペティトゥーアの略)やってたよな」と思い出しました。そしてお願いしてメサイアのレッスンをしてもらいました。歌詞の意味などの基本的なところから教わった、その時のレッスンの記憶は今も宝物です。

【通奏低音奏者としてのパブロ】
バロック音楽には通奏低音と呼ばれる、主にチェンバロやオルガンが担当する、右手を即興で演奏するパートがあります。パブロとは通奏低音奏者とフルート奏者としても、たくさんの演奏会で共演してきました。
彼は作曲家でもあるので、その右手部分にすごくセンスの良い即興を入れてくるのです。私がメロディを演奏しているときに、オルガンの席から別の美しい対旋律が聞こえてきたりするのです。それに乗せられて私が装飾を入れたりすると、即座にそれに対応した対旋律で返してくれます。そんなふうに、本番中のパブロとの(音楽の)対話がとても面白いので彼との共演はいつもとても楽しみなのです。

また、コレペティトゥーアや通奏低音奏者という仕事は長い時間ずっと鍵盤の前に座り続ける仕事です。
例えば先述のエグモント氏がその日に1時間のレッスンを10人予定していたとするならば、受講生は1時間で終わるのですが、コレペティトゥーアは10時間全てのレッスンに付き合う事になります。また通奏低音奏者というのは演奏会で唯一ずっと弾きっぱなしのパートです。だからでしょうか、彼は本当に長い時間高い集中力を保つ事ができます。今の私は、もし1時間集中したなら1時間の休憩が必要なゆるゆる人間ですので、彼の集中力はマジスゲー超人に見えます。

【パブロの作品について】
パブロの作品は明確な調性と複雑なリズムや旋律の対位法的な組み合わせで出来ている事が多く、彼が演奏の際に最も得意としているバロック時代の音楽との類似を感じさせられます。彼自身は自分のスタイルを「ネオバロック様式」と呼んでいます。

2015年 京都府立府民ホールALTIでのリサイタル 中央のチェンバロがパブロ

彼の作品はこれまでに何度も演奏していますが、初めて演奏したのは2012年のパブロのリサイタルでした。「2つのダンス」とフルート協奏曲「アルゼンチン人の肖像」の2曲を演奏しました。フルート協奏曲は日本初演だったと思います。「2つのダンス」は彼の若いころの作品です。彼の故郷であるアルゼンチンの情景が浮かんでくるような作品です。どちらもその後何度も演奏しています。彼の作品ノートでは「2001年に書いたこの作品はもともとフルートとハープのためのものでした。(中略)ひとつめのダンスは愛を、ふたつめのダンスはユーモアをあらわしています」。「2つのダンス」はパブロいわく、僕がいちばん多く演奏しているのだそうです。なので、出版の際には私に献呈してくれました。ありがとうパブロ! なので、おもひでの名曲には、パブロの「2つのダンス」を推すことにしました。
その後、パブロには私が所属するフルート四人組「アンサンブル・リュネット」の10周年記念演奏会のために「4つの風」という作品を作曲してくれました。(楽譜ID:35231

「2つのダンス」「4つの風」はいずれもティーダから出版されています。この記事を見てパブロの作品に興味を持たれた方は是非楽譜を手に取ってみてください。どれもワクワクする作品です。

<楽譜のご案内>

楽譜ID:35209

2つのダンス

パブロ・エスカンデ

出版社:TEEDA

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MORIMOTO HIDEKI
森本 英希 先生 大阪教室 日曜日クラス

京都市立芸術大学音楽学部卒業。同大学修士課程修了。
大阪シンフォニカー交響楽団フルート奏者を経て現在テレマン室内オーケストラのフルート奏者。
その他、フルート四重奏団「アンサンブル・リュネット」、現代音楽アンサンブル「ネクスト・マッシュルーム・プロモーション」、ピリオド楽器アンサンブル「京都バロック楽器アンサンブル」のメンバー。
また、アレンジや作曲も手がけるなど多方面にわたり活動中。
フルートを安藤史子、伊藤公一、大嶋義実、白石孝子の諸氏に師事。
故J.ベイカー、故C.ラルデ、M.ラリュー、T.ワイ、Ph.ベルノルド、J.フェランディス各氏のマスタークラスを受講し研鑚を積む。
ムラマツ・フルート・レッスンセンター講師。

※プロフィールは、掲載時のものとなります。最新情報につきましては、こちらよりご確認ください。

Vol.42 池邊 昇平 先生(次回掲載予定)